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2024.01.28

3年乗った電気自動車、プジョーe208。お世辞抜きの本当の評価は?

自家用車はコンパクト系が好きで、それを短期間で次々乗り換えてきたという筆者。新車で買っても車検を取り直すことはほぼなかったのに、なぜかプジョーe208は4年目に突入! 何が良かったのか? 不満はないのか? 本音で報告します。

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第225回

プジョー e208、3年間の報告

イラスト 溝呂木 陽 プジョー e208GT
わが家に、プジョー e208GTが納車されたのは2021年1月。つまり、3年経ったということ。で、車検を取り直して4年目に入った。

ふつうは、珍しい話でもないし、特にピックアップするような話でもない。でも、僕にとっては、かなり珍しい話になる。

仕事柄なのか、性格的なものなのか、、自分でもよくわからないが、クルマを短期間で次々乗り換える傾向が僕は強い。いや、「傾向が強い」といより、「性癖が強い」といった方がより合っているかもしれない。

19歳で初めて自分のクルマを持って以来、現在に至るまで、「車検を取り直して」乗り続けたクルマはたった2台しかない。

今のプジョー e208GTと、2代目のルノー ルーテシア(1999年モデル)の2台だけだ。

当時は、2世帯住宅の1階に僕、2階に息子が住んでいて、僕がスポーツ系、息子がSUV系、そして、家内と嫁が気軽に便利に使えるコンパクト系を共有、、そんな形だった。

一例を挙げると、僕がBMW Z4、息子がボルボ XC90、家族で共有するのがルーテシアといった組み合わせだが、これは良かった。
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わが家は「自分のクルマに拘る」といったことはまるでなく、みんながTPOに合わせてクルマを選び、好きに乗っていた。そんな中での一番人気はルーテシア。2人の孫もまたルーテシアが大好きだった。

で、結局、ルーテシアは7年間わが家に住み続けたが、これは最長不倒距離。長くても3年、多くは1~2年で買い替えを繰り返してきたわが家にとっては奇跡的な出来事だった。

そして今、第2の奇跡となっているのがプジョー e208。3年間乗ったのだがぜんぜん飽きない。日々、愛着の度合いは強くなってさえいる。その姿を見る度に、ステアリングを握る度に、「いいなぁ!!」と思うのだ。

そんなことで、プジョー e208は車検を取り、ルームクリーニングをし、ボディコーティングをして、わが家に戻ってきた。

ヤレ的なものもまったく出ていないし、ピカピカになって戻ってきたe208は、まるで新車のようだった。

僕は、1964年からフル回転してきた仕事を8年前から計画的に減らし、5年前には好きな仕事だけを受けるという状態にした。

イベントや試乗会にしても「近場での好きなものだけ」に絞るわがままを許してもらった。多い時は年に100日を超えていた海外での仕事もキッパリ辞めた。

なので、5年前辺りから、仕事で束縛される時間はグンと減り、家内とともに、自由で好きな時間を過ごせる時間がグンと増えた。

行動範囲も小さくなり、遠いところに出かけるにしても、わが家から85kmほどの、大好きな箱根のホテルがせいぜい。
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そうした状況だから、クルマも1台に減らした。仕事でフル回転していた時の最後のクルマは、アウディ Q3クアトロ スポーツライン、ミニクーパーS カブリオレ ハイゲート、ミニクーパー ベイズウォーターの3台。

僕がハイゲート、家内がベイズウォーター、遠出や家内と一緒の時はアウディ Q3、、といった使い方をしていたが、大満足のコンビネーションだった。

1台に減らした最初のクルマは、VWゴルフ GTI 。次いでGTI パフォーマンスへと乗り継いだが、楽しかったし、満足度も高かった。

ちなみに、僕も家内も昔からコンパクト系が好き。ゆえに、Dセグメント以上のクルマは、ほんの数台しか所有したことがない。

で、1台所有にしてからの3台目のクルマがプジョー e208なのだが、乗り換えることに躊躇はなかった。

昔からEVには興味があった。立ち上がりの太いトルク、文字通り間髪入れないレスポンスによる加速の瞬発力には強く惹かれていた。

加えて、フランス生まれならではの粋を纏ったルックスにも惹かれていた。

知り合いのいたプジョー販売店で試乗車が用意できた時すぐに乗せてもらい、その場でオーダー。以来3年、e208はわが家の素晴らしいパートナーであり続けている。

EVについては多くの議論が行われているが、「僕個人」にとってのプジョー e208は、「愛すべき存在」であり、「日々を楽しく過ごさせてくれるよき相棒」だ。

上記のように、今の僕には、走行距離が心配になるような遠出はほぼない。充電も自宅の3kw普通充電でまったく問題ない。
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日本の充電インフラが充実するまでには、まだまだ時間は必要だろうが、僕の場合はそれが不安や不満に繋がることもない。

