2021.07.25

初めての電気自動車との生活

これまで数多くのクルマを所有してきた筆者。人生で初めて所有するEVは「プジョー e-208 GTライン」。その魅力をリアルリポートします。

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第164回

EVに想うこと

わが家にプジョー e 208 (GTライン)が納車されたのは1月23日。ほぼ半年が経った。EVとの生活は初めてだが、半年の感想をシンプルに言えば「楽しい!」のひと言。僕だけでなく、家内も大の「お気に入り!」だ。

EVは前から気になっていた。前からとはいつ頃? というと、、、80年代半ば辺りから。まだ鉛電池だった頃、メーカーの試験車に何度か乗ったのがきっかけだ。小型ライトバンや中型乗用車だったが、電気モーターの瞬発力は気持ちのいいものだった。

テストコースかその周辺、都内ではメーカーの東京支社なり事務所周辺が試乗コース。そして「走行距離は〇〇km以内に抑えてください」と必ず念を押された。それはそうだろう。鉛電池時代EVの実用走行距離は、せいぜい40~50km程度にしかすぎなかったのだから。

それから十数年後の1997年に発表されたトヨタ「RAV4 EV」はニッケル水素電池を積み、公表走行距離は130~160km。大いに進化した。、、、が、実力はたぶん100km前後といった辺りだっただろう。そして2000年、ついにリチウムイオン電池のEVが登場。日産ハイパーミニだ。小さなシティコミューターはスタイリッシュだった。

公表走行距離は、たしか100kmを超えていたが、実用走行距離はずっと短い。横浜のわが家から、当時の日産本社(東銀座)までの往復(約50km)に挑む勇気は持てなかった。

僕のEVへの気持ちを、一気に現実レベルにまで押し上げたのがMINI E。2011年、実証実験車として送り出された。後席を潰して2シーター化。250kgのリチウムイオン電池を積んだ潔さは気に入った。

さらに惹かれたのが走り。とくに出足の瞬発力/速さはハンパではなかった。強力な回生ブレーキも気に入った。文字通り「ワンペダル」で自在に走れるのは刺激的だった。2週間ほどの付き合いだったが虜になった。あのMINI Eが市販されていたら、僕のEV第1号になっていたのは間違いない。
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話は一気に10年ほど飛ぶ。昨年秋のことだ。僕は箱根路を半ば「恍惚状態!」で走っていた。相棒はAudi e-tron Sportback。

360ps/57.2kgmの出力/トルクを発揮するEVだが、ごくシンプルに言えば「カッコよくて、最高に気持ちのいい走り!」に強く惹きつけられたのだ。ちなみに「ブーストモード」では408ps/67.7kgmにまで上がり、0~100km/hは5.7秒(ノーマルモードは6.6秒)になる。

この数字そのものはとくに驚くようなものでもない。が、ペダルを踏み込んだ瞬間の反応ぶりは、ただただ気持ちがいいのひと言だ。間髪入れないレスポンスはもちろんだが、さらに「素晴らしい滑らかさ!!」が加わる。それは、「剛性感と緻密さを徹底して突き詰めたEV」でしか味わえないものだろう。

バッテリーをフロアに敷き詰めたことによる低重心化と重量配分適正化、絶対重量がもたらす重厚な乗り味、、、今まで経験したことのない「新たな上質感」が押し寄せてきた。滑らかさと確実な減速感を両立させた3段式回生ブレーキも快感を誘う。軽やかでメリハリあるパドル操作感も実に心地よい。

「クアトロ」、、、電子制御された電動4WDは、通常はリアモーターを駆動。後輪駆動状態ということだ。、、、が、走行状況に応じて前後の駆動トルク配分を予測制御する。この制御もまた巧み。「制御されている」といった押し付け的印象はまるでない。ドライバーが自らの意志とテクニックで操っているという実感に浸らせてくれる。

そんなことで、箱根路を走りながら、僕は半ば「恍惚状態!」といったことになってしまったわけだ。となれば当然ほしくなる。ほんとうにほしかった。、、、が、家に帰り、家内に言い出す直前、、、まさに寸止め状態で理性が働いた。

