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2025.12.08

トヨタの“本気”が伝わる最新フラッグシップスポーツ「GR GT」「GR GT3」とはどんなクルマなのか?

2025年12月5日、トヨタはフラッグシップスポーツカー「GR GT」と、それをベースとしたGT3カテゴリー向けのレーシングカー「GR GT3」の開発中のプロトタイプ車両、およびレクサスブランドのBEVスポーツコンセプト「レクサス LFA Concept」のワールドプレミアを実施した。

BY :

文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

写真/トヨタ自動車 編集/森本 泉(Web LEON)

TOYOTA  トヨタ GR GT GR GT3 LEON
2025年10月末〜11月にかけて開催されたジャパンモビリティショー(JMS)でもっとも大きな話題をよんだのは「センチュリー」のクーペコンセプトだった。ショーに先駆けトヨタはセンチュリーをトヨタともレクサスとも違う、別格のTop of Top、One of Oneの独立したブランドにすると発表していた。JMSの会場であった東京ビッグサイトの南展示棟にはトヨタグループが集約されており、トヨタ、レクサス、センチュリー、ダイハツの4ブランドのブースが見られた。

少し事情に詳しい人なら、その場にトヨタグループのもうひとつのブランドが欠けていることに気づいただろう。トヨタのモータースポーツ部門であり、スポーツカーブランドであるGR(Gazoo Racing)の存在だ。

トヨタは現在、市販車をベースとしたレーシングカー(サーキット仕様)は、スープラベースの「GRスープラGT4」やレクサスRC Fベースの「RC F GT3」といった、いわば型落ちのモデルしかもっていない状況にある。またレースの世界でGRとレクサスという2つのブランドが混在しており、どう使い分けていくのかという課題もあった。
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左から「レクサス LFA Concept」、「GR GT」、「GR GT3」。
▲ 左から「レクサス LFA Concept」、「GR GT」、「GR GT3」。
実は以前からトヨタがスーパースポーツカーの開発に着手しているという噂はあった。2022年の東京オートサロンでは「GR GT3 Concept」を披露し、ラリーカーのGRヤリスと同様にモータースポーツ用の車両を市販化するといった経験から、GT3車両開発だけではなく量販車開発にも活かすという構想を発表していた。

それから約4年、ようやく発表にこぎつけたというわけだ。
「GR GT」プロトタイプのフロントスタイル。
▲ 「GR GT」プロトタイプのフロントスタイル。
 4ℓV8ツインターボで4本出しのエキゾーストを備える。
▲ 「GR GT」は新開発の4ℓV8ツインターボエンジンを搭載し、4本出しのエキゾーストを備える。
 レザーをふんだんに用いたラグジュアリィな雰囲気のインテリア。
▲ レザーをふんだんに用いたラグジュアリィな雰囲気のインテリア。
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フラッグシップスポーツカーとなる「GR GT」は、トヨタ初のオールアルミニウム骨格を採用。徹底した低重心化を進め、軽量・高剛性を実現。エクステリアは空力性能を追求したデザインとなっている。パワーユニットはドライサンプ方式を選択した新開発の4ℓV8ツインターボとモーターを組み合わせたハイブリッドとなる。

システム最高出力は650ps以上、システム最大トルクは850Nm以上(開発目標値)とされる。ドライブトレーンには炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のトルクチューブとトランスアクスルのレイアウトを採用。リヤのトランスアクスルには8速ATと1基のモーター、機械式LSDを搭載。駆動方式はFR(フロントエンジン・リヤドライブ)となる。
 オールアルミニウム骨格にカーボンの外板などを組み合わせる。
▲ オールアルミニウム骨格にカーボンの外板などを組み合わせる。
トランスミッションやモーターなどをリアに配置するランスアクスルレイアウトを採用。前後重量配分の最適化を図る狙いがある。
▲ トランスミッションやモーターなどをリアに配置するトランスアクスルレイアウトを採用。前後重量配分の最適化を図る狙いがある。
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「GR GT3」プロトタイプのフロントスタイル。
▲ 「GR GT3」プロトタイプのフロントスタイル。
空力性能を高めるためリアに大型のウイング、下部にはディフューザーを備える。そのためエキゾーストはサイド出しとなる。
▲ 空力性能を高めるためリアに大型のウイング、下部にはディフューザーを備える。そのためエキゾーストはサイド出しとなる。
 軽量化のためカーボンをふんだんに用いたインテリア。
▲ 軽量化のためカーボンをふんだんに用いたインテリア。
GR GTをベースとしたFIA GT3規格のレーシングカーが「GR GT3」。オールアルミニウム骨格を採用したシャシーやダブルウィッシュボーン形式のサスペンション、4ℓ V8ツインターボエンジンは、GR GT譲りのもの。プロドライバーのみならずジェントルマンドライバーも含めたすべてのカスタマーに向けて提供される。

