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2025.08.06

【試乗リポート】祝アルファロメオ115周年。待望のエントリーモデル“ジュニア”が、SUVとして復活

アルファロメオ創業115周年のタイミングで新たなエントリーモデル「ジュニア」が日本に上陸。アルファ初の電気自動車とマイルドハイブリッドという2種類のパワートレインをラインアップ。今回はハイブリッドの乗り味を検証する。

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文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)

1960年代のエントリーモデル「GT 1300ジュニア」に由来

アルファロメオの新型コンパクトSUV「Alfa Romeo Junior(アルファ ロメオ ジュニア)」
2025年6月24日、アルファロメオの新型コンパクトSUV「Alfa Romeo Junior(アルファ ロメオ ジュニア)」のプレス発表会が実施された。実は115年前の1910年6月24日はアルファロメオの創業日であり、115周年の記念すべきタイミングでのローンチとなった。

車名のジュニアにピーンときた人は相当なアルファロメオ通。1966年に登場した「GT 1300ジュニア」に由来するもので、いまもクラシックカーとしても人気のジュリアクーペのボディにコンパクトなエンジンを搭載した、当時の若者に向けた廉価版モデルだった。
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近年のアルファロメオはモデル再編のなかで、「ミト」や「ジュリエッタ」といったコンパクトモデルの生産が終了。現行ラインアップは、FR(後輪駆動)プラットフォームをベースとしたセダンの「ジュリア」とSUVの「ステルヴォオ」。そしてアルファロメオ初のPHEV(プラグインハイブリッド)であるSUVの「トナーレ」という3モデルだった。
「ジュニア」のボディサイズは全長4195×全幅1780×全高1585mmと日本の道でも使いやすいもの。プラットフォームはステランティスグループの「CMP2」を採用する。
▲ 「ジュニア」のボディサイズは全長4195×全幅1780×全高1585mmと日本の道でも使いやすいもの。プラットフォームはステランティスグループの「CMP2」を採用する。
そこに待望のエントリーモデルとして用意されたのが、コンパクトSUVの「ジュニア」だ。ミトやジュリエッタのようにハッチバックではなく、SUVとして生まれ変わった。いまや欧米の乗用車販売におけるSUVのシェアは40%を超えるというからエントリーモデルであってもSUV化は必然の流れといえるだろう。
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ちなみにここで改めて確認しておくと、現在のアルファロメオはステランティスグループの傘下にある。世界で15のブランド、日本市場では商業車を含む8ブランドを展開する多国籍自動車メーカーだ。ジープをはじめとするアメリカ、プジョー&シトロエンをはじめとするフランス、そしてフィアット、アルファロメオ、マセラティといったイタリア、とさまざまなルーツをもっている。

その主たる狙いは電動化が進むなかでコストのかかるプラットフォームやパワートレインの共用化を図ること。ジュニアは最新のコンパクトカー用プラットフォーム「CMP2」とEV用の「eCMP2」を採用する。これはフィアット600やプジョー2008、シトロエンC4、ジープアベンジャーなどとも共通のものだ。

アルファロメオらしく、斬新なデザイン手法を採用

プラットフォームやパワートレインを共通化したといってもブランドのすべての個性が失われるわけではない。では、アルファロメオらしさがもっとも顕著にあらわれているのは、やはりデザイン。トリノを拠点とするアルファロメオ・チェントロスティーレ(デザインセンター)の手によるエクステリアデザインには、随所に伝統的なエレメントが取り入れられている。
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電気自動車仕様の盾は、ミラノの紋章をモチーフにしたアルファロメオのロゴを拡大し、蛇やなど大胆にトリミングしたデザインを採用。
▲ 電気自動車仕様の盾は、ミラノの紋章をモチーフにしたアルファロメオのロゴを拡大し、十字架と蛇を大胆にトリミングしたデザインを採用。
アルファロメオのデザインにおいてもっとも重要な意味をもつのが、“スクデット”と呼ばれるグリルの中心にある盾だろう。このジュニアには2種類の盾が用意されている。
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ジュニアにはアルファロメオ史上初の100%電気自動車がラインアップされており、EVと限定車のスペチアーレには「プログレッソ」と呼ばれる、ミラノの紋章をモチーフにしたアルファロメオの伝統的なロゴを拡大したデザインを採用する。これは近年ポロ ラルフ ローレンやラコステといったアパレルブランドが伝統的なロゴを拡大してデザインする手法を用いているが、それを思わせる自動車の世界では新しいアプローチだ。
ハイブリッド仕様に用いられる「レジェンダ」と呼ばれる盾のデザイン。戦前の名車、6Cや8Cといったモデルをオマージュしたもの。
▲ ハイブリッド仕様に用いられる「レジェンダ」と呼ばれる盾のデザイン。戦前の名車、6Cや8Cといったモデルをオマージュしたもの。
一方で今回の試乗車だったハイブリッドモデルには「レジェンダ」と呼ばれる往年の筆記体のロゴを用いたデザインとなっている。これは戦前の6Cや8Cといったモデルをオマージュしたもので、伝統的なエレメントを巧みに取り入れるアルファロメオらしいデザイン表現だ。
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リアエンドを断ち切った“コーダトロンカ”を採用。SZやTZ、スパイダーなどから受け継がれてきたアルファロメオの歴史における重要なデザインエレメント。
▲ リアエンドを断ち切った“コーダトロンカ”を採用。SZやTZ、スパイダーなどから受け継がれてきたアルファロメオの歴史における重要なデザインエレメント。
そして1960年代にアルファロメオが先鞭をつけたデザイン手法、“コーダトロンカ”(空力改善のためにリアエンドを断ち切ったデザイン)を採用。これはアルファロメオのクーペモデルやスパイダーなどでもお馴染みのデザインだ。
2つのメーターにそれぞれナセル(ひさし)をもつのもアルファロメオの伝統的なデザイン。エアコンの拭き出し口には四葉のクローバーがあしらわれている。
▲ 2つのメーターにそれぞれナセル(ひさし)をもつのもアルファロメオの伝統的なデザイン。エアコンの拭き出し口には四葉のクローバーがあしらわれている。
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インテリアも、伝統に則りドライバーを中心のデザインがされている。できるだけ視線移動を減らすためレーシングカーのように奥まった場所にメーター類を配置する伝統的なテレスコープデザインを採用。インパネ中央には10.25インチのタッチスクリーンを採用する。
4つ葉のクローバーをモチーフにしたエアコンの吹き出し口など、随所にアルファロメオらしさがみてとれる。またアダプティブクルーズコントロール(STOP&GO機能付)やブラインドスポットモニター、レーンキーピングアシスト、360°パーキングセンサー、180°リアカメラなど、最新のADASは全モデルに標準装備だ。
コンパクトボディながら後席はヘッドルーム、ニールームともに大人も余裕のある十分なスペースを確保する。シートバックは60:40の分割可倒式となっている。
▲ コンパクトボディながら後席はヘッドルーム、ニールームともに大人も余裕のある十分なスペースを確保する。シートバックは60:40の分割可倒式となっている。
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アルファロメオ入門としてだけでなく、イタリア車入門としても

