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2025.09.20

残すは3週間余り。大混雑の大阪・関西万博、それでも行くべき理由とは?

残すところあと3週間余りの大阪・関西万博。すでに入場者は2000万人を超え、これからは駆け込み来場者も増えそうとのこと。まだ行ってないアナタ、もういいかなとか思ってませんか? いやいや行かないなんてもったいない。先日訪れた筆者がその理由をご説明します。

CREDIT :

文/森本 泉(Web LEON)

大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    大屋根リング
▲ 巨大な大屋根リング。©Ibamoto

大阪・関西万博に今からでもぜひ行くべき理由とは?

大阪・関西万博には行きましたか? 4月中旬に始まった万博も開催期間は残すところ3週間余り(10月13日まで)。暑いんでしょ? 混んでるんでしょ? お勉強みたいな展示をわざわざ大人が見る意味ある? といまだ夢洲(ゆめしま)を訪れていないアナタにも理由はあるでしょう。どれもほぼ正しい。筆者もそう思っていました。でも、一度訪れた今は違います。行かないなんてもったいない。騙されたと思って行ってごらんなさいと。筆者も、なんならもう一回行きたい気分です。
では何がいいのか。やはりまずは、今、乗りに乗っている建築家・藤本壮介さんの設計による大屋根リングでしょう。その壮大さは行って実物を体感せねば決してわからない。なんたって世界最大の木造建築ですよ。1周2km。万里の長城やギザの大ピラミッドにも通じる常軌を逸した存在感に言葉を失います。大きい建築物ってそれだけで人の心をかき乱すということがしっかり実感できます。
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大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    大屋根リング
藤本さんは「万博とは世界が集まり、多様性がつながる場所」だとし、その象徴として巨大なリングを構想したと言っています。「このリングの内側から、未来が生まれるんだという力強いメッセージを発信したい」と言うように、まさに未来を感じる光景がそこには広がっているのであります。

そしてこの巨大リングの上を散歩すればよくわかるのですが、万博の面白さとは建築物の面白さであるということ。普段都会で見るのは無駄のない直線的で機能的なビルばかり。でもここに集まっているのは、その真逆。いわば無駄に溢れた建物たち。
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大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    大屋根リング
個性豊かで遊び心に満ちた建築の数々は、子供が描いた夢の世界をそのままリアルに作ってしまったようなある種、崇高な稚気を感じさせます。こんな中にいると感性は嫌でも刺激され、普段使わないセンサーがびびんと反応して、なんだか歩いているだけで笑いが止まらなくなるのです。

今回はそんな刺激に満ちた会場の中から、筆者が訪れたいくつかのパビリオンをご紹介しましょう。
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大地から天空に伸びたナツメヤシの巨大柱群が圧巻のUAE館

まず最初に向かったのはアラブ首長国連邦(UAE)館。石油・天然ガスの一大産出国アブダビや、世界の富裕層が集まるドバイなど7つの首長国が集まって建国したUAEは、今や観光、金融、貿易面などで目覚ましい発展を遂げ世界の最注目国のひとつ。実は古くから日本とも関係が深く、1970年の大阪万博にも、統一以前のアブダビ共和国として参加していました。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    UAE
▲ 印象的なパビリオンはUAEと⽇本のクリエイターによる学際的なネットワークである「Earth to Ether Design Collective(アース・トゥ・イーサー・デザイン・コレクティブ)」によって設計された。©UAE pavilion
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2021年にはドバイで万博(正式名称は「2020年ドバイ国際博覧会」)が開かれ話題になりましたが、今回、UAEの経済・技術・文化における先進性を世界に向けてアピールすべく作り上げたのがこちらのパビリオン。

