2026.03.15
【試乗リポート】生産終了はつくづく惜しい! 不世出のライトウェイトスポーツカー「アルピーヌA110」
今年6月、フランスのミッドシップスポーツカー「アルピーヌA110」が惜しまれながら生産終了する。それにともない国内受注ももう間もなく3月末をもって締め切りとなる。“軽さは正義”を体現する、アルピーヌA110にあらためて試乗してみた。
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写真/アルピーヌ ジャポン 編集/森本 泉(Web LEON)

車両重量は約1100kg。“軽さは正義”を体現する
アルピーヌA110の国内販売がはじまったのは2018年のこと。それからおよそ8年のときを経た今年の6月、アルピーヌの象徴ともいえるフランス・ディエップ工場において生産終了を迎えるという。その理由は最近よく耳にする安全機能やソフトウェア関連など最新の法規制に適合できないというものだ。

▲ 1963年にデビューした初代A110。軽さを活かしWRCをはじめ数々のラリーで勝利した。
A110のルーツは1960年〜70年代にかけて生産された初代に遡る。初代はポルシェ911と同様にリアエンジン・リア駆動で2+2の4シーターであったのに対して、この2代目では初代のデザインエッセンスを取り入れながら、ミッドシップの2シータースポーツカーとしてよりダイナミクス性能を高めることに注力している。
白眉なのはその軽さ。ボディの96%をアルミニウム製とすることでベース車両の車両重量は約1100kgと現代のクルマとしては驚異的な軽さを実現。軽ければむやみに馬力をあげる必要がない。コーナリング性能も、ブレーキの効きもよくなる。タイヤは細くていいし、燃費もよくなる。自動車重量税だって安くなる。まさに“軽さは正義”を体現する。
そして、前後重量配分を理想的な44対56とし、前後シャシーにはタイヤの接地性に優れるダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。1.8ℓ直4ターボエンジンをミッドシップ搭載し、トランスミッションにはゲトラグ製7速DCTを組み合わせる。軽さゆえの傑出したハンドリングはデビューから8年が経過したいまもまったく色褪せない。

▲ 左からベースの「A110」、「A110 GTS」、「A110 R 70」。
8年のあいだにさまざまなバリエーションが登場したが、2025年にアルピーヌブランド創立70周年を迎えたタイミングで、A110のラインアップは標準車両をベースにした「A110 アニバーサリー(限定車)」、そしてハイパワーな「A110 GTS」、サーキット仕様の「A110 R 70」の3モデル構成となった。

▲ 手の届く範囲に使用頻度の高い物理スイッチが配されたシンプルで使いやすいインテリア。シフト切り替えはセンターコンソールにある丸いボタンで行う。
まずはベーシックグレードの「A110 アニバーサリー」に乗る。最高出力252ps、最大トルク320Nmを発揮する1.8ℓ4気筒ターボエンジンは、しっかりと6000回転まで吹け上がり乾いたエキゾーストノートを奏でる。スポーツモードを選択すれば、バラバラと雰囲気のあるバブリング音を放つ。足回りはA110ラインアップの中で最もしなやかなアルピーヌシャシーを採用。車両重量は1120kgでとにかく軽快でまさに人馬一体。これぞA110という乗り味だ。

▲ 「A110 GTS」の最終限定車「BLUE ALPINE EDITION」には、グレーレザーのサベルト製スポーツシートが備わる。
「A110 GTS」は、ハイパワーな最高出力300ps/最大トルク340Nmのエンジンとスポーツシャシーを組み合わせた仕様。ベースのA110と比較すると明らかにパワフルで足は少しばかりかため。タイヤサイズはベースモデルがフロント205/40ZR18、リア235/40ZR18なのに対して、リム幅を拡大し215/40ZR18、245/40ZR18と10mmずつワイドにしている。
このシャシーチューニングに対するマニアックさがアルピーヌらしいところ。車両重量は1130kgとベースからわずか10kg増し。GTと名付けられていることもあり高速道路をメインにツーリングするような場面では、パワーもあって走りやすい。

▲ レーシングカーさながらの「A110 R 70」。市販車としては異例のカーボンホイールは一式100万円を超える逸品。
「A110 R 70」は、サーキット向けの超本格仕様。フロントボンネットからルーフ、リアフード、リアスポイラー、そしてホイールに至るまでカーボン製である。そのかいあって、車両重量は1090kgとベースでマイナス30kgを達成している。
カーボン骨格のシート表皮にはアルカンターラを採用。シートベルトは3点式が省かれており、サベルト製の6点式を標準装備するというスパルタンさ。エンジンはGTSと同様のものだが、アジャスタブルレーシングダンパー、ブレンボ製ブレーキキャリパー、セミスリックタイヤのミシュランパイロットスポーツCUP 2といった本格パーツが備わる。またさらなる軽量化のためアクラポヴィッチ製チタンエキゾーストシステムがオプションで用意されている。

▲ カーボン骨格のフルバケットシート。シートベルトは3点式が省かれ、サベルト製の6点式を標準装備する。
引き締まったシャシーやセミスリックタイヤを装着していることもあり、軽快に動くベースモデルとはまったく挙動が異なる。ステアリングフィールに手応えがあり、コーナリングのスタビリティも高い。いかにも空力に利きそうな大型のリアウイングやボディ下部にもディフューザーを備えており、本領を発揮するにはやはりサーキットに行くほかなさそうだ。まさにレーシングカーそのもので、これほど本格的なチューンドマシンをメーカー自らがつくりあげていることには驚くほかない。

▲ 軽量化のためリアウインドウは、カーボンリアフードに置き換えられている。後方視界はデジタルバックミラーで確認する仕組み。
新車が欲しいなら、いままさにファイナル・カウントダウン
聞くところやはりベースモデルの人気が高く、「A110 アニバーサリー」はすでに完売。最終限定車としてボディカラーがアルピーヌの象徴であるブルーアルピーヌメタリックの「BLUE ALPINE EDITION」が30台用意されたようだが、そちらも完売のようだ。あとはディーラー在庫を探してみるほかないだろう。

▲ 日本市場向けの最終限定車「BLUE ALPINE EDITION」。
「A110 GTS」と「A110 R 70」に関しては通常のカタログモデルとベースモデルと同様の最終限定車「BLUE ALPINE EDITION」が設定されているが、いずれにせよ受注は3月末までと残された時間はわずかだ。
しかし、つくづく惜しいと思う。現在、新車として販売されているスポーツカーで、車両重量約1トンをキープし、毎日乗ることができる快適性や実用性を兼ね備えたモデルといえば、このA110とマツダロードスターしか思いつかない。次期A110は電気自動車になると発表されているが、果たしていまの軽さを実現することはできるだろうか。

▲ 先日公開された次期型アルピーヌA110用のプラットフォーム「APP」(Alpine Performance Platform )。BEV専用でははくICE(内燃エンジン)も搭載可能という話もあり、新たなライトウェイトスポーツの誕生に期待したい。
■ ALPINE A110
全長×全幅×全高/4205×1800×1250mm
ホイールベース/2420mm
車両重量/1130kg(ベース/GTS)1090kg(R70)
エンジン型式/直列4気筒ターボチャージャー
総排気量/1798cc
最高出力/252PS/6000rpm最大トルク/320Nm/2000rpm(ベース)
最高出力/300PS/6300rpm最大トルク/340Nm/2400rpm(GTS/R70)
駆動方式/MR(後輪駆動)
トランスミッション/7速DCT
乗車定員/2
車両本体価格/
A110 BLEU ALPINE EDITION 999万円
A110 GTS 1200万円
A110 R70 1850万円
■ 公式サイト

藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充
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