• TOP
  • CARS
  • 【試乗リポート】“ワーゲンバス”がBEVになって復活。フォルクスワーゲンID. Buzz

2025.08.20

【試乗リポート】“ワーゲンバス”がBEVになって復活。フォルクスワーゲンID. Buzz

1950年代にデビューし、“ワーゲンバス”の愛称で親しまれてきたフォルクスワーゲン・タイプ2を、100%電気自動車(BEV)として現代に復活させたのが“ID. Buzz”(アイディーバズ)。フォルクスワーゲンの新たなブランドアイコンは、現代の足としてどんな走りをするのか試してみた。

BY :

文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

画像/フォルクスワーゲン ジャパン 編集/森本 泉(Web LEON)

ミニやフィアット500に続き、ヘリテージモデルをBEVに

フォルクスワーゲンID. Buzz
街を走っているととにかく注目される。写真を撮る人もいる。それはスーパーカーに乗っていると感じる好奇の目というよりも、どちらかといえば好意の目だ。ミニやフィアット500、そしてフォルクワーゲン・ビートルなどに共通する愛らしいデザインが、人をなごませるのだろう。

そもそもタイプ2とは、ビートルをベースにつくられたバンだった。当時のビートルの正式名称がタイプ1だったことから、それに続く数字が与えられている。1967年に登場した第2世代のタイプ2は欧州でキャンパーとして人気を博す。またアメリカ西海岸ではヒッピームーブメントの波に乗り、フラワーカラーやピースマークがペイントされたタイプ2は若者たちのアイコン的存在となった。
PAGE 2
フォルクスワーゲンID. Buzz 右がオリジナルのタイプ2。
▲ 右がオリジナルのタイプ2。
いまBEVの商品企画を進めるにあたって、ヘリテージモデルのデザインを引用することは重要な鍵となる。先のミニやフィアット500もすでにBEVが登場しているし、バンであればバッテリーを搭載するスペースも確保しやすいわけでVWがこのタイプ2をもとにBEVをつくったのも必然といえる。

いま日本で買える唯一の100%電気自動車ミニバン

ID. Buzzは、VWグループの電動車用プラットフォーム「MEB (モジュラー エレクトリックドライブ
マトリクス) 」に基づいて設計されたモデルであり、日本市場においてはID.4に続くID.ファミリーの第2弾という位置づけのものだ。現時点(25年7月末)においては日本市場で購入できる唯一のミニバンタイプのBEVでもある。
PAGE 3
左がロングホイールベース仕様(LWB)で、右がノーマルホイールベース仕様(NWB)。LWB仕様はホイールベースを250mm延伸し7人乗りとなっている。
▲ 左がロングホイールベース仕様(LWB)で、右がノーマルホイールベース仕様(NWB)。LWB仕様はホイールベースを250mm延伸し7人乗りとなっている。
ボディタイプは、全長4715mm、ホイールベース2990mmの6人乗りノーマルホイールベース仕様(NWB)と、全長4965mm、ホイールベース3240mmの7人乗りロングホイールベース仕様(LWB)の2種類が用意されている。

