• TOP
  • CARS
  • 運転歴70年、86歳で運転免許証の更新を決めた理由

2026.04.19

運転歴70年、86歳で運転免許証の更新を決めた理由

1956年に16歳で運転免許証を取得、今年で86歳になる筆者は今年ずっと更新するかを迷っていた。しかし、家族からのある言葉で更新を決めたという。その意外にして確信をついた言葉とは? 運転を愛する方にぜひ読んでいただきたい一編です。

BY :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

イラスト/溝呂木 陽 編集/高橋 大(atelier vie)

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第280回

運転免許証を更新しました!

イラスト 溝呂木 陽 教習所

僕が運転免許を取ったのは1956年。満16歳になってすぐ、、70年前のことだ。


誕生日は4月。つまり、もうすぐ「めでたく!??」86歳になるわけだが、この歳まで元気でいられていることには感謝しかない。


幸い、同い歳の家内も元気で、日々を楽しく過ごせているのは、ほんとうにラッキーだしハッピーなことでもある。


ただし、今年の誕生日(プラス1カ月)は運転免許の更新日がくるタイミングだった。なので、「運転を止めるか続けるか」の決断を下すのにはけっこう悩んだ。

PAGE 2

家内も16歳で運転免許をとり、以来ずっと運転を続けてきたし、運転を楽しんでもきた。


コンパクトで、スタイリッシュで、運転の楽しいクルマが好き、、という価値観が家内と共通していたのも、ハッピーな自動車人生を歩んで来られた大きな理由になっている。


家内はどんなクルマでも臆せず運転したので、僕が忙しい時は、仕事関係のクルマの借り出しや返却を手伝ってくれたりもした。


そんな家内だが、3年前の更新時で長い運転生活にピリオドを打つ決断をした。僕も息子も、まだ運転を続けても大丈夫だと思っていたのだが、家内の決断を尊重した。


そうした流れの中で、僕が運転生活を続けるかピリオドを打つか、、の決断をしなければならない時がこの4月に来たわけだが、むろん、家内にも息子にも相談した。


正直なところ僕は迷っていた。だが、家内にも息子にも、まるで迷いはなかったようだ。

「免許証どうするって、、更新するに決まってるじゃない。なに迷ってるの⁉」と一刀両断だった。

PAGE 3

「僕は今度の誕生日で86歳になるんだよ!」というと、、二人からはほぼ同様な、こんな言葉が返ってきた。


「自分の運転能力のこと、身体能力のこと、誰よりも自分でわかっている。衰えをしっかり自覚して運転していることは、横に乗っていればすぐわかる」。


「それに、免許返納をするべき時は、間違いなく自分でそうするとも思っている。だから心配はしていないし、まだ、好きな運転を続けてほしい」と。


そうした家内と息子の心のサポートがあって、僕は免許更新を決めた。


それからのアクションは早かった。「高齢者講習のお知らせ」葉書を受けとったその日、講習を受ける自動車教習所の予約をとった。


誕生日は4月半ば過ぎだが、なかなか取れない教習所の予約は2月初旬の枠が取れた。場所も良いし、大手教習所だし、、幸先の良い出だしだった。


75歳以上のドライバーには高齢者講習に加えて「認知機能検査」が必要で、さらに違反歴があれば「運転技能検査」も加わる。

PAGE 4

認知機能検査は難なく通過。だが、「違反歴」が一つあったので「運転技能検査」も受けなければならない。しかし、これを「100点!」で通過できたのはうれしかった!。


担当の教官が「素晴らしいです。90点台はボチボチいらっしゃいます。でも100点はすごい‼」と、まるで自分ごとのように喜んでくれたのには驚いた。


むろん、運転技能検査をパスできるとは思っていたが、100点はやはり予想外だった。


運転技能に基本的な問題がないことには、それなりの自信も確信もあったが、、1点のマイナスもなかったことには驚くしかない。


採点方法から考えれば、ほんの些細なミスでもマイナス点がつくはず。だから、、僕は「教習所ルールでの完璧な運転をした‼」ということになる。


そこで、「なぜ100点だったのか?、なぜ完璧だったのか?」を考えてみたのだが、たどり着いたのが「安全運転の基本を忠実に守ったから」という答えだった。


「そんな答えじゃあ真っ当で当たり前すぎて、面白くもなんともないよ!」と怒られそうだが、これ以外に考えつかない。

PAGE 5

教習車の運転席に座り、ドアを丁寧にきちっと閉めてから、まずは教官にしっかり目を向けて、「おはようございます!よろしくお願いします!」と挨拶。


それに対して、教官からも、柔らかい笑顔と共に「おはようございます!」との言葉が返ってきた。


いつも思うことだが、気持ちのいい挨拶を交わすことは人と人の繋がりの基本。だから、ここがうまくゆけば、そこから先もきっとうまくゆく、、と、僕は考えているし、経験的にもそう信じている。


