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2017.07.13

部門別最高峰に君臨する世界の驚愕時計はこの5本!【2】

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文/渋谷ヤスヒト(ジャーナリスト)

わずか数十㎜の手に収まるサイズ内に驚くべき機構、機能を搭載した時計が世界には存在します。いわば人類の叡智と技術の結集といってもいいほどのアート級のものも。そんな中でも今回はさらに踏み込んだディープな“驚愕時計の世界”をご紹介します。

3. 世界でいちばん動作が長持ちする腕時計

最近の機械式手巻きムーブメントのパワーリザーブ、つまりゼンマイをフルに巻き上げたときに動作する時間は約72時間、つまり約3日間が標準になりつつあります。これなら金曜日の夕方に腕から外しても、月曜日の朝ならまだ余裕で動いてくれるスペックです。
 
ところが、A.ランゲ&ゾーネの「ランゲ 31」は、モデル名のように、一度ゼンマイをフルに巻き上げると約774時間、日数にして約31日間、つまり1ヵ月間も動き続けるという驚きのロングリザーブなのです!

この驚異のスペックを実現しているのが、直径45.9mmのケースの中に収められた、時計を動かす動力源。185㎝の長さの主ゼンマイを収めた2つの香箱。そしてこの2つのゼンマイの超強力なパワーを効率良く使うために、この時計には「モントワール・スプリング付き動力制御メカニズム」と呼ばれる、香箱のパワーを平均化する特別な仕組みが組み込まれています。
 
しかも、主ゼンマイがほどけて充分なパワーが得られなくなると、時計の動きを自動停止させるメカニズムも搭載。またこのモデル、主ゼンマイが長く、リュウズで巻き上げることは難しいので、ケース裏に専用の鍵を差し込んで巻き上げる特別な仕掛けも備えています。世界で唯一のメカニズムによる、世界でいちばん動作が長持ちする腕時計なのです。
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巻き上げは1ヶ月不要です

A.ランゲ&ゾーネ ランゲ31(サーティワン) 1575万円

ロングパワーリザーブモデルに新たな金字塔を打ち立てたA.ランゲ&ゾーネの傑作。世界100本限定。手巻き、ホワイトゴールドケース、ケース径45.9mm、アリゲーターストラップ/A.ランゲ&ゾーネ

4. 世界最速の腕時計

では「世界最速の腕時計」をご紹介します。この腕時計のどこが? 何が最速なのか?それは機械式時計の心臓部、脱進調速機(エスケープメント)の中で、往復回転運動を繰り返しながら時を刻む円形のテンプのスピード(振動数)です。
 
機械式時計ではこの振動数が高いほど、つまりテンプのスピードが速ければ速いほど、物理の慣性の法則で動作が安定し、時計が衝撃や振動を受けても、高い精度が保てます。

ただし、テンプを動かすために必要なパワーも増えるので、それだけ主ゼンマイのエネルギーを多く消費する、つまりパワーリザーブの時間が減ってしまいます。また軸受けの潤滑油や部品の劣化も早まります。
 
なので、一般的な機械式時計の振動数は、2万8800振動/時。つまり1秒間に8振動(ヘルツ表記なら4Hz)。速いものでも36000振動/時、つまり1秒間に10振動(10Hz)が上限というのが、これまでの常識でした。ところがブレゲのこのモデルの振動数はその倍の72000振動/時、1秒間に20振動(20Hz)という超高速なのです。
 
1950年代から60年代、スイスで機械式時計の究極の精度を競うクロノメーターコンクールが行われていた頃、コンクール用のスペシャルモデルではこうした超高速が採用されたことはありました。ですが、それはあくまで耐久性を度外視したコンクール用。
 
ブレゲはこの超高速の振動数をどうやって実現しているのでしょう。それは、ヒゲゼンマイ、アンクルなど脱進機の素材に、金属より格段に軽くて耐久性の高いシリコンを、テンプにチタンを素材としているからなのです。軽いので部品を動かすエネルギーの消費も少なくて済みます。「世界最速の腕時計」なんて、なかなか魅力的な響きですよね。
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超高速の磁気力でズレを修正