NWB、LWBともに最高出力286PS、最大トルク560Nmを発揮するモーターをリアに搭載し、後輪を駆動する。駆動用リチウムイオンバッテリーの総電力量はNWBが84kWh、LWBが91kWhで一充電走行距離(WLTCモード)はNWBが524km、LWBが554km。急速充電では150kWまで対応する。
PAGE 4
両側電動スライドドアで、現代風にアレンジされたクラシックなスライディング・ウィンドウが備わる。
▲ 両側電動スライドドアで、現代風にアレンジされたクラシックなスライディング・ウィンドウが備わる。
エクステリアは、ショートオーバーハングのプロポーションで、フロントフェイスには特大のVWロゴ、V字型のフロントパネルを配し、ツートンカラーに色分けされている。丸型のヘッドライトは踏襲されていないが、それらの要素だけでタイプ2をオマージュしたものだとわかる。
開放的で見晴らしのいいインテリア。Aピラーの三角窓も大きく取られており、死角をなくす工夫がされている。
▲ 開放的で見晴らしのいいインテリア。Aピラーの三角窓も大きく取られており、死角をなくす工夫がされている。
PAGE 5
インテリアは水平基調のデザインで、ダッシュボード中央に12.9インチサイズの大型タッチスクリーンを配置。ステアリングコラム右側にID. 4と同様のレバー式のシフトセレクターが備わる。運転席からの景色は死角がすくなく、とても見晴らしがいいもの。今回の試乗車は全長5mに迫るLWBだったが、この視界の良さもあって運転はしやすい。
LWBの2列目シートはベンチシートタイプで、2分割でシートバックやスライドの調整が可能。NWBでは、2列目センターをウォークスルーとした6人乗りとなる。
▲ LWBの2列目シートはベンチシートタイプで、2分割でシートバックやスライドの調整が可能。NWBでは、2列目センターをウォークスルーとした6人乗りとなる。
ライトグレーのシートもキャビン内の雰囲気を明るくするのに一役かっている。ポップな雰囲気でありながら、かっちりとしたつくりのシートはさすがドイツ車といったところ。運転席と助手席のあいだには脱着可能なコンソールボックスを備えるなど、収納にも工夫がなされている。
PAGE 6
スライドドアとテールゲートには、イージーオープン&クローズ機能が搭載されており、両手がふさがった状態でもドアの開閉が可能となっている。LWBは2-3-2のレイアウトながら、BEVゆえのフラットなフロアで室内も広々としている。

2列目はベンチシートになっており、3列目シートは脱着も可能とアレンジも多彩。2列目と3列目シートは背面をフラットに倒すことが可能で、昨今増えているという車中泊にも対応できそうだ。
2列目と3列目を倒してフラットにすると車中泊もできそうな空間ができあがる。
▲ 2列目と3列目を倒してフラットにすると車中泊もできそうな空間ができあがる。
PAGE 7
3列目シートは取り外しも可能で、大型荷物も積載可能な2469リットルもの広大な空間に。
▲ 3列目シートは取り外しも可能で、大型荷物も積載可能な2469リットルもの広大な空間に。

タイプ2と共通の後輪駆動でキビキビ走る

2720kgという車両重量ゆえスタート時には少し重さを感じたが、動き出してしまえば思いのほか軽快に走る。商用車用ではなく、乗用車用のプラットフォームを使っていることも功を奏しているようで、市街地走行時にもゴツゴツとした硬さを感じることもなかった。

ユニークだったのは、ワインディングロードでのコーナーからの立ち上がりの際に、リアタイヤの蹴り出しをしっかりと感じられること。これも後輪駆動ゆえの特徴で、RR(リアエンジン・リアドライブ)だったオリジナルのタイプ2と共通するものだ。
PAGE 8
ミニバンとしては珍しい後輪駆動は、オリジナルのタイプ2とも共通する特徴。
▲ ミニバンとしては珍しい後輪駆動は、オリジナルのタイプ2とも共通する特徴。
片道約200km、往復約400kmの距離を、120km/h区間のある新東名高速をメインに走行して、往路の電費は4.8km/KWh、帰路は頑張って省電力走行した区間で5.4km/KWhという数字が出た。一充電あたりの実走行距離はおおよそ410〜430kmくらいといったところ。Cd値は0.285(欧州仕様)というのでミニバンとしては頑張っているけれど、やはり電費的には少し厳しいようだ。

ただし、いま高速のSA/PAでもCHAdeMOの150kW充電器が増えていることもあり、行き帰りのトイレ休憩がてら30分も充電すればあっという間に満たされるので、まったく不安なく走行できた。このプラットフォームをもとに次はビートルの復活にも期待したいものだ。
PAGE 9
車両価格はNWBの「Pro」が888万9000円。LWBの「Pro Long Wheelbase」が997万900円。
▲ 車両価格はNWBの「Pro」が888万9000円。LWBの「Pro Long Wheelbase」が997万900円。
藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

こちらの記事もオススメです

PAGE 10

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        【試乗リポート】“ワーゲンバス”がBEVになって復活。フォルクスワーゲンID. Buzz | 自動車 | LEON レオン オフィシャルWebサイト