いい感じの挨拶を交わせたことで、僕は肩の力が抜け、緊張感も消えた。


ゆったりした気持ちで、ドライビングポジションを細かく、きっちり合わせ、シートベルトを締める。そして、最後にドアミラーの調整をして、スタート準備は整った。


しっかり後方確認をしてスタート。教官の指示に従ってコースを走ったが、朝一番の時間帯だったのでコースは空いていて、とても走りやすかった。


僕は、とにかく「安全運転の基本」に忠実に走った。信号厳守はもちろん、一時停止での停止線オーバーをしないこと、走行車線をブレずにキープし、車線変更は後方確認を確実に行ってから、滑らかに移動した。

PAGE 6

障害を乗り越えた直後の急停止の指示には、素早く、強いブレーキングを行った。


なにをしたのか、、覚えているのはこのくらいで、あとは淡々と時間が過ぎていったことくらいしか記憶にはない。


これで、僕の運転寿命は3年延長されたことになるが、ここまで無事故で来られたいちばんの理由は、「安全運転の基本をしっかり守ってきた」からだと思っている。


それは「飛ばさない」といった意味ではない。クルマの試乗評価は僕の仕事の核になってきたものだし、世界中のクルマを世界中で走らせてきた。メーカー関係の難度の高いテストも、僕の仕事の柱の一本だった。


いろいろな形でモータースポーツにも参加してきたし、300km/h超の世界も、何度も体験してきている。


70年の運転期間を通じて、たぶん200~250万kmほどは走っていると思う。でも、幸いにも、自分のミスによる事故は1度も起こしていない。

PAGE 7

1度だけ、高速道路で5台の玉突き事故に巻き込まれたことがある。、、が、これも、僕は停止できていたのだが、後続のトラックに押されて前のクルマに押し付けられた形の事故だった。警察の現場検証でも、これは証明されている。


もちろん、ヒヤッとしたこともあるし、幸運に恵まれたこともある。だが、「事故は起こさない」「起こしたくない」という気持ちはずっと強く持ち続けてきた。


そんな気持ちが、「事故を起こさないための僕なりのルール」を自然に作り、僕はそれを守り通してきたということになるのだろう。


僕は、75歳になった頃から、視力や反射力に衰えを感じ始めた。とくに夜間視力の低下には不安を抱き、夜間運転はできるだけ控えるようになった。


夜の仕事は基本的に断っているし、断れない時は電車かタクシーを使っている。


夜の食事などには出掛けているが、クルマを使う時の行く先は近場にし、勝手知ったる道で行けるところに絞っている。

PAGE 8

高齢になれば、視力の低下は防ぎようがないし、今度の免許更新でも、いちばん不安だったのは視力検査だった。


目のメインテナンスはできる限りやっているし、メガネにも注意を払っている。もし、視力検査に落ちたら、定評ある眼鏡屋に相談して、ドイツ製の特別なレンズのメガネを作ろうとも考えていた。


ちなみに、今回の視力検査で使ったメガネは、眼科で出してもらった処方箋にしたがって近くの眼鏡屋で作ってもらったもの。


だが、その眼鏡屋には、「あなたの目ではこの処方でギリギリですが、もしかしたら合格できないかもしれません」と厳しいことを告げられた。


そんなことで、かなり重い気持ちで検査に臨んだのだが、「あっさり合格!!」という最良の結果で終わった。


検査の2ヶ月前あたりから、効くか効かないかはわからないが、「くっきり見る力を改善!」すると謳うサプリメントを飲み始め、同様の謳い文句の目薬も使い始めた。

PAGE 9

そして、2日前からは、目を疲れさせないため、「できるだけPCと携帯は見ない」ように、本も読まないようにした。


できるだけ遠くを見るようにするとか、時々目を閉じて休ませるとか、、もした。


PCで調べた「高齢者が運転免許の視力検査をパスするためにやるべきこと」は、ほとんどやったということだ。


まぁ、それだけ「まだ運転を続けたい!」という気持ちが強かったということなのだろう。でも、そんなあれこれが結果的に報われて、ほんとうにうれしかった。


そして、今は、日々、「あと3年、絶対に無事故運転を続けるんだぞ!」と、繰り返し自分に言い聞かせている。

岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
PAGE 10
22名の模型仲間に溝呂木先生の作品出展

22名の模型仲間に溝呂木先生の作品出展

22名の模型仲間、ZMC(贅沢ミーティングクラブ)の第4回模型展示会「心のクルマ展」が開催されます。

腕利きの仲間たちによる高度な模型完成品100台以上の展示会されるそう。溝呂木陽の水彩画も展示とのこと、ご興味ある方はぜひ参加してください。


開催日時/5月1日(金)~4日(月)10:00~18:00(初日12:00、最終日は17:00まで)

入場無料

住所/東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-1 吉祥寺永谷シティプラザ1F

場所/ギャラリー永谷2

HP/http://www.ntgp.co.jp/rentalspace/gallery.html

こちらの記事もいかがですか?

PAGE 11

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        運転歴70年、86歳で運転免許証の更新を決めた理由 | 自動車 | LEON レオン オフィシャルWebサイト