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2025.11.13

【後編】知られざるワイン産地への旅

【イタリア】アルト・アディジェのおすすめワイナリー5選

イタリアとオーストリアの国境に位置する小さな街、ボルツァーノを中心とした「アルト・アディジェ」地方。そこは、まだまだ知られざる美味ワインの産地なのでした。

BY :

文・編集/秋山 都(編集者・ライター)
CREDIT :

取材協力/アルト・アディジェワイン協会

アルト・アディジェ産ワインの多彩な魅力

アルト・アディジェ ワイン 
▲ イタリア北西部トレンティーノ・アルト・アディジェ州にある、アルト・アディジェ。
【前編】にて、イタリアなのにイタリア語が通じない⁉ アルト・アディジェの概要はお伝えしてまいりました。そこで、いよいよ【後編】では具体的に、アルト・アディジェで巡ったワイナリーをご紹介してまいります。
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01.アルト・アディジェの白ワインを代表する「Nals Margreid(ナルス・マルグライド)」

「Nals Margreid(ナルス・マルグライド)」は、アルト・アディジェの都市であるボルツァーノ近郊、ナルス村とマルグライド村の協同組合として1932年に創業したワイナリー。250軒以上の契約農家が約160ヘクタールの畑を管理し、標高200〜900メートルの多様なテロワールからブドウを収穫しています。白ではピノ・ビアンコやソーヴィニヨン・ブラン、赤ではラグレインやピノ・ネーロが高い評価を得ていますが、ことに「Sirmian」(上の写真右から2本目のピノ・ビアンコ)は素晴らしかった! 標高550メートルの石灰質土壌由来の酸とミネラルが特徴的で、多くの品評会でも賞を獲っています。ピノ・ビアンコとはピノ・グリなどと同様にピノ・ノワールからの突然変異で生まれた品種ですが、現在はアルト・アディジェDOC全体の約10%を占めているこの地域の代表品種。アルト・アディジェを知るためにまずは飲みたいワインだと、私も1本購入しました。
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02.人柄に魅せられた「St.Michael-Eppan Winery(サン・ミケーレ アッピアーノ)」

お次は「St. Michael-Eppan(サン・ミケーレ・アッピアーノ)」のステファン・ヴェルヒャーさんとランチ。こちらもアルト・アディジェを代表する協同組合ワイナリーのひとつで、1907年にアッピアーノ村(Eppan)で設立されました。なぜ、Eppanなのにアッピアーノなのかって? そこは、【前編】でご説明しているようにアルト・アディジェが第一次世界大戦まではドイツ語圏だった歴史を持ち、現在も2言語の地域だから。このEppanという村については、日本ではアッピアーノという方が通りが良いのでそちらが採用されているようです。
ランチは17世紀に建てられた農家をそのままに活かしたレストラン「Patauner」で。藤棚の木陰が心地よいテラスでのランチは、ステファンさんがどんどん開けてくれるワインのおかげもありゴキゲンだったのですが……ここでひとつ印象的な出来事がありました。
このレストランは地元でワイン街道と呼ばれる道沿いにあり、多くの人がクルマや自転車で通っていくのですが、誰かが事故を起こしたのでしょうか。ドンッと大きな音がして、誰かの悲鳴と泣き声が響き渡りました。「ん?」と私が料理に夢中だった頭を起こした瞬間には、もう目の前のステファンさんは立ち上がり、事故現場に向かって走り去っていました。怪我人の救出に向かったのです。

実際は大事故ではなかったとのことで、すぐに一件落着したのですが、ステファンさんの現場へ向かっていく背中が今も目に焼き付いています。だって、なかなかできることではないですよ。こんなアルト・アディジェの青年、30年前にお会いしていたら結婚を申し込んだんだけどなぁ。
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03.ラグレインの面白さを知る修道院ワイナリー「Muri-Gries(ムリ=グリ)」

Muri-Gries(ムリ=グリ)は、ボルツァーノの街中にある修道院を母体とするワイナリー。特にラグレインの名手として知られています。私はこのラグレインという品種についてもほとんど知らなかったのですが、アルト・アディジェの代表的な黒ブドウで、DNA検査によるとシラーに近いのだとか。どうりでブラックベリー、プラム、カカオなど複雑な香りをもち、ちょっとスパイスも感じます。

キリスト教ではワインがキリストの血を象徴するため、多くの修道院でワインがつくられてきましたが、実際に修道院のなかのワイナリーを訪問するのは初めての経験でした。その静謐な雰囲気に『薔薇の名前』*を思い出しますね~と語りかけたら、苦笑されてしまいました。ごめんなさい、『薔薇の名前』は人がどんどん殺されてしまうミステリーでしたね。
*『薔薇の名前』(原題Il Nome della Rosa)はイタリアを代表する作家ウンベルト・エーコが1980年に発表した小説。ショーン・コネリー主演で映画化もされています。
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04.女性がリードする「ELENA WALCH(エレナ・ヴァルヒ)」

ここまでお会いしたワインの作り手はみな男性でしたが、アルト・アディジェでも女性のパワーが台頭しています。女性醸造家であるエレナ・ヴァルヒさんが率いる家族経営のワイナリー「ELENA WALCH」は芳醇なアロマをもつゲヴュルツトラミネールのワインが有名。この日はマーケティング担当の娘のジュリアさんが案内してくれました。
「80年代は“質より量”だと言われていたアルト・アディジェのワインを、母らが“量より質へ”と転換。アルト・アディジェの高品質なワイン造りをリードしています」とはジュリアさん。1620年にハプスブルグ家の狩猟用の別邸として建造されたリングベルグ城をワイナリーとして活用するなど、施設的にも素晴らしく、アルト・アディジェの顔として高く評価されています。
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05.ピクニックを楽しんだ「Cantina Kaltern(カンティーナ・カルタン)」

さて、ワイナリーやブドウ畑の見学だけでなく、ちょっと変わったおもてなしをしてくれたのは「Cantina Kaltern(カンティーナ・カルタン」。こちらも協同組合ワイナリーで、地域のブドウ農家約600軒が参加し、計約400ヘクタールの畑を共同で管理しています。主要品種はスキアーヴァやラグレイン、ピノ・ビアンコ、ソーヴィニヨン・ブラン……ということでしたが、特にスキアーヴァは、軽やかな赤として地域を象徴する存在だそう。
この日はブドウ畑のなかの小さな小屋でケータリングを利用してピクニック。アルト・アディジェ名産のスペック(燻製した生ハム)やチーズを片手にワインが進む、進む……。
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アルト・アディジェのワインを飲みまくった4日間を振り返りますと、何しろ印象的だったのはピノ・ビアンコの面白さです。青りんごのような果実感と、やわらかな酸はどこの作り手にも共通しているのですが、時にナッツのような香りを感じたり、小石を噛んでいるような強いミネラル感があったり……栽培&醸造方法によって大きくキャラクターが変化するブドウなのだなと感じました。和食にも合いそうだから、日本で見つけたらぜひ飲んでみよう。その時、現地でお会いしたあの人やこの人の顔を懐かしく思い出すことでしょう。ありがとう、アルト・アディジェ。

食欲が導く旅へ出かけよう!

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