2026.01.13
新潟県新発田に出現した美食オーベルジュ「Né」に注目!
2025年10月、新潟県新発田市に誕生したオーベルジュ「Né」。大地から生まれた建築、土地に根ざす食、そして未来へと受け継がれる文化……ここは単なる美食の目的地ではなく、地域の記憶と営みを束ね、新しい価値へと育てていく“根”になるような場所でした。
- CREDIT :
写真/長谷川 潤
2026年の美食トリップはどこへ?
デスティネーションレストランという言葉もすっかり一般的になりました。おいしい食事を楽しむために遠くまで出かけることは、もはや令和のたしなみ。今年は60年に一度の「丙午(ひのえうま)」ということで火のエネルギーが強く、行動力が上がるらしいので、どんどん外へ出かけ、美食トリップを楽しんでいきたいと思います。

でも、どこへ? ということで、まず2026年の初美食トリップとしておすすめしたい「Né」(新潟県新発田市)をご紹介しましょう。こちら、昨年の10月にオープンしたばかりで、1日1組限定のオーベルジュとしていまフーディーたちの熱い注目を浴びているスポットなのです。
新潟県新発田市
1日1組だけが味わえる新潟の美食オーベルジュ「Né(ネ)」

▲ 新発田駅からクルマで15分ほどの距離にあるオーベルジュ「Né」。隣にはひと足早くオープンしたバレルサウナ「sui」が大人気。
まずこの新発田というロケーションですが、首都圏から意外に近いのも魅力。新発田市は、新潟県の北部、越後平野の一角に位置していますが、東京から電車ですと新幹線と在来線で約2時間半。江戸時代には十万石の城下町として栄えた歴史をもつのですが、町の規模としてかなりコンパクトなので駅から歩いて散策できるのが楽しい。新発田城や庭園などの旧跡、アントニン・レーモンドによる新発田教会など、歴史を訪ねて散策するのも良いかと。
現在は雪景色、春には桜、秋には金色の稲穂が広がるなど四季折々の自然が楽しめ、温泉や山海の観光スポットも豊富。辺りは肥沃な水田地帯で、コシヒカリを始めとする米や農産物が育まれています。「Né」とは“根”であり、フランス語では“生まれた”を意味するそうですが、この風景こそが「Né」がこの地に建てられた理由なのでしょう。歴史と自然、大地と人々の暮らしが交差するこの場所は、観光地としてではなく、文化と自然の連鎖を私たちに思い出させてくれます。
100%新潟メイドにこだわった建築と空間
「Né」が建つ旧川東村は、かつて大庄屋の本間家によって治められていた土地。代々、この地域の農業や人々の生活環境の発展に大きく貢献した本間家へのオマージュとして、蔵などの建物や庭木が一部そのままに保存されています。

▲ 建物の土台にはコンクリートではなく計105本もの丸太杭が使用されています。建築・設計は福西健太建築設計事務所
贅沢に平屋のオーベルジュは、“新潟の自然を感じられる建築”というコンセプトのもと、新潟県産の木材と土だけで造られています。敷地内にもともとあった土を採取し、その土を壁にするという、まさに土地そのものがカタチとなったような建築。コンクリートは一切使われず、基礎には伝統的な丸太杭を用いることで、大地との接点における環境負荷を最小限に抑えているのだとか。外壁の台形の柱は、周囲の田畑に見られる畦(あぜ)や畝(うね)から着想を得ており、心地よいリズムを刻んでいますね。
ここは1日1組の宿ですから、ゲストルームはひとつだけ。ベッドはキングサイズのダブルベッドがひとつですが、畳敷きの和室に布団を敷くこともでき、最大4名まで宿泊可能です。
▲ 新潟県阿賀野産の畳を使った和室スペース。
▲ 家具もすべて新潟県産の木材を使用し、新潟の職人の手によって仕上げられています。
▲ キングサイズのベッドでゆったり。
▲ 陶器で出来た湯舟。温泉ではないけれど、身体が芯から温まります。
▲ 新潟県亀田郷で育まれてきた「亀田嶋(かめだじま)」のパジャマは着心地も抜群。
▲ 180㎝の身長の人が横になるとすっぽりハマるサイズ感のスペース。瞑想やヨガをするのにピッタリ!
▲ ミニバーには新潟産のビールや日本酒、そして総料理長手づくりのおつまみが!

▲ 新潟県阿賀野産の畳を使った和室スペース。

▲ 家具もすべて新潟県産の木材を使用し、新潟の職人の手によって仕上げられています。

▲ キングサイズのベッドでゆったり。

▲ 陶器で出来た湯舟。温泉ではないけれど、身体が芯から温まります。

▲ 新潟県亀田郷で育まれてきた「亀田嶋(かめだじま)」のパジャマは着心地も抜群。

▲ 180㎝の身長の人が横になるとすっぽりハマるサイズ感のスペース。瞑想やヨガをするのにピッタリ!

