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2022.10.01

フードライターは見た! カジュアルデートで使える店の条件とは【前編】

ひとり1万円台で気軽に楽しめて、もちろん美味しい。さらにデートの会話も弾む店、ないですか? という難問に、年間1000軒外食している高橋綾子さんが答えます。

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写真/八木竜馬 文/秋山 都

昨今の物価上昇に伴い、レストランでの外食費用も高騰気味。星付きのファインダイニングなどに出かけてナイフとフォークをキコキコさせると、気づけばひとり片手(5万円!)という会計も珍しくはありません。ま、自分が納得できればもちろんそれもよし。料理、サービス、雰囲気……どれをとっても一級だったに違いありません。
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▲ 年間1000回は外食するという高橋綾子さん。
「ひとりで5万円、ということはふたりで10万円かぁ(嘆息)。そういう食事も記念日とかイベントとか、たまにはいいかもしれませんね。でも、今後長いお付き合いをしていきたいな、という人とのデートにはちょっと不向きかも? 普段のデートはもう少し力が抜けた、気楽な店がいいんじゃないでしょうか。ファッションで言うなら、エフォートレスで、サステナブルな感じ(笑)?」

そう語るのはフードパブリシト*の高橋綾子さん。ファッションブランドのプレス時代にレストラン通いを始め、現在も年間1000回は外食。美味しいモノを見極める、その“舌”は「綾子さん、最近何食べた?」と多くのファッション業界人からも注目されている存在です。最近では、美食に関するコラムをメディアへ寄稿、テレビにも出演する話題の人でもあります。
*パブリシストとは広報担当者の意味。飲食店、生産者など食にかかわる人や団体を広く知らしめる人。
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▲ 「Filemone」のテーブルセッティング。シンプルだけれど、やさしく、フェミニンな印象。
でも綾子さん、カジュアルな店だったらどこでもいいわけではありませんよね? 美味しくて、楽しくて、そんなに高価じゃない、だけどデートにも使える、その見極めが難しいんです。

「ですよね(笑)。そういう店の見極めはまずテーブルの上にあると思ってください。カジュアルなお店はだいたいテーブルクロスが敷いてないですよね。でも、そのテーブルの上がきちんと清潔に、センスをもって設えられているか、否か。神は細部に宿る、と言うように、ディテールまで心が配られている店はまず合格。

次に、その店を語る文脈がどこにあるか、という点です。デートに連れてこられた女性サイドの視点で考えていただきたいのですが、彼女はけっこう気合を入れて来ているかもしれません。そんな時に、入った店がテーブルクロスのないようなカジュアルな店だった、と。どう思いますか? きっと、顔には出さないけどガッカリしますよね。私って、そのくらいに思われていたんだな、と。

そこで、この“文脈”の登場。
『この店、カジュアルだよね。でも、あの名店XXXから最近独立した人が始めたんだよ』
『今年、日本に初上陸したんだけど、いま世界で話題なんだ』
『この店のオーナー(シェフ)、めちゃ有名人なんだよ』
などなどなど。つまりは、この店こう(カジュアルに)見えるけど実は~というストーリーが必要なんです」

なるほど、つまりはそのお店を選んだ基準がきちんとあればOKということですね。そのストーリーはデートでのふたりの会話の糸口にもなりそうです。
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名店「ドンチッチョ」の流れを汲む期待のニューオープン

◆「Filemone」(東京・乃木坂)

その観点で行きますと、綾子さん、このお店をおすすめする理由はどこにあるのでしょうか?

「そこを語るにはまず『トラットリアシチリアーナ ドンチッチョ』(以下ドンチッチョ)からご説明しないと。『ドンチッチョ』は元々「トラットリア ダ トンマズィーノ」という名前で国立競技場の近くに2000年にオープンしました。当時、シチリア料理を知る人はほとんどいなかったけれど、野菜や魚介が中心でオリーブオイルやハーブが味の決め手というシンプルでヘルシー、しかもめちゃくちゃ美味しいとくればファッション業界、出版業界、芸能人、文化人などなど、感度の高い人たちが黙っているわけがない。お店は毎夜最先端のファッションを着こなした人々で賑わい、まるでコレクションのパーティー会場にいるみたいでした。

