
藤本の頭の中の“森”を垣間見て、その一部になる⁉

▲中をよくみると、思い思いに過ごす人々が。同パビリオンは世界中の建築家の憧れである上、準備期間も短く、当時は相当なプレッシャーだったとご本人談。
▲完成すれば日本一の高さとなる「TOKYO TORCH Torch Tower」など、現在進行中のプロジェクトも一足先に見ることができる。それにしても(余計なお世話ですが笑)「ちゃんと休めてるのかな?」と心配になる仕事量。
▲「流れが空間を生み出し、中は外に、外は中になる」。これらのオブジェは「ミニチュアに人を置くと建築物に見えてくる」という発想のアート作品群「Architecture is Everywhere」として2015年にNYのMoMAでも展示された。
▲中をよくみると、思い思いに過ごす人々が。同パビリオンは世界中の建築家の憧れである上、準備期間も短く、当時は相当なプレッシャーだったとご本人談。
▲完成すれば日本一の高さとなる「TOKYO TORCH Torch Tower」など、現在進行中のプロジェクトも一足先に見ることができる。それにしても(余計なお世話ですが笑)「ちゃんと休めてるのかな?」と心配になる仕事量。
▲「流れが空間を生み出し、中は外に、外は中になる」。これらのオブジェは「ミニチュアに人を置くと建築物に見えてくる」という発想のアート作品群「Architecture is Everywhere」として2015年にNYのMoMAでも展示された。
彼によると東京のような都市にも、その“森的なもの”を見出せるそうで、例えば密集した木造家屋や電柱、自転車といった雑然としたものが街の風景を作っているのだとも。様々な太さの枝が乱雑にあって、その密度の高い状態の中で守られているような安心感と、同時に外に開かれているという矛盾。



今年一番の話題をさらった関西・大阪万博「大屋根リング」の舞台裏とは

▲木材の柱と梁を金属の楔を使って組み上げているのが特徴。日本の伝統的な木造建築の技法を踏襲しつつ、3つのゼネコンがそれぞれの手法で構築した。模型の中は歩けるようになっていて「リングの下で巨人になったような気分を体感できる」という意図も。
▲2020年4月から同年8月までの間に描かれた「大屋根リング」の構想スケッチを時系列で展示。相当な試行錯誤があったことが窺える。
▲実は展示を見た後日、大屋根リングをお目当てに初めて万博へ。思い描いたサイズより遥かに壮大で度肝を抜かれました……! 事前に得た情報や知識のおかげで、この世界一の巨大建造物との出会いがさらに感慨深いものに。
▲木材の柱と梁を金属の楔を使って組み上げているのが特徴。日本の伝統的な木造建築の技法を踏襲しつつ、3つのゼネコンがそれぞれの手法で構築した。模型の中は歩けるようになっていて「リングの下で巨人になったような気分を体感できる」という意図も。
▲2020年4月から同年8月までの間に描かれた「大屋根リング」の構想スケッチを時系列で展示。相当な試行錯誤があったことが窺える。
▲実は展示を見た後日、大屋根リングをお目当てに初めて万博へ。思い描いたサイズより遥かに壮大で度肝を抜かれました……! 事前に得た情報や知識のおかげで、この世界一の巨大建造物との出会いがさらに感慨深いものに。
▲「リングの下では来場者が作った時には想像もしなかったような過ごし方をしていて、新たな発見があった」と同展のインスタライブで語っている。
▲「建築とは人が集まる場を作ること。では世界が集まる場所を作ったら、どんな姿になるのか?」。そんなシンプルな問いからスタートした一大プロジェクト。インタビュー動画では1970年の大阪万博の丹下健三と岡本太郎両氏へのオマージュについても言及している。
▲「リングの下では来場者が作った時には想像もしなかったような過ごし方をしていて、新たな発見があった」と同展のインスタライブで語っている。
▲「建築とは人が集まる場を作ること。では世界が集まる場所を作ったら、どんな姿になるのか?」。そんなシンプルな問いからスタートした一大プロジェクト。インタビュー動画では1970年の大阪万博の丹下健三と岡本太郎両氏へのオマージュについても言及している。
地上約230mの絶景図書室にぬいぐるみショー、未来都市の構想まで盛りだくさん