理性が働いたのはボディサイズが頭に浮かんだからだ。4900 ×1935×1615mmのスリーサイズは、われわれの年齢と日常の行動範囲を考えるといささか大きい。年齢はご想像に任せるが、日常的な行動範囲はかなり狭くなっている。仕事を厭わなかった頃の僕には、1日100~200kmは日常。300~400kmも半ば日常だった。

ところが今はといえば、ときどき銀座(往復50km程度)へ食事に行き、たまにお気に入りの箱根のホテル(あちこち寄り道しても200km程度)へ行くのがせいぜい。以前は僕用と家内用の2台は最低限必要だったのだが、上記のようなことで、3年ほど前から1台に減らした。1台で用が足りるようになったということだ。

もうひとつ変化したのはサイズ。もともと家内用はコンパクトだったし、僕も基本的にはコンパクト好き。そこに「年齢制限?」が加わって、いつのまにか「コンパクトはマスト」といったことになっていた。

過去数年の間に買ったいちばん大きなサイズはアウディ Q3 クアトロ。あとはミニクーパーとクーパーS コンバーチブル、ゴルフGTI、GTI パフォーマンスだ。といったことで、猛烈に心惹かれたAudi e-tron Sportsbackだが、なんとか踏みとどまった。寂しい決断だったが仕方がない。
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でも、EVに乗りたいという気持ちが萎えることはなかった。そんなところに現れたのがプジョー e-208。2020欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した、コンパクトな4ドア・ベースのEVだ。

初めに乗ったのはガソリン車だったが、走り味/乗り味ともに気に入った。でも、より以上気に入ったのはルックス。エクステリアにもインテリアにも強く惹かれた。もちろんサイズにも満点がつく。家内も100%気に入ると思ったが、ひと目見るなり「いいなぁ!!これほしい!!」と言い出した。運転しての反応も同じだった。

その時点ではすでにEVモデルのスペックもわかっていたし、欧州からの評判あれこれも伝わってきていた。否定的な意見はほとんどなく、肯定的な意見が圧倒的多数だった。僕は決めた。クルマとともに歩んできた人生で初めて所有するEVを「プジョー e-208 GTライン」にすることを。

試乗しても気持ちが変わることはなかった。いや、「ほしい!」という気持ちはさらにさらに膨らんだ。家内も「絶対にこれがいい!」、「他のクルマは見なくていい!」とさえ言い出した。

そして、今年の1月23日、「めでたく納車」となった次第だ。わが家のガレージには2000年から充電設備がある。日産ハイパーミニの長期試乗を依頼されたときに設置した、3kwの普通充電だ。プジョー e-208の場合、「3kw充電器での50km走行分充電時間(目安)は約3時間」とアナウンスされている。

日々の買い物は往復5~6kmでしかない。たまに行く、特別な商品を揃えたショッピングセンターも往復20km程度。銀座で食事をしたくなっても往復50km走ればいい。

満充電でメーターに表示される走行可能距離は約320kmだが、ゆとりを持った安全率/安心率を考えると200km辺りが実用上の実力といったところ。現役バリバリで動き回っている人には十分ではないだろうし、休暇に帰る実家が遠い人にも使えない。、、、でも、今のわが家にとっては不安要素はなにもない。

基本的には数日~1週間に1度くらい、「夜間電力充電」だけでこと足りる。安全の担保として、日産の充電ネットワークが使える「CHARGING CARD」会員にはなっているが、未だ使ったことはない。

上記のように納車後半年経った。が、静かで滑らか、素晴らしいレスポンスとパンチの効いたスタートダッシュ、低重心と最適な重量バランス、気軽なサイズ感、そして、粋でオシャレなデザイン、、、プジョー e-208に触れるのは未だ日々新鮮だし楽しい!

家内曰く、「用もないのに用を作って出かけたくなる。運転したくて!」とのこと。僕も同じ。「ちょっとでいいから出かけたい! 運転したい !」と思う日々が未だ続いている。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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