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2022.05.21

焼肉界カリスマの‟肉眼”はあの話題店「牛宮城」をどう捉えたか?

ひと口ごはんの肉巻きや、ぶっかけトリュフのすき焼きなどアッと驚かせるメニューで日本の焼肉界をリードしつづける「よろにく」。その生みの親である桑原 Vanne 秀幸さんに、焼肉の奥深さと魅力を訊いた。

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文/小寺慶子  写真/上田佳代子

銘柄牛の一頭買いや希少部位を売りとして差別化をはかる焼肉店が登場したのが、約20年前。ホルモンや熟成肉ブームなどを経て、いまでは“国民食”といわれるほどファン層を広げている焼肉だが、固定観念にしばられない斬新なアイディアでその先頭を走り続けているのが、青山と恵比寿に店を構える「よろにく」だ。

いまでは一品料理と焼肉を織り交ぜたコースを提供したり、客ではなく店のスタッフが肉を焼くスタイルもめずらしくはないが、焼肉にプラスαの楽しみをもたらした「よろにく」は、日本の焼肉史を語るうえで欠かせない存在。そのプロデューサーであり、焼肉業界に革命を起こしてきた桑原 Vanne 秀幸さんに、多くの食通の心を虜にする焼肉の奥深さとその魅力について訊いた。 
▲ 桑原 Vanne 秀幸さんは1969年、熊本生まれ。 DJとして活躍し、27歳で青山の骨董通りにクラブ「fai」をオープン。 焼肉好きが高じて、2007年には同じ骨董通りに焼肉店「よろにく」をオープンさせた。
SNS全盛のいま、インスタなどから人気に火がつく焼肉店も多いと思いますが、焼肉ブームを牽引し続けているVanneさんは、いまの焼肉業界にどのような印象を持っていますか?

「肉を塊でみせるプレゼンテーションとか、分厚くカットした肉を豪快に焼くとか、SNSと焼肉の親和性はとても高いです。最近だとYouTubeを活用した宣伝で『牛宮城』(*1)が話題になりましたね。僕も食べに行きましたが、忖度なしに相当美味しいと思いました。僕もいま注目している交雑種とタレの相性もよく練られていて、本気度の高さを感じました。バズり優位のように見えるけれど、焼肉店としてきちんと美味しいものを出そうという気概がある。映えることばかり意識して味は二の次となってしまうのは論外ですが、焼肉の醍醐味はエンタメ性の高さにもあると思うので、味も個性も突きつめる店が増えてほしいし、自分も常にそうありたいです」
*1 宮迫博之さんプロデュースによる焼肉店。東京都渋谷区宇田川町12-9 ジュール渋谷 5F
▲ 現在、Vanneさんが自ら肉を焼いてくれるスペシャルコースは不定期で開催されている。
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Vanneさんが焼肉に目覚めたきっかけを教えてください。

「僕はもともとレコード収集が趣味で、熊本から上京して渋谷のクラブでDJをやっていたんです。当時の渋谷といえばストリートカルチャーの最先端で、ものすごい熱気と活気があった。エネルギーのるつぼのような街で、毎日が刺激的でした。それでクラブが終わったら仲間と焼肉に行く、というのがいつからか定番になって。西麻布の『遊玄亭』(*2)もよく行ったし、四谷の『名門』(*3)で焼肉はエンタテインメントであるということを体感して目からウロコが落ちる思いがしました」
*2 「遊玄亭 西麻布本館」は叙々苑系列の焼肉店。かつて芸能人の目撃率が高いことでも知られた。東京都港区西麻布3-24-18 叙々苑ビル
*3 「焼肉名門」。オーナーが歌いながら焼いてくれる「スーパーホルモン」が名物。東京都新宿区舟町11松川ビル1F
本格的に焼肉店を食べ歩きはじめたのはいつ頃ですか?

「27歳くらいのときに、町屋の『正泰苑』に行ったことで 都心の有名店以外にこんな凄い店があるんだ! って驚ろいたんです。ちょうど、自分のクラブを青山の骨董通りにオープンした頃で、オフは焼肉でエネルギー補給するのが習慣になっていました。もちろん、それまでも焼肉はご馳走という感覚はあったんですけれど、ここで塩カルビやロースを食べて、あまりの美味しさに驚愕しました。肉の質に加えてカット、味付けのすべてが衝撃的だった。

その後、なにかの雑誌で『焼肉好きの終着地点はジャンボ(*5)である』という記事を見て行ってみたら、完全に心を掴まれてしまって(笑)。いま思えば、神レベルというのは篠崎の『ジャンボ』のような店を言うのでしょうね。聞いたことがない部位、タレの味。薄切りのお肉を『うら3秒、おもて3秒』と言われて、それまでそんなふうにして食べたことがなかったから、言葉にできないほどの衝撃を受けて。年間70回は通わせていただきました。

