• TOP
  • GOURMET
  • 昭和の名店「アンヂェラス」が70年の歴史に幕。さよなら「バタークリームケーキ」

2019.03.05

昭和の名店「アンヂェラス」が70年の歴史に幕。さよなら「バタークリームケーキ」

新時代の到来を前に、昭和の名店「アンヂェラス」がまたひとつ幕をおろします。みんなが愛したあのバタークリームの味を忘れたくないから、これからも長く愛せる逸品を探しました。

CATEGORIES :
TAGS :
CREDIT :

文/秋山 都 写真/野頭尚子

毎回、旬のレストランや話題の新店をご紹介していく連載「美食のネタ帖」。その第10回はこのほど70余年の歴史に幕をおろす老舗喫茶店から、私の大好きなバタークリームのスイーツへと思いを馳せます。

またひとつ、幕をおろす昭和の名店

さて、LEON.JPでは「銀座最古にして唯一のキャバレー『白いばら』は何故枯れないのか?」がおかげさまで人気記事。こちらは昭和6年にオープンした人気キャバレーでしたが、惜しまれながら2018年1月に閉店してしまいました。
「アンヂェラス」は昭和21年創業。礼拝堂をモチーフにしたクラシカルな建築が目を引きます。
そして今また、昭和の名店がひとつ、幕をおろそうとしています。その名は「アンヂェラス」。私がこの名前を初めて聞いたのは16歳のときでした。当時、浅草でデートをした開成高校の男の子が「ここはね、永井荷風も通っていたカフェなんだよ」と教えてくれたのが最初でした。でも、当時、ナガイカフウって誰だっけ? あ、荷風ってカフウって読むのね、ニフウかと思ってたよ! ぐらいの知的レベル(今も大差ないけど)だった私はさほど興味を持たず、「ねぇ、浅草ってジャクベ(ジャック&ベティ)か、シェーキーズ(当時ピザ食べ放題やってた)ないの?」と聞いたりして、うんざりした顔をされたものでした。

そこから一気に数十年経ちまして、荷風も花袋も足穂も一応、名前だけなら読めるようになった私。「アンヂェラス」にも数回足を運び、「ここは水出しコーヒーを日本で初めて出したらしいよ」「自動ドアを採用した第一号店なんだって」「池波正太郎や手塚治虫も通ってたの」といっぱしのツウぶったりしておりました。
PAGE 2
そんな「アンヂェラス」が平成の終わる前、3月17日に建物の老朽化を理由に閉店。私がこのニュースでもっともショックだったのは、「またひとつバタークリームの名物ケーキが消えていく」ということ。
このバタークリームとは文字通り、たまご、砂糖、バターを混ぜたもの。今でこそ、ケーキは生クリームが主体ですが、40年くらい前はバタークリームのケーキが多く、生クリームを使用したケーキは高級品という印象でした。私はこのバタークリームのケーキが大好きなのです。

バタークリームの名品「アンヂェラス」よ、さようなら

アンジェラスは残念ながら3月17日に閉店予定。
そして「アンヂェラス」の名物といえば、店名と同じく「アンヂェラス」というバタークリームのケーキです。白はバタークリームベースにホワイトチョコレートをかけ、黒はコーヒー味のバタークリームにスウィートチョコレートをコーティングしています。
アンジェラス(黒・白)各330円
こっくりとリッチな味わいなのに甘さ控えめなオトナ向けのケーキ。この「アンヂェラス」がもう味わえなくなるのは悲しい。ただでさえ、バタークリームは最近、生クリームに押され気味でなかなかお目にかかれないのですから。鷹番の「マッターホーン」(昭和27年創業)や駒込の「アルプス」(昭和34年創業)にはまだバタークリームのケーキが健在ですが、バタークリームファンとしては貴重なアドレスをこれ以上減らしたくないというのが本音です。
PAGE 3

バタークリームの名品よ、永遠に!

そこでここでは、私のバタークリーム遍歴をたどり、これは今後も長く食べられるだろうという新旧の定番をふたつご紹介します。
まずは昭和22年に銀座で創業した「ウエスト」。リーフパイがおなじみです。銀座本店のクロスのかかった椅子や、青山ガーデンの解放感あるテラスなど、居心地のよいカフェとしても人気ですが、今回はこの「オーダーケーキ」を。

前日の正午までにオーダーすれば当日受け取れるこの「オーダーケーキ」は、写真の白いもののほか、チョコクリーム、モカクリームの3色すべてバタークリームベース。有塩バターを使用しているため、ほのかな塩気がよりリッチなコクを与えています。
PAGE 4
ガトー・エシレ ナチュール4,860円(税込) お問い合わせ/www.echire.jp
「ウエスト」をクラシカルなバタークリームの逸品とするなら、ニューウエーブの逸品はこちら。高級バターの代表格である「エシレ」(フランス中西部・エシレ村で伝統を守り作られるAOP認定フランス産発酵バター)がたっぷり使われたケーキ。なんと材料の半分がエシレバターだという、おいしさもカロリーもケタはずれなスイーツです。

ナイフを入れると5層に重ねられたスポンジとバタークリームの美しい断面に誰しも歓声を上げるはず。1日15台限定で販売はひとり1台まで、とかなり貴重品ですので、出会えたらラッキー。このときばかりは日ごろのダイエットを忘れておいしくいただきましょう!

今回はなつかしのバタークリームに注目しました。
元号が変われば時代も変わる。そして街や店もうつろいます。でも、その変わり身の速さにあえて目をつぶることもときには意味あるのかな、と。新しいお店や、斬新な食のトレンドも気になりますが、たまには旧いものをたずねてみるのも面白いと思っています。
<筆者追記>
2019年3月6日に本記事を公開後、読者の方より「アルプス」(駒込)も3月に閉店予定であるとお知らせいただきました。お店に確認しましたところ、喫茶は3月10日で終了、洋菓子の販売も3月15日までは確実に行うがその先の予定はわからない、ということでした。長く愛されてきたスワンシューやモカロールが食べられなくなるのは悲しいことです。もちろんバタークリームのケーキも!

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

LEON.jpの最新ニュースをお届けします。

RECOMMEND FOR YOUおすすめの記事

RELATED ARTICLES関連記事

SERIES

READ MORE

SPECIAL