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2025.07.23

マクラーレンの特別な試乗イベントに参加。フェラーリともランボルギーニとも違う、その魅力とは?

マクラーレンは7月初頭、プライベートドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」にて特別な試乗イベント「THE LUXURYSTAY」を実施。フェラーリともランボルギーニとも違うマクラーレンのこだわり、そして試乗をとおして見えてきたその真価とはいかに。

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文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

文/藤野太一 写真/McLaren Automotive Asia / THE MAGARIGAWA CLUB

F1チームが、ロードカーをつくってみたら……

マクラーレン WebLEON 藤野太一 MAGARIGAWA
「マクラーレン」と聞いてどんなクルマをイメージするだろうか。もとは自動車メーカーではなく、創業者のブルース・マクラーレンの名を掲げたレーシングチームを出自とする。

ブルースは10代の頃からドライバーとしての才能を開花させ、若干22歳でF1グランプリ優勝という偉業を成し遂げる。これは当時の史上最年少記録だった。また、エンジニアとしての才能ももちあわせていたブルースは1963年にレーシングチームを創設。世界三大レースといわれるF 1 モナコGP、インディ500、ル・マン24時間レースのすべてで優勝を果たし、トリプルクラウン(三冠王)の称号が与えられている。以来マクラーレンは、強豪レーシングチームとして世界に名を馳せ、今シーズンのF1選手権においてもドライバーズ、コンストラクターズランキングともにトップをひた走っている。
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▲ 1992年にデビューした初のロードカー「マクラーレンF1」。レーシングカーと同様にバランスを重視し、3人乗り仕様で中央の座席にステアリングを配置している。
マクラーレンがレーシングカーだけでなく、公道走行可能なロードカーを手掛けるようになったのは1980年代後半のこと。1992年に初のロードカー「マクラーレンF1」を発表。総生産台数はわずか106台といわれており、いまなお世界中のマニア垂涎の的である。その後、2003年にメルセデス・ベンツとのコラボレーションによる「メルセデス・ベンツSLRマクラーレン」を発表する。
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▲ 2011年にデビューしたマクラーレン・オートモーティブ社として初のロードカー「MP4-12C」。
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2010年に、独立した自動車メーカーとして現在のマクラーレン・オートモーティブを設立する。2011年に新生マクラーレン初のロードカー「MP4-12C」を発表。このMP4とは36年にわたってマクラーレンの歴代F1マシンに与えられてきた由緒ある名称。ちなみに2017年以降のF1マシンはマクラーレンを略した「MCL」の名が使われている。

そして現在のマクラーレンロードカーの主たるラインアップは、フラッグシップスーパーカーの「750S」、ハイブリッドスーパーカーの「アルトゥーラ」、グランツーリスモスーパーカーの「GTS」の3モデルがある。

フェラーリやランボルギーニといったイタリアンスーパーカーブランドに対して、このイギリスブランドは、モデル毎のデザインの差別化が少なくいさかか地味に見えるかもしれない。しかし、以前インタビューしたマクラーレンのデザイナーはこんな話をしていた。
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▲ もっとも軽量でパワフルな750S。車両重量は1389kg。最高出力750PS、最大トルク800Nm。最高速度は332km/h。車両価格は4170万円。
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「新しいチャレンジをしなければいけないし大胆でなければいけないが、美しい車両をつくることは重要なミッションであり、ごてごてと飾り付けるようことはしません。機能を “シュリンクラップ(shrink wrap)”するようなイメージです」

“シュリンクラップ”とは一般的には熱収縮によって真空パックする方法だが、車体の中にしっかりとテクニカルなエッセンスを詰めこんだうえで、寸分も無駄のないカタチをつくるという意味でこういった言葉を使っているという。そして、マクラーレンのすべてのモデルに共通するエッセンスとしては、“シャークノーズ”(サメの鼻先)と答えてくれた。これは単にサメをモチーフにしたデザインということではなく、ノーズから上下にきれいに分離していく気流によって効率的な空力性能を追求したものだ。