そのテーマは「大地から天空へ」。ガラス張りの巨大な建物の内部には高さ最大16mというナツメヤシの柱が90本立ち並ぶ圧巻の空間があります。大地に根を張り、天空へと伸びるナツメヤシは、UAEの人々の精神を象徴する証だそうで、その廃材を束ね日本の匠の木工技術と融合させることで、革新的な建築デザインを実現したとのこと。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    UAE
▲ 屹立する90本の柱に陽光が差し込むその下は、静けさと⼼地よさに包まれた“現代のオアシス”のよう。©UAE pavilion
巨大な柱に囲まれるパビリオン内にはナツメヤシ由来の乳香の甘い香りがほのかに漂っていて、心も体もゆったりとリラックスでき、まさにオアシスのよう。
展示は随所に配置され、自由観覧できるスタイル。文化遺産、宇宙探査、医療、持続可能な技術におけるUAEの先進的な取り組みなどがパネルや映像などを使って紹介されており、会場にいるユースアンバサダー(若き親善大使)と呼ばれるスタッフが丁寧に説明してくれるので非常にわかりやすかったです。
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館内にはUAEの伝統的な食事(エミラティ料理)を楽しめるレストランも併設されています。料理の主⾷はお米で、さまざまなハーブやスパイスで味つけられているのが特徴です。スパイスが多用されているものの想像よりも優しい味わいで、ほぼ辛さは感じません。移住者が多い国(⼈⼝の88%が200以上の国から来ている外国⼈移住者)なので、⾷⽂化もミックスされユニークな発展を遂げたのだそう。イスラム教國なのでハラルメニューではありますが、十分美味しく満足度は高かったです。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    UAE
▲ 提供されている料理は、日常の家庭料理というより、お客様をお迎えする際や家族が集まる時、あるいは日本のお正月にあたる「イード」と呼ばれるお祭りの場で振る舞われる特別な料理をイメージしているそう。
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ポップなアート展示で死と再生の物語を表現したブラジル館

他に回ったパビリオンも駆け足でご紹介しましょう。こちらはブラジル館。今年は日本とブラジルの国交樹立130年を記念する年だそう。BRICSの一角を占め、「グローバルサウス」の中心国としても世界の注目を集めるブラジルですが、日本ではリオのカーニバルとサッカーで親しみを感じている人が多いかと。パビリオンもかなりの人気で多くの人で賑わっていました(10月にはサッカーで久々の代表戦も控えておりますね)。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    ブラジル
▲ ブラジルの情熱的なイメージからすると意外にシンプルな外観。©Flavio Coddou/ApexBrasil
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エントランスには日本語で掲げた「我々の存在の真意とは。」のメッセージが。なかなかに哲学的な内容ではありますが、「ブラジル」と書かれた国名ともども、そのフォント(書体)がポップでお洒落だなぁと感じました。
展示は5部構成ですが、一番インパクトがあるのは最初の空間。木やポリ袋などリサイクル素材で出来た人間や動物、植物のオブジェが天井から吊り下がり、呼吸するように膨らんだりしぼんだり。風が吹いたり、動物の鳴き声がしたりと、ジャングルに迷い込んだような環境を作り出すことで、生命の多様性、死と再生の物語が表現されています。
この不思議なアートのクリエイティブ・ディレクションを担ったのは、ブラジルの女性舞台美術家ビア・レッサ氏。「自然との共存」や「環境と人間との関わり」をテーマに「直線的な読解」ではなく「感覚的で内省的な体験」を可能にする作品を目指したと言うように、短い時間触れただけでも強い印象を残す展示でありました。
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建物全体を覆ったロープが風に揺れる姿が美しいポルトガル館

お次はポルトガル館。こちらのテーマは「海洋:青の対話」。大航海時代に帆船で世界の海を駆け巡り、日本の種子島には鉄砲をもたらしたポルトガル。約500年前にかの国と日本が「出会う」ことを可能にした「海」に着目して、両国の関係やポルトガルが国として海にどのような関心を持ち、海洋環境の保護育成にどのように関わってきたかなどが、わかりやすく展示されています。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    ポルトガル
▲ 隈 研吾氏の設計によるユニーク極まりないポルトガル館。周囲を垂れさがったロープが取り囲む。©aicep Portugal Global
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しかし、ポルトガル館で最も印象的なのは、何と言ってもその外観。長短さまざまな長さの約1万本のロープが建物全体を覆い、ゆらゆらと風になびく姿は、「ウルトラマン」に出てきた怪獣ウーのようでもあり(古っ!)、なんとも不思議な感慨に襲われます。

設計者は隈 研吾氏。「大航海時代の帆船の重要な道具のひとつであったロープを用いて、海という自然自体を身体感覚として実感できるような場所を作ることを思いついた」そうで、ロープが風に揺れ、時に細かく振動することで、波動、振動の集積体である海という場所をそこに生成させたのだそうです。いやぁ建築家の発想って凄いし、それを実現してしまう技術力も頼もしいですね。
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ハイジとともに最新テクノロジーで遊べるスイス館