ブレゲ クラシック クロノメトリー 7727 438万円

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超高速振動に加え、磁気の力でテンプのズレや回転を修正するマグネティック・ピボット機構も搭載する超高精度モデル。1時位置に1/10秒を表示するカウンターも備える。手巻き、ローズゴールドケース、ケース径41mm、アリゲーターストラップ/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)

クロノグラフの2倍速で時を刻む

ブレゲ クラシック クロノメトリー タイプ XXⅡ(トゥエンティ トゥ) 234万円

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毎時20振動の超高速ムーブメントで、1/20秒単位のクロノグラフ計測を実現した機械式クロノグラフ。クロノグラフ針は通常のクロノグラフの倍速、30秒で文字盤を1回転する。自動巻き、SSケース、ケース径44mm、カーフストラップ/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座)
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5. 世界で一番複雑な時計

驚愕時計のシメを飾るのは、超複雑時計。腕時計の複雑モデルは先にご紹介しましたが、それよりもケースのサイズが大きい懐中時計にはさらに驚愕のモデルがあります。それが1755年に創業した現存する世界最古の時計メーカー、ヴァシュロン・コンスタンタンが2015年9月17日にスイス・ジュネーブで、創業260周年を記念して発表した「リファレンス 57260」です。
 
実はこの懐中時計は一般販売するために開発されたものではなく、ある時計コレクターが「世界でいちばん複雑な時計を作ってほしい」というオーダーに応じた特別なもの、同社の凄腕の時計師3人で構成されたチームが、8年以上もの開発期間をかけて開発・製作した手巻き懐中ムーブメント「キャリバー3750」を搭載し、全部で57もの複雑機構を備えています。
 
ユダヤ暦の永久カレンダーやダブル・レトログラード・ラトラパンテ(スプリットセコンド)クロノグラフ、アーミラリ天球儀トゥールビヨンなど、これまで存在しなかった機構はゼロから設計・開発するなど、時計史上初めての機構を数多く搭載して、総パーツ数は何と2800個以上。ケースはホワイトゴールド製で直径98mm、厚さ50.55mm、重さ約960グラムという堂々たるサイズと重量なのです。
 
一応、機能ごとにまとめて57の複雑機能を簡単に紹介してみますと、6種類の時間機能、グレゴリオ暦ならびにユダヤ暦による15種類の永久カレンダー機能、9種類の天文暦カレンダー機能、 太陰暦カレンダー機能、宗教カレンダー機能、トリプル・コラムホイール・クロノグラフ機能、6種類のアラーム機能、8種類のウェエストミンスターカリヨン・ストライキング機能(ミニッツリピーターなど)。さらにこれ以外に7種類の機能。これで57個になります。
 
果たしてどんな人物がこの時計をオーダーしたのか。そちらも大いに気になるところです。
 
価格は非公開ですが、億単位の金額だと推定されています。またヴァシュロン・コンスタンタンはこの時計をオーダーした顧客に「これ以上複雑な時計を10年間は製作しない」という契約を結んでいるので、2024年までは、他社が作らない限りこの懐中時計が「世界でもっとも複雑な時計」の称号に輝き続けるはずです。
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世界一複雑な時計

ヴァシュロン・コンスタンタン リファレンス 57260 価格非公開

レファレンス57260 モデル名は57の機能とブランドの260周年にちなむ。世界で2本のみ製作され、1本は注文主に、もう1本はメゾンのアーカイブに収蔵されています/ヴァシュロン・コンスタンタン

● 渋谷ヤスヒト

時計&モノジャーナリスト、編集者、メディアプロデューサー。モノ情報誌の編集者として1995年にスイス2大時計フェアの取材を開始して以来、現在まで一貫して国内外のあらゆる時計ブランドのファクトリー、人、時計業界全体の歴史や動向まで取材を続けている。時計に限らずスマートフォン、PC、家電、カメラ、クルマをはじめあらゆるジャンルが取材対象。雑誌やテレビ、ウエブ等の企画・監修