それに、自宅での充電はほんとうに楽。帰宅して充電ケーブルを差し込むだけ。一連の作業には30秒もかからない。そして、次に出かける時にケーブルを抜くだけだ。

もちろん、遠出する時は充電ケーブルをトランクに積んでいくが、日々の近場走りでは、自宅の電源に繋いだままにしてある。

プジョー e208のバッテリー容量は50kWh。僕の日常にとっては十分な容量だ。ちなみに、気を揉む必要のない程度の残量を残しての走行可能距離は、最長で250km、最短で150kmといったところだろうか。

これは、ノーマルモードでエアコン常時オン。基本的には流れに乗った走りだが、加速の気持ちよさはかなり楽しんでいる、、そんなイメージの走りと思っていただけばいい。

ちなみに、季節(気温)による電費への影響は大きい。僕の場合、冬は4km/kWh前後、夏は6km/kWh前後とご報告しておく。

もし、一気に数百kmを走らなければならないことがあったら、、「その時はガソリンかディーゼル車貸してくださいね」「はい、いいですよ」と、、デーラーとの約束はできている。でも、未だ貸出を頼んだことはない。

プジョー e208GTは「走り味も上々」。EVゆえのというだけではなく、クルマ全体として、とてもよく仕上がっている。

昔から馴染みのデパートやホテルの駐車場には、5ナンバー時代のサイズを残しているところも多い。、、が、そんなところでも、プジョー e208のサイズなら楽勝だ。
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初めは、メーターパネルとステアリングホイールのオーバーラップが少し気になったが、すぐ慣れた。

0~100km/hの公式タイムは8.1秒。十分に速い。だが、日常域で多用する0-60km/h辺りまでの加速にはさらにインパクトがある。

瞬発力があり、力強く、滑らかだ。それに加えて、しなやかさもある。だから、リラックスできる。日々を共にし、ショッピングやランチの友でもあるクルマとして、プジョーe208の加速 / 加速感には◎を付ける。

身のこなしもいい。小径なステアリングホイールのグリップ感はいいし、正確にシャープに応答する。路面からの情報も確実に伝えてくる。小さな四つ角を曲がるような時でさえ、心地よく、ワクワク感がある。

山岳ワインディングロードをスポーツライクに走るような時も、たっぷり楽しませてくれる。容易に、高いアベレージで走れる。

EVならではの加速の瞬発力、そして、重心の低さ、重量バランスの良さ等々が一つになって、こうした、楽しくも心地よい走りを生み出しているということ。ほとんど唯一の難点は、不正路面でのリア側の粗い反応だ。

いいことばかりを書き綴ったようになってしまったが、プジョー e208と共に過ごした3年間はほんとうに楽しかった。、、だから、長い僕のクルマ人生で「車検を取って乗り続ける2台目のクルマ!」になったのだ。

ネットの報告などを見ていると、いろいろなトラブルに見舞われている人もいるようだ。そんな報告を見ていると、「申し訳ない」と思うほど僕にはトラブルがない。

1度だけリコール回収はあったものの、それ以外はまったくのトラブルフリー。ただただ、ハッピーな3年間を過ごしてきた。
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EVにはいろいろな問題課題もあるが、走行距離や充電等の問題にしても、僕は幸い安全圏内にいる。今までのところ「EVのいいところだけを享受」している感じだ。

ガソリン料金が高騰した中でも、自宅の普通充電で、エネルギー代はとても低く抑えられている。

現状のEVは「買う時は高く、売る時は安い」といった問題もある。、、が、「初物買いの銭失い」は初めからわかっていたこと。なので受け容れている。

これから、EVがどんどん進化していくのは間違いないし、価格も下がっていくだろう。AI系との組み合わせがもたらすだろう、新たな価値にも注目したい。

繰り返すが、僕は「現状のEVに合った条件」下で生活している。だからハッピーなのだが、条件がタイトな人ではそうはいかない。

充電器のない家に住み、長距離を走る機会が多く、内燃機関の鼓動感や音が絶対的に好き、、だったら、僕もEVは買わなかった。

車検を取ったプジョー e208GTと過ごす日々は、今まで通り楽しいだろう。まだまだ付き合うつもりだ。でも、もしも、AかBセグメントで、「すごくカッコいい!!」EVが出たら、、僕の「短期衝動買い替え癖」は復活するかもしれない、、。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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