そして次はシャボン玉を積み重ねたようなメルヘンチックな外観が特徴のスイス館です。スイスと言えばアルプスの少女ハイジというイメージを裏切らず、こちらのテーマは「ハイジと共に、テクノロジーの頂へ」。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    スイス
▲ シャボン玉のような4つの球体で構成されるスイス館。それぞれ、「価値観(Values)」、「ビジョン(Vision)」、「期待(Anticipation)」、「喜び(Joy)」を表している。©FDFAFDFA, Presence Switzerland
スイスは、アルプスという世界的な観光地をもつ一方で、高級時計の本社が集まる精密機械技術の一大拠点でもあり、近年は多くのIT企業が拠点を置くヨーロッパ随一のIT大国としても知られています。アインシュタインもスイス国籍を持って長らく住んでいたなど、大学や研究者の質が高く、その文化と最先端技術が共存するスイスの姿をエンタテインメント色強めにアピールする展示となっています。
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個人的に面白かったのは訪問者がそれぞれの「夢」をシャボン玉に詰めて飛ばすというアート体験的な展示。お勉強感は低めで楽しむことが優先の余裕がある感じがカッコいいではありませんか。ハイジが公式マスコットになっていて、一緒に写真を撮れるコーナーがあるほか、「ハイジカフェ」まであって、かなりの人気でした。
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アフリカの最前線がわかるアンゴラ館と岩塩の迷宮パキスタン館

他にはアフリカのアンゴラ館とアジアのパキスタン館にも伺いました。アンゴラは長らく続いた内戦が2002年に停戦合意を迎えて以降、次第に社会も安定し、今ではアフリカで2番目に大きな石油生産国として経済発展も進み、今回はアフリカ諸国の中で唯一の独立パビリオンを展開しています。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲    アンゴラ
▲ アフリカ諸国の中で唯一の独立パビリオンとなっているアンゴラ館。©ANGOLA pavilion 
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展示はチッソラという少女がマラリアに苦しんだ幼少期の経験をきっかけに医療従事者となった実話をもとに制作された《チッソラの夢》という10分ほどの動画がメインコンテンツです。アンゴラが直面する医療問題がストレートに表現された展示で思わず見入ってしまいました。

他にはレストラン「イムボンデイロ」でアンゴラ人のシェフオクタヴィオ・ネト氏が腕を振るう本場の郷土料理が楽しめるほか、併設のステージでは、アンゴラのミュージシャンたちによるメチャクチャ元気なライブ演奏があり、歌にダンスにとまさにアンゴラの文化を五感で楽しめる空間となっています。
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そして最後にご紹介するパキスタン館は複数国が共同利用する共同館「コモンズD」の中にある1ブースという感じなのですが、他と比べてもここだけ大人気でずっと行列が続いているのです。なぜかと言えば、こちらのブース内は同国の名産であるピンク色の岩塩「ピンクソルト」約12トンで埋め尽くされているというかなり特別な空間だから。
大阪・関西万博 WebLEON   夢洲   パキスタン
▲ パキスタン館のピンクソルトの展示。赤みがかっているのは酸化鉄などを含んでいるためで、酸化鉄の量が多いほど濃い色になる。©PAKISTAN pavilion
まさにピンクソルトの迷宮。岩塩が敷き詰められた床の上に塩の塊を重ねた柱が何本も立ち並び、なんとも美しく幻想的な世界が広がっています。岩塩に囲まれた椅子に座ることで、伝統的な岩塩療法「ハロセラピー」も体験できるとか。いやはや世界は広い。
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マジメにバカする楽しみを味わえるのが万博⁉

ということで、半日の滞在でしたが6つのパビリオンを訪ねることが出来ました。そこで改めて万博って子供が描いた夢の世界をそのままリアルに作ってしまったようだなという最初の感想に戻るのですが、いわば万博とは、世界中の国がまじめにバカをするお祭りなのではないかと、そんな風にも思いました。

それとともに感じたのは「学ぶって楽しい」ということ。本を読んだり授業を聞いたりということだけでなく、目や耳はもちろん、身体全体を使ってさまざまなものを感じ、自分になじみのなかった情報を取り入れることの心地よさ。心も体も急速にリフレッシュされていくように感じました。
大阪・関西万博
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技術の進歩は目覚ましく、学び方も常に進化しています。万博はその見本市です。よりエンタメ性の強い、刺激的な学びの方法が生まれていることが実感できます。
期間はあと3週間余り。まだ行ってないアナタは幸せなのかもしれません。こんな楽しい初体験がこれからまだできるのですから。1人で行っても十分楽しいですが、彼女(もしくは奥さん)と一緒にまじめにバカしていただくと、更に幸せは大きくなること間違いなしですよ!
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