その時は、弟子にしてほしいとはまったく思っていなくて、単純に好きで好きで。体が欲するからお店に行っていたという感じです(笑)。でも、いろいろな焼肉店に通ううちに、元来のリミックス癖というか、自分だったらこうしてみたいなという気持ちがどんどん大きくなって。ジャンボの大将に自分でお店をやってみたいので、焼肉のことを教えてくださいとお願いしたんです。大将はすごく愛情深い優しい方で、僕の無理なお願いを受け入れてくださったことに、本当に感謝しています。それで、青山に『よろにく』をオープンしたのが2007年のことです」
*4 1978年創業の老舗焼肉店。町屋や銀座、豊洲などで多店舗展開。東京都荒川区町屋8-7-6
*5 希少部位の提供や、卵黄につけて食べるサーロインなどさまざま革新を興した焼肉店。東京都江戸川区篠崎町4-13-19
▲ 「よろにく」の「ぼたん海老と和牛巻き 生カラスミ添え」は鮨店の鰯巻きにヒントを得た人気メニュー(写真の料理はすべて22,000円~のコースの一例)。
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焼肉を食べ歩くうちに自分はこういうお店をやりたい、やってみたいという気持ちが強くなっていったんですね。

「DJという職業柄、ここをこう組み立てたら面白くなるという目線で物事を見る癖があって。最近も焼鳥店に伺ったときに、鶏の皮って表面温度が高くなるまで焼き切ると美味しいな、これは牛肉に合うんじゃないかなと思ったり」

それはすごく斬新な発想ですね。なかなか思いつかないです。

「もともとホテルが好きで、国内外のホテルめぐりもライフワークにしているのですが、青山の『よろにく』は外資のラグジュアリーホテルに焼肉店が入っていたとしたらこういう感じなんじゃないかなというイメージを空間づくりやサービスに反映させています。オープンしたての頃は、焼肉店にバーカウンターあるなんてめずらしいとか、お店のスタッフが焼いてくれるのが新しいなどたくさんのご意見いただいて、僕の想像が形になって、多くの方に喜んでいただけたのがうれしかったです」
「よろにく」といえば、コースの構成も独創的です。

「僕は最大公約数的な焼肉店をやりたいとは思っていなくて。新しい焼肉体験を楽しんでいただくためにどんなコースを組み立てたらいいかなとずっと考えています。例えば、焼肉で四季を感じてもらうにはどうしたらいいかなと考えて、思いついたのが夏のスペシャリテの肉もろこしです。
▲ 肉もろこし。夏のスペシャリテとして登場。とうもろこしの甘みと肉の旨味が口いっぱいに広がる。好みで抹茶塩をつけて。
とうもろこしと肉をただ、合わせるだけではちょっとアイディアが足りない。とうもろこしの芯の部分を肉にしたら面白いかなと考えた結果、いまの形になりました。コロナ前は海外のスターシェフもSNSで見て店に来たと言ってくれてうれしかったです。美味しさのために尽力することは大前提。いかに付加価値をつけて喜んでもらえるかが大切です。アウトプットのためにインプットは必要不可欠なので、焼肉に限らず、いまも時間を見つけては地方やさまざまなジャンルのお店を食べ歩いています」
▲ ロゼカツサンド。インスタでもVanneさんの“交差ポーズ”の投稿が多数。肉を1度火入れし、衣をつけて短時間揚げることで夢のようにふんわりした食感に。
最近はSNSで焼肉の新規開拓をする人も増えているようですが、Vanneさん流の美味しい焼肉店の発掘方法はありますか?

「僕はよく肉眼を磨く、という言葉を使うのですが、これは実際にお店に食べに行ってみることで養われるものだと思っています。地方に行った時に活用するのがGoogleマップ。近くの焼肉店のなかから、いくつか候補を絞って店や肉の写真を見ると、ここのロースは美味しそうとか、ホルモンの艶がいいなとか(笑)。で、ピンと来たお店に行ってみる。ジャケ買いじゃないですけれど、それでいいお店に出合うとうれしくなります。情報がたくさん得られる時代だからこそ、自分なりの視野を持ち、体や頭を使うことはとても大切。これからも僕やお客さんが楽しい! と心から思えて、幸せになれる焼肉を追求したいです」
▲ 「和牛 ウニ キャビア」。食材は厳選したものをふんだんに使うのがVanneさんのこだわり。「カリッと焼いた食パンのうえに肉もキャビアもうにもたっぷりのせてどこまでもリッチな味わいに」

蕃 YORONIKU

住所/東京都渋谷区恵比寿1-11-5 GEMS恵比寿8階
電話/03•3440•4629
営業時間/17:00~24:00 
休/無休

*Vanneさんによるスペシャルコースは不定期受付。


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