• TOP
  • GOURMET
  • 身体の中を涼風が吹き抜ける、格別の「冷やし鶏そば」

2022.08.14

【第13回】「らーめん天神下 大喜」(仲御徒町)

身体の中を涼風が吹き抜ける、格別の「冷やし鶏そば」

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

▲ 今回訪れた「らーめん天神下 大喜」の「冷やし鶏そば」は7,8月限定。
「らーめん天神下 大喜」の「冷やし鶏そば」が素晴らしい!  7月、8月限定で毎日10食ほどしか作らない。

夏場に入って、「冷たいラーメン」を色々食べ歩いたところで出会った逸品で、「鶏そば」で売る「らーめん天神下  大喜」ならではの「冷麺」である。涼しげなガラスの器に盛られているのは、目いっぱいのスープに細打ちの平たい麺。具は、味を含ませたナス、それにオクラ、なめこ、トマト、半熟たまご、鶏チャーシュー、さらに白ごま、レモンと盛りだくさん。上には、技ありの胡瓜と大根の繊切りがたっぷりふうわりと盛られている。

なんといってもすばらしいのが、とろみがついたスープで、鶏からスープをとった時に出るゼラチンを巧みに生かしていることである。
PAGE 2

山形名物の鶏そばは、ほとんどがそばつゆまで甘かったが

実はこれまで鶏そばと言えば、思い出すのは山形名物の「鶏そば」だった。山形の各地のそば屋へ出かけると、必ず品書きにあるのが「鶏そば」。鶏のもも肉を刻み甘辛く煮込んで、かけ蕎麦に添えてあるのだが、どこの店に出かけても、そばのつゆまで甘いものだから、途中で口が飽きてしまう。

温かい「鶏そば」ばかりか冷たい「鶏そば」でも、そばつゆが甘ったるい。それが、米沢の「たきなみ」で食べた時、そばつゆと甘辛くない鶏肉が見事にマッチして、本領発揮の「鶏そば」に出合うことができた。
▲ 米沢「たきなみ」の「冷ったい鶏蕎麦」。
「冷ったい鶏蕎麦」ばかりか「シン ゴマラー蕎麦」という「担々麺」の日本そば版がまた逸品である。そばの持ち味を損ねないようにごまの風味と辣油の辛みを絡ませて仕上げてある。
▲ 米沢「たきなみ」の 「シン ゴマラー蕎麦」。
PAGE 3

ご主人の好奇心と探求心と遊び心が生んだ傑作冷やし鶏そば 

話を本題に戻そう。長谷川圭介著『ラーメンをつくる人 東京』に「らーめん天神下 大喜」の武川数勇(かずゆき)さんが登場している。本の帯には「ラーメンに人生をかけることになった20人」とある。

20名の店主が著者に「ラーメン」に対する心の内を開いて、素敵な言葉で「ラーメン」を語っている。

料理人歴は板前時代から数えて35年を超える。けれども今なお自分の引き出しを増やすため、新しいメニューの開発に余念がない。

「考えるのが好きだっていうのもありますよ。蕎麦でもイタリアンでも食べに行くとね、これを何とかラーメンに落とし込めないかなって思うんです」
▲ 「らーめん天神下  大喜」のご主人、武川数勇さん。
24時間365日、頭の中はラーメンのことでいっぱいだ。

「基本はうちのスープがあって、そこに何を組み合わせたらどんな化学反応が起こるのか。夏に一度作って面白かったのは、自分で仕込んだシメサバと明太子を合わせた冷やしメニューですね。これが意外に旨かった。引き出しを増やすなんて言うとかっこいいけど、お遊びみたいな側面もあるのかな。常連さんはそれも分かって限定を食べてくださる。それは一つの、なんというかな、愛情なんだと思います。大喜というお店に対するね」
PAGE 4
▲ 「冷やし鶏そば」1200円は1日限定10食。
「冷やし鶏そば」は、武川さんの持ち前の好奇心と日頃の探求心、それに遊び心から生まれただろうということが十分に推測できる。

食べ進むと味わいは渾然一体、食べ終わると、身体の中を涼風が吹き抜ける。武川さんの限りない「らーめん愛」から誕生した「冷やし鶏そば」、傑作である!
※次回は8月28日予定です。

らーめん天神下 大喜

住所/東京都台東区台東 2-4-4
営業時間/月火木金11:00~14:30、18:00~21:00(L.O.)、水曜は昼のみ。土曜11:00~15:00、18:00~20:30(L.O.) 祝日11:00~15:00(L.O.)
定休日/日曜
TEL/03-3834-0348
Twitter/https://twitter.com/DK_TAKE

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

PAGE 5

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

LEON.JPの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        身体の中を涼風が吹き抜ける、格別の「冷やし鶏そば」 | グルメ | LEON レオン オフィシャルWebサイト