FIA GT3規格とは世界でもっとも人気のあるカスタマーモータースポーツのカテゴリー。フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、ポルシェ、メルセデスAMG、BMWなどをはじめ世界中の自動車メーカーがこぞって市販モデルをベースにGT3規格のレーシングカーをつくっている。ちなみに市販車に関してGT3の商標はポルシェが所有しており、他ブランドは使用できないという。まさにポルシェ911GT3は、このカテゴリーにおいて代表的なモデルである。
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レクサスLFA Conceptのフロントスタイル。
▲ レクサスLFA Conceptのフロントスタイル。
左右のエアアウトレットは先代のLFAを彷彿とさせるデザイン。
▲ 左右のエアアウトレットは先代のLFAを彷彿とさせるデザイン。
飛行機の操縦桿を思わせるステアリングなど未来感のあるインテリア。
▲ 飛行機の操縦桿を思わせるステアリングなど未来感のあるインテリア。
そして「レクサスLFA Concept」だが、このモデルはJMSで見たという方もおられるかもしれない。実はあのタイミングでは車名は「レクサス・スポーツコンセプト」となっていた。初披露の場は北米のモントレー・カー・ウィーク2025だったが、その頃からLFAの後継車だろうという噂はあった。晴れてLFAのスピリットを継承するモデルとして車名に「LFA」がつくことが明らかにされたというわけだ。ここで気になるのはGRとの棲み分けをどうするのかということだが、このモデルは100%電気自動車のスポーツカーになるという。BEVのスポーツカーが未成熟である認識を刷新し、クルマづくりの未来に挑戦していくと宣言している。

思えば、LFAが生産を終えたのは2012年のこと。2022年にはホンダNSXが、2025年には日産GT−Rが生産を終え、2026年にはGRスープラの生産終了が決まっている。こんな時代にあってスポーツカーをつくり続けていくのがどれほど難しいことであるかを物語る事象だ。現状を鑑みれば日本のメーカーで3台もまとめてスポーツカーを開発できるのはトヨタ以外にない。
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WECの2025年シーズン最終戦で勝利したトヨタの「GR010 HYBRID」。
▲ WECの2025年シーズン最終戦で勝利したトヨタの「GR010 HYBRID」。
またモータースポーツの世界においても、WEC(FIA世界耐久選手権)にも、WRC(FIA世界ラリー選手権)にもワークス参戦しており、2026年からはF1(FIA Formula one 世界選手権)にも注力していく。先日ハースF1チームのタイトルパートナーに就任し、チーム名を「TGR(Toyota Gazoo Racing) Haas F1 Team」へと改称することが発表された。人材育成、車両開発、データ解析の3つを柱に協業を進め、ドライバーやエンジニア、メカニックの育成、そして持続可能なモータースポーツ活動を目指すとしている。世界的にみてもこれほどの規模でモータースポーツ活動を行っているメーカーはないだろう。

トヨタでは「GR GT」を、トヨタ2000GT、レクサスLFAに続くフラッグシップスポーツカーと位置づける。そして、伊勢神宮などで行われる約20年ごとに社殿を新しくすることで、建物の維持や技術の継承を行う式年遷宮になぞらえ「トヨタの式年遷宮」と呼ぶ。クルマ屋が残していくべき技能を、次の世代に受け継いでいくという思いが込められているという。「GR GT」の発売時期や価格は未発表だが、2027年頃の発売を目指して開発が進められている。
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「トヨタ2000GTスピードトライアル仕様車」、「レクサスLFA Nürburgring Package」と「GR GT」の3台が走るCMが公開されている。
▲ 1966年10月に連続10000マイルのスピード記録に挑戦し、当時の世界新記録を更新した「トヨタ2000GTスピードトライアル仕様車」、2011年にドイツ・ニュルブルクリンク北コースで時の市販車最速タイムを記録したレクサスLFAと同スペックの「レクサスLFA Nürburgring Package」と「GR GT」の3台が走るCMが公開されている。

● 藤野太一(自動車ジャーナリスト)

大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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