その頃、私はファッション業界でプレスをしていて、貸し出しにいらしたスタイリストさんや編集さんの挨拶代わりが『ドンチッチョ行った?』だったことを覚えています。美味しくて魅力的な料理、気楽でカジュアルな空間なのにサービスは一流、それでいてお財布にやさしい……、そんな『ドンチッチョ』にファッションピーポーたちは通い続け、いまや予約の取れない名店となりました。で、その姉妹店が『シュリシュリ』(外苑前)でして、そこから独立したシェフ、新田大介さんとサービスの森裕太さんがオープンしたのがこの『Filemone』。つまり名店『ドンチッチョ』の系譜であり、その料理やサービスの本質をしっかりと受け継いでいるんです」
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▲ オープンキッチンを見渡せるカウンターもデート向き。「会話が途切れた時に自然と間が持ちますからね」
「デートの場合、結局お店の雰囲気がいちばん大切だと思うんです。どんなに美味しいお料理があっても、いつまでも彼女のワイングラスが空だとスタッフを呼ぶことに気をつかってしまい、会話に集中できなくなるし、騒々しいのは困るけど、逆に静かすぎると緊張感が漂う。その点『Filemone』はまず空間作りがいいんです。清潔感のあるペールトーンの色調にほんのりとした照明は自然と心が和みます。テーブルの間隔も広く、適度な賑わいはナイショの話もできちゃう」

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▲ 「長崎五島列島直送 石鯛のカルパッチョ」1800円。森さんの出身である長崎・五島列島直送の石鯛をカルパッチョに。五島列島独特の手法で神経じめにした石鯛はプリプリと他にはない弾力。鮎のコラトゥーラ(魚醤)を軽く塗って熟成したかのようなまったり感にうっとり。
「そして重要なのが良いサービスマンがいること。森さんはオーダーを聞いたり、ワインの説明をする会話の中で、今日のホストは誰か、どんなシチュエーションなのかを瞬時に見極める才能がある。だからうまいことホストの顔を立ててくれるし、言わなくても料理は取り分けてくれ(デートにはこれ大切ですよね)、テーブルごとの配慮も怠らない。お料理は見るからに美味しそうだし、おまけにとってもリーズナブル。ここには素敵な時間を過ごせる要素がたくさん詰まっています。見送られながら店を出た時、彼女はきっと『また連れてきてね!』と言うはず」
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▲ 「ポルチーニ茸のクレープと秋トリュフ」(1pc/1500円)は、北イタリアのヴァッレ・ダオスタ州アオスタの郷土料理をアレンジしたもの。中に詰めたポルチーニの香りが漂うベシャメルソースとリコッタチーズは思ったより軽い食感で、白ワインにもピタリ! 
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▲ 「アマトリチャーナ トマトソースのトンナレッリ」1600円。トマトソースを得意とする新田シェフのアマトリチャーナは自家製パンチェッタの脂の甘みとトマトの酸味のバランスに一分のスキもない完璧な仕上がり。 ローマの郷土料理だからチーズはパルミジャーノではなくペコリーノロマーノを使うところにもこだわりを感じる。
「新田シェフの料理は『これ何?』って不安になることがありません。いままで作ってきたシチリアとピエモンテ州の料理をベースに、新田さんの故郷である山梨や、森さんの故郷の長崎を始めとする日本の食材で季節を感じさせるメニュー作りをしています。見た目は誰もが知る料理を、新田さんのセンスとスキルで唯一無二のひと皿に変えてしまう。そこにハマってしまうのです」


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▲ ローマ伝統の手打ちパスタ、トンナレッリはソースが絡むように表面をわざとザラっとさせています。本来は四角くてまっすぐですが、こちらはちぢれた手もみ風で食感が楽しい! フォークに巻きやすいのでデート向きかも。
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▲ 「牛ヒレ肉のソテー こがしバターソース」4200円

「それにメニューがアラカルトなのも嬉しい。このところおまかせコースが主流ですが、スタート時間が決められていたり、気分じゃないものを食べなければいけなかったりで少々お疲れ気味。お願いすればコースも作ってくれますが、『アマトリチャーナはショートパスタにしてみない?』、『今日は軽めに前菜とパスタにしよう』などと食べたいものを話しながら選べば楽しさも倍増します。何カ月も前から予約を入れて気張るのもいいけれど、今は気楽に足を運べてほっこりできるカジュアルデートに心が惹かれますね」
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▲ ナイフがスッと入るのに、とんでもなくやわらかく舌の上で溶けていくお肉の火入れはピエモンテで修業したシェフのもとで培った新田さんの技術。
なるほど、綾子さんのお話でカジュアルなデートでも胸をはって出かけよう! と自信がもてました。後編では、さらなるカジュアルデート向きの店を綾子さん自身が綴ります。
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Filemone(フィレモネ)

住所/東京都港区赤坂8-12-12 赤坂アンドロン 1F
お問い合わせ先/03-4363-2887
営業時間/18:00~23:00
定休日/日曜日

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