▲ ミニバーには新潟産のビールや日本酒、そして総料理長手づくりのおつまみが!
内部の空間にもまた徹底したこだわりが。もともと敷地内にあった土で造られた壁であるのはもちろん、木や石など素材の選定や家具の製造に至るまで、新潟県内の工芸や職人の技が活かされています。洗練された空間ながら居心地も良いので、宿泊というより、自分の別邸に滞在しているような感覚。外で鳴く鳥の声や風が樹々を揺らす音を聴きながら過ごす時間はどこか懐かしさも感じるほどでした。個人的には新築の建物であるにも関わらず、接着剤などの匂いが一切ないことに驚きました。室内にいるのに、ずっと深呼吸していたくなる感じ……めったにないことです。
土地の恵みを五感で味わう──「Né」の美食体験

▲ 「Né」総料理長の布施真さん。新潟産の食材にこだわり、全13品のコースを完成させます。
さて、宿泊棟の中にあるダイニングルームに移動しまして、「Né」を訪れた最大の目的でもあるディナーの時間。
総料理長を務めるのは、フランスで修業を積み、パリの名だたるシェフのもとで研鑽を重ねた布施真さん。帰国後も東京で活躍してきた彼が、この地のために新潟へ拠点を移し、食材の選定からレシピ設計、調理まで一貫して手がけています。
全13品のコースはドリンクペアリングも含めて味わうので、およそ3~4時間はかかるでしょうか。特徴的なのは、各皿にメニュー名がないこと。布施シェフが料理を目の前で仕上げている間の香りや音、お皿が運ばれた際の美しさへの驚き、そして口にした時の味覚に至るまで……まさに五感と想像力を使って味わうことができる至福の時間です。
▲ メニューはありませんが、食べ終わる一皿ごとにシェフの想いが記されたカードが渡されます。
▲ 薪で焼かれたキャベツに、しめじとしじみのバター、鴨のジャーキーを乳化したソースを添えて。
▲ 十数種の食材をさまざまな手法で発酵させ、フラットブレッドに乗せた一皿。多彩な香りと食感に、気持ちが華やぎます。
▲ きのこのソテーに蜂の子のクリームを添えたひと皿。
▲ 新潟北部は鮭の産地としても有名。鮭に里芋のクリーム、いくら。
▲ 甘エビの刺身は貝の出汁で。

▲ メニューはありませんが、食べ終わる一皿ごとにシェフの想いが記されたカードが渡されます。

▲ 薪で焼かれたキャベツに、しめじとしじみのバター、鴨のジャーキーを乳化したソースを添えて。

▲ 十数種の食材をさまざまな手法で発酵させ、フラットブレッドに乗せた一皿。多彩な香りと食感に、気持ちが華やぎます。

▲ きのこのソテーに蜂の子のクリームを添えたひと皿。

▲ 新潟北部は鮭の産地としても有名。鮭に里芋のクリーム、いくら。

▲ 甘エビの刺身は貝の出汁で。
そして100%新潟メイドというコンセプトは食事にも貫かれています。肉や魚はまだしも、冬は野菜が少ないのではと思いましたが、布施シェフによると、この辺りは厳しい冬を持つがゆえに、発酵、乾燥、酢漬け、塩漬け、燻製などの保存技法が受け継がれてきたとか。また塩や醤油、酢、オイルやバターなどの調味料もすべて新潟産というからすごい。単においしい食事というわけではなく、この地で生きてきた人々の生活、気候、歴史を味わっているかのような、ある種の重みを感じる数時間でした。
▲ 鶏の出汁で戻した干しアワビ。発酵させた肝とバターのソースで。
▲ ルバーブのソース、洋ナシのピュレを添えることで、森そのものを感じさせる鹿肉の料理。
▲ 乳酸発酵させたトマト水でマリネした鯖にイチジク葉のソース。
▲ カニの殻を焼き、煮だしたスープで炊き込んだうまみたっぷりのごはん。
▲ デザートだけでも3皿続くという充実した内容のコース。
▲ 自家製グラノラやビーポーレンを添えたミルクのデセール。
▲ 発酵小豆のパウダーを練り込んだプレッツェルをさまざまな果実のジャムでとともにいただきます。

▲ 鶏の出汁で戻した干しアワビ。発酵させた肝とバターのソースで。

▲ ルバーブのソース、洋ナシのピュレを添えることで、森そのものを感じさせる鹿肉の料理。

▲ 乳酸発酵させたトマト水でマリネした鯖にイチジク葉のソース。

▲ カニの殻を焼き、煮だしたスープで炊き込んだうまみたっぷりのごはん。

▲ デザートだけでも3皿続くという充実した内容のコース。

▲ 自家製グラノラやビーポーレンを添えたミルクのデセール。

▲ 発酵小豆のパウダーを練り込んだプレッツェルをさまざまな果実のジャムでとともにいただきます。
「Né」は、宿泊や飲食によって得た利益をただ内部に留めるのではなく、地域へ還元していくことを明言し、地元農家や職人との連携を深めるプロジェクトも進行させています。それはこの土地の今後の発展と持続可能性を見据えたものでしょう。その意味で、「Né」はレストランであり、宿でもあるけれど、同時に新発田という土地の文化が根を張り、次へ伸びていく拠点になるのだと感じました。あ、だから「Né」っていう名前なのか。春になり、芽吹きの季節を迎えた「Né」に、いつか再訪できることを楽しみにしています。

◆ Né(ね)
住所/新潟県新発田市石喜180
料金/レストラン利用4万2350円(ドリンクペアリング付き・税サ込)
宿泊プラン9万200円~(1泊2食付き・新潟空港もしくは新潟駅までの送迎あり)
定休/火曜・水曜
デスティネーション・レストラン、まだまだあります。








































