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2025.05.28

【試乗リポート】ドイツプレミアムに迫れるか!? マツダの3列シートSUV、CX−80の実力やいかに

マツダの新世代ラージ商品群の国内第2弾であり、フラッグシップモデルである3列シートSUVのCX-80に試乗。縦置き直6エンジン+FRプラットフォームという優れた基本骨格をもとにドイツプレミアムブランドを目指したその走りの実力やいかに。

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文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
マツダ CX-60
近年マツダはスモールとラージ、2つの新世代商品群の開発を進めてきた。そのラージの国内第1弾が2022年に発表されたSUVのCX-60。第2弾として2024年に登場したのがCX-60をベースとした3列シート版SUVのCX-80だ。

ラージ商品群の最大の特徴は、縦置きエンジン+後輪駆動プラットフォームを採用すること。FF全盛の時代にわざわざコストのかさむFR用プラットフォームを新規開発して、直6エンジンを搭載するというのだから相当な気合の入れようがうかがえる。仮想敵はドイツのプレミアムブランドというわけだ。
オーバーハングをきりつめ長くのびたフロント部分に縦置きの直6エンジンがおさまる。美しいプロポーションが特徴。
▲ オーバーハングをきりつめ長くのびたフロント部分に縦置きの直6エンジンがおさまる。美しいプロポーションが特徴。
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ここで少しだけ補足しておくと、FRにすることのメリットは前輪を操舵、後輪を駆動と前後で仕事を分担できる点にある。前後重量配分のバランスがよくなり、またクルマは加速すると後ろに荷重がかかるため、後輪駆動のほうがよりトラクションを活かすことができる。前輪は舵取りに集中できるため運転の楽しいハンドリングマシンができあがる。

そして直6エンジンは振動が少ないという特性から“完全バランス”とも評される。BMWは昔からこうしたFR+直6エンジンを組み合わせたクルマづくりを得意としており、そのスムーズな直6エンジンは、マニアのあいだでは絹のようななめらかさになぞらえ“シルキーシックス”と呼ばれたりする。

閑話休題。現在、マツダのラージ商品群は、CX-60、CX-70、CX-80、CX-90の4車種が展開されている。CX-70とCX-90は北米をはじめ海外向けで国内販売はされていない。個人的にはCX-70は日本でも売れそうだと思うが、それはさておき。
海外仕様の2列シートのミッドサイズSUV、CX-70。CX-60よりも大きくワイドなボディで迫力のあるスタイリングに。
▲ 海外仕様の2列シートのミッドサイズSUV、CX-70。CX-60よりも大きくワイドなボディで迫力のあるスタイリングに。
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3mを超えるホイールベースで、ゆとりの3列シートを実現

CX-80のパワートレインは、3.3ℓ直列6気筒ディーゼルターボの「SKYACTIV D 3.3」、それに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた「e-SKYACTIV D 3.3」、2.5ℓ直4ガソリンにモーターとバッテリーを組み合わせた「e-SKYACTIV PHEV」という3種類が用意される。「SKYACTIV D 3.3」のみ2WDと4WDの設定があり、それ以外の電動化モデルは4WDのみとなっている。

トランスミッションは全グレードに新開発の8速ATを組み合わせる。トルクコンバーターレスとし、かわりに湿式多板クラッチを採用することで、ダイレクトでリズミカルな変速を実現するものだ。

今回の試乗車は、マイルドハイブリッド仕様の「XDハイブリッド」だった。ボディサイズは全長4990mm、全幅1890mm、全高1710mmと日本車としては大きな部類に入る。ホイールベースも3120mmと3m超で、これによって3列目まで大人が使えるシートを実現している。
フロントグリル内に配された3本のクロームラインがCX-80の証。3列シートを意味するものでCX-60とのわかりやすい識別点。
▲ フロントグリル内に配された3本のクロームラインがCX-80の証。3列シートを意味するものでCX-60とのわかりやすい識別点。
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エクステリアは、マツダのデザイン哲学である魂動デザインの進化版。真横から見れば、後輪駆動プラットフォームの利点を活かした、ロングノーズで伸びやかなスタイルになっている。CX-60とCX-80はあえて大きなデザインの差別化が図られておらず、フロントグリル内にある3本のラインが3列シートを意味するCX-80の証。なんともマツダらしい控えめな主張である。
グレードによるがタンやピュアホワイト、ブラックのナッパレザーを使用するなどクリーンで上質なインテリア。
▲ グレードによるがタンやピュアホワイト、ブラックのナッパレザーを使用するなどクリーンで上質なインテリア。
インテリアは、ホワイトやタンなど明るいレザー内装を多く設定するなど最新のマツダ車に共通する上質な空間となっている。メーターは12.3インチのデジタルメーターで、センターディスプレイも12.3インチのもの。すべてをデジタルにするのではなく安全や使い勝手を重視し、シフトまわりにインフォテイメントシステムのコントロールダイヤルやセンターパネルにエアコンの操作パネルを配置するなど物理スイッチ類を多く残している。
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“人馬一体”を追求するマツダのこだわり満載

また安全運転をより促進する自動ドライビングポジションガイドを搭載。これは身長などを入力し、カメラで目の位置を測定、ドライバーの体格を認識し、シートやステアリングなど適切なドライビングポジションに自動で調整してくれるというもの。また自然に足をのばした先に操作しやすいオルガン式アクセルペダルやブレーキペダルを配置するなどペダルレイアウトにもこだわっており、人馬一体を追求していることが伝わってくる。
センターコンソール付きの広々とした2列目シート。6人乗り仕様で選択が可能。
▲ センターコンソール付きの広々とした2列目シート。6人乗り仕様で選択が可能。
2列目シートは、6人乗り仕様か7人乗り仕様かにより形状が異なる。前者ではアームレスト付きコンソールを備えた豪華なキャプテンシートも選択可能。後者の場合は6:4分割のベンチシートとなる。
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画像の6人乗り仕様のほか、2列目シートがベンチシートになった7人乗り仕様も選ぶことができる。
▲ 画像の6人乗り仕様のほか、2列目シートがベンチシートになった7人乗り仕様も選ぶことができる。
3.3ℓ直6ディーゼルターボは、最高出力254PS、最大トルク550Nmを発揮。これに48Vのマイルドハイブリッドシステムを加え、モーターは最高出力16.3PS/最大トルク153Nmのパワーでアシストする。その恩恵もあって2トンを超えるボディをなんの苦もなく発進させる。そしてディーゼルならではの低回転域からの分厚いトルクを使って加速していく。

新開発の8速ATはシフトショックもなくスムーズに変速していく。少し気になったのが音楽をかけていれば聞こえないが、ときおりトランスミッションの変速音のようなものが聞こえてくる点。また乗り心地はわりとかためなセッティングで荒れた路面では少し目線の揺れを感じることも。一方で大きな体躯ながらもスポーティなドライビングを得意としており、安定してコーナーを曲がることができる。
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マツダ渾身のラージ商品群のひとつであるCX−80は、エクステリアやインテリアなどの見た目質感に関してはドイツのプレミアムブランドにも比肩するものだ。ただし、直6エンジンやハンドリング性能の洗練度合いでいえば、まだ改良の余地がある。しかし、そこはストイックなマツダゆえ、今後年々改良を加えて進化していくはずだ。
マツダは、熟練職人が手塗りしたような高品質な塗装を量産ラインで実現する独自の技術「匠塗」を導入している。全8色でこれは新色の「メルティングカッパーメタリック」。
▲ マツダは、熟練職人が手塗りしたような高品質な塗装を量産ラインで実現する独自の技術「匠塗」を導入している。全8色でこれは新色の「メルティングカッパーメタリック」。
2022年にはじまったマツダのラージ商品群はあらゆるものの値段があがっているなかで、価格設定も良心的なもの。実際、ラージ商品群は北米でも好調で、2024年度の売上高は過去最高を記録。2024年の年間販売台数も米国、メキシコで過去最高を更新していた。
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しかし、ここへきてのトランプ関税である。いまラージ商品群は北米で生産しておらず、国内で生産したものを輸出している状況にある。先日行われた決算発表で、マツダの毛籠社長が2025年度の業績見通しを“未定”と発表したのもそれが理由だ。

一方で国内販売はいまいちふるっていない。2024年暦年の販売台数は14万1946台と前年比で20.2%ものマイナスである。こんなときこそ内需喚起が必要だろう。考えてもみれば、CX-80の価格は、もっとも廉価な2WDのディーゼルモデルなら394万3500円からとなんと400万円ぎりである。

もっとも高価なPHEVの最上級グレードでも712万2500円であり、同じ車格のドイツプレミアムに比べれば、はっきり言って大バーゲンプライスである。マツダファンはもとより、食わず嫌いの人も一考の余地はあると思うのだ。
マツダ CX−80
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藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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