東日本大震災のメモリアル施設を兼ねた音楽ホール「仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設」の模型を、一週間かけて天井から吊るしたコーナーは思わず様々なアングルに回り込んで見てしまうど迫力。
そして筆者が「とても日本的!」と思ったのが、藤本建築の代表作5作を擬人化し、それぞれキャラ設定まで決めた上で座談会を行うという企画。これは「建築家が上から目線で語るのではなく、建物自身に語ってもらおう!」というご本人の熱い希望のもと生まれたアイデアで、シナリオを何度も練り直し、ギリギリまで調整したのだそう。来場した子どもたちはもちろん、海外からと思われる人たちが興味深そうに眺めていたのが印象的でした。
▲幅さんが掲げたテーマは「森 自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」。ナウシカなんか、懐かしくて思わず読み込んでしまいそう。
▲「北海道伊達市にある児童心理治療施設(2006年)の模型に、カラフルなプロジェクションマッピングで子供たちの動きを表現。「ちょっと隠れたい子供」も含め、色々な子供たちが心地よく生活できる家を目指したのだそう。
▲「たくさんの ひとつの 森」ルームには、2031年竣工予定の「仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設」の模型が大胆に吊るされている。震災のメモリアル施設と音楽ホール、そして人々の震災への想い。「バラバラで異なるものがあるきっかけで繋がるような場所」を思い描いているという。
▲幅さんが掲げたテーマは「森 自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」。ナウシカなんか、懐かしくて思わず読み込んでしまいそう。
▲「北海道伊達市にある児童心理治療施設(2006年)の模型に、カラフルなプロジェクションマッピングで子供たちの動きを表現。「ちょっと隠れたい子供」も含め、色々な子供たちが心地よく生活できる家を目指したのだそう。
▲「たくさんの ひとつの 森」ルームには、2031年竣工予定の「仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設」の模型が大胆に吊るされている。震災のメモリアル施設と音楽ホール、そして人々の震災への想い。「バラバラで異なるものがあるきっかけで繋がるような場所」を思い描いているという。
▲藤本建築のアイコニックな建物たちがぬいぐるみのキャラクターになり、お互いについて意見交換するというシュールなショー。それぞれ性格も設定されている細かさ。私の推しは右から3番目の「白井屋ホテル」ちゃん(?)。画像提供:森美術館
▲学生時代から現在まで全てのスケッチ帳を保管しているなんて凄すぎません!? 一部は今回の展示をきっかけに“発掘”したらしい。リングノートからモレスキンに、ペンの色も初期は黒、後に赤と時代を追って変化。
▲これが未来の街!? 直径高さ共に500mほどの範囲に収まる球体の集合体。それぞれに住宅、公園、森、病院、オフィスなどが備わる。データサイエンティスト・慶應義塾大学教授の宮田裕章氏との合作。
▲藤本建築のアイコニックな建物たちがぬいぐるみのキャラクターになり、お互いについて意見交換するというシュールなショー。それぞれ性格も設定されている細かさ。私の推しは右から3番目の「白井屋ホテル」ちゃん(?)。画像提供:森美術館
▲学生時代から現在まで全てのスケッチ帳を保管しているなんて凄すぎません!? 一部は今回の展示をきっかけに“発掘”したらしい。リングノートからモレスキンに、ペンの色も初期は黒、後に赤と時代を追って変化。
▲これが未来の街!? 直径高さ共に500mほどの範囲に収まる球体の集合体。それぞれに住宅、公園、森、病院、オフィスなどが備わる。データサイエンティスト・慶應義塾大学教授の宮田裕章氏との合作。
分断や排除が危惧される今の世の中に私たちができることだとか、(彼のように具体的な何かを作ることはできずとも)持ち続けたい姿勢や目線を再認識させられましたし、模型やミニチュアがドーンと目の前に迫る展示が純粋に面白い。
建築に詳しくなくとも楽しめる仕掛けが満載で最後まで飽きさせず、時代を象徴する建築家の頭の中を覗き見て、そのパッションを共有したような気持ちにさせてくれるというか。私たちの未来はきっと複雑で多様で、もっと良いものになる。そんな希望に満ちたエキシビションでした。会期は11月9日まで。いよいよラストスパート突入の大阪万博とセットで、ぜひ訪れてみてください!

藤本壮介の建築:原初・未来・森
場所/森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
住所/東京都港区六本木6-10-1
会期/開催中。2025年11月9日(日)まで
時間/10:00~22:00 火のみ17:00まで、9月23日(火・祝)は22:00まで(最終入館は閉館時間の30分前まで) 会期中無休
お問い合わせ/050-5541-8600(ハローダイヤル)
HP/藤本壮介の建築:原初・未来・森 | 森美術館 - MORI ART MUSEUM

● 藤本壮介 (ふじもと・そうすけ)
1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018 年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。2025年日本国際博覧会会場デザインプロデューサーに就任。主な作品に、ブダペストのHouse of Music (2021 年)、白井屋ホテル(2020 年)、L’ Arbre Blanc
(2019 年)、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013 (2013 年)、House NA(2011 年)、武蔵野美術大学 美術館・図書館
(2010 年)、House N (2008 年) など。
● 矢吹紘子 (やぶき・ひろこ)
ライター、編集者、通訳案内士。小誌のほか『BRUTUS』『POPEYE』などライフスタイル誌を中心に記事を執筆・編集。ロンドン大学で修士課程修了後、プライベート通訳としても活動。京都を拠点に海外からのVIPゲストのアテンドや旅のキュレーションを行なっている。
Instagram: @hiroko__yabuki