すべてのロードカーにF1由来のカーボンモノコックを採用

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▲ アルトゥーラのカーボンモノコック。フロントのアルミニウムは衝突時の衝撃吸収構造体、リアはサブフレームとなっている。
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そしてこのスタイリングを実現するのに重要な要素がカーボンモノコック。マクラーレンはそもそもF1マシンに初めてカーボンモノコックを導入したコンストラクターであり、先のロードカーの3モデルすべてにもそれを採用している。メリットは圧倒的に軽く、高剛性であること、デメリットは量産が難しく高コストであること。マクラーレンはそれを厭わずすべてのロードカーにこれを採用している唯一の量産メーカーである。
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▲ 時速130kmまでは電動走行も可能なハイブリッドスーパーカー「アルトゥーラスパイダー」最高出力700PS、最大トルク720Nm。最高速度は330km/h。ハイブリッドながらカーボンモノコックの採用により車両重量は1560kgに抑えられている。車両価格は3650万円。
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しかも現代のハイパフォーマンスカーは4WD全盛である。近年パワーが増加するにつれ一般のドライバーが2WDでマシンをコントロールすることが難しくなってきた。そして500PSを超えたあたりからメーカー各社は安全のためにこぞって4WDを採用している。そんな現状においてマクラーレンは750PSの750Sも700PSのアルトゥーラも、635PSのGTSもすべて後輪駆動の2WDで成立させている。これをバランスさせるのはいかに難しいことか。
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▲ グランドツアラーの「GTS」。グランドツアラーとしての快適性とスーパーカーとしての性能を両立。車両重量は1520kg。最高出力635PS、最大トルク630Nm。最高速度は326km/h。車両価格は2970万円。
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マガリガワの難コースもマクラーレンなら攻略できる

そうして近年ようやく、走る、曲がる、止まるという自動車の基本性能に対して妥協のないリアルな速さと走りの気持ちよさを追い求めるマクラーレンの姿勢が、クルマをよく知る通なドライバーから注目されるようになってきた。
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▲ 2023年にオープンしたアジア初の会員制のドライビングクラブ。コースデザインはF1サーキットの設計を手掛ける「Tilke Engineers &
Architects」によるもの。全長約3.5kmでまるで峠道のような上り20%、下り16%勾配、22のコーナー、800mのストレートを持つ。
そんなおりマクラーレンは特別な試乗イベント、「THE LUXURY STAY」を実施した。これは、全国のショールームにてマクラーレンの最新モデルに試乗すると、当イベントへ応募する権利が得られ、抽選の結果およそ10名の参加者が1泊2日のラグジュアリーな走行体験会に招待されるというものだった。
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会場は千葉県南房総市にある世界屈指のプライベートドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」。本来は会員制のため一般の人は立ち入ることができない特別な場所だ。
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▲ クラブハウス内にある冷暖房完備の屋内ピットレーン。ここはサーキットではなく、ドライビングクラブでありドライバーだけでなく、家族や友人も快適な時間を過ごすことができる。
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▲ 全9戸のヴィラスタイルの宿泊棟である「OWNER’S PADDOCK」。豊かな自然に囲まれ、眼下にはコースを見下ろす。今回は特別に宿泊することが可能だった。
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専属インストラクターによるコーチング付きのコース専有時間が用意され、1日目は座学とインストラクターの助手席での同乗走行にてコースを体験。その夜は全9戸あるヴィラスタイルの「OWNER'S PADDOCK」に宿泊し、2日目は自らステアリングを握って750Sとアルトゥーラをドライブするという格別の非日常体験を味わうことができた。

750Sとアルトゥーラ、そしてGTSに共通することだが、マクラーレンは走行モードを、ハンドリングとパワートレインとに分けて個別に設定できる。市街地では両方とも「コンフォート」に設定しておけば、“スーパーカー界のシトロエン”とも言える、ふだんの足としても使えるほど乗り心地もいい。これは軽くて硬いカーボンモノコックゆえに実現できることだが、マクラーレンロードカーの登場がのちのスーパーカーの乗り味に影響を与えたことは想像に難くない。
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▲ 富士山と東京湾を望むダイニングにて、KANAYA RESORTSが手掛ける地産食材を活かしたディナーと朝食を用意。
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走行モードはさらに「スポーツ」、「トラック」とあるが、このステップを踏むほどにレスポンスは鋭く、サウンドも含めて刺激が強くなる。公道ではまったくもって使い切れないほどの圧倒的なパフォーマンスを発揮しながらも、盤石のスタビリティを誇る。

「THE MAGARIGAWA CLUB」のような前半はストレートメインで速度が速く、後半はコーナーが連続するワインディング路のようで高低差のある難コースも、恐怖心を感じることなくクリアできる。そのあたりプロのインストラクターに尋ねてみると、改造なしのツルシの状態でマクラーレンほど速いクルマはそうない、とこっそり教えてくれた。
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▲ 750Sとアルトゥーラの2台を自らドライブできる貴重な機会だった。
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某スーパーカーを所有するというある参加者が走行後に「やっぱりマクラーレンはスゴい」と興奮気味に話していたのが印象的だった。マクラーレンの走行性能の真価は、こうした「THE MAGARIGAWA CLUB」のようなハードなコースでこそよく分かる。マクラーレンでは今後もこういったキャンペーンを実施予定というので、次回はぜひ。
藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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