パワートレインはIbrida(ハイブリッド)とElettrica(電気自動車)の2種類でいずれもFWD。今回の試乗車はハイブリッドで1.2ℓ直列3気筒DOHCターボチャージャーエンジンと16kWのEモーターを内蔵した新開発の6速デュアルクラッチトランスミッション(eDCT)、48バッテリーによって構成されているマイルドハイブリッド仕様。高効率なミラーサイクルエンジンを採用し、システム最高出力は145PSを発揮する。その特長はマイルドハイブリッドといいながらも低速域ではモーターのみでの走行が可能な点だ。モーター走行できる時間はわずかだが、発進時をサポートしてくれるだけでも十分に価値がある。

1.2ℓ直列3気筒ターボエンジンは、もとはプジョーシトロエンなどが開発し、何度も「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した定評のある「PureTech」エンジンであり、わずか1750回転で最大トルクの230Nmを発揮し、その排気量からはとても想像できないほどパワフルに走る。さらにハイブリッド化によるモーターのアシストを得たことで、SUV化して少し大きくなったジュニアのボディをしっかりとドライバーのアクセル操作に呼応するかのように加速する。
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ドライブモードは、「DYNAMIC」「NATURAL」「ADVANCED EFFICIENCY」の3種類がある。連動してメーターのデザインが変更される。エクステリアデザイナーによると、ジュニアの外板パネルには直線や平面が存在しないという。彫刻的なデザインによって光と影を巧みに操り躍動感を表現している。
▲ ドライブモードは、「DYNAMIC」「NATURAL」「ADVANCED EFFICIENCY」の3種類がある。連動してメーターのデザインが変更される。エクステリアデザイナーによると、ジュニアの外板パネルには直線や平面が存在しないという。彫刻的なデザインによって光と影を巧みに操り躍動感を表現している。
スポーツカーメーカーらしく、サスペンションはスポーティなセッティングが施されており、ステアリングの効きも正確なもので、いい意味でSUVっぽさはない。これならばミトやジュリエッタから乗り換えたとしても違和感はないはずだ。

かつてイタリアンブランドといえば、「デザインはいいんだけどね〜」とディティールのつくりの甘さや耐久性を不安視する向きもあったが、ステランティスという多国籍グループ傘下に収まった恩恵は大きく、いまやそうした不安は払拭された。アルファロメオ入門としてはもちろん、イタリア車入門にもいい。アルファロメオの創業115周年の記念すべきタイミングでローンチされた新たなエントリーモデルの誕生を祝いたい。
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車両価格はハイブリッド仕様のベースモデル 「Junior Ibrida Core(ジュニア イブリダ コア)」が420万円、「Junior lbrida Premium」が468万円。そして発売を記念した200台の限定車 「Junior Ibrida Speciale(ジュニア イブリダ スペチアーレ)」が533万円。一方電気自動車の「Junior Elettrica Premium(ジュニア エレットリカ プレミアム)」が556万円。CEV補助金は69万円の交付対象となっている。
▲ 車両価格はハイブリッド仕様のベースモデル 「Junior Ibrida Core(ジュニア イブリダ コア)」が420万円、「Junior lbrida Premium」が468万円。そして発売を記念した200台の限定車 「Junior Ibrida Speciale(ジュニア イブリダ スペチアーレ)」が533万円。一方電気自動車の「Junior Elettrica Premium(ジュニア エレットリカ プレミアム)」が556万円。CEV補助金は69万円の交付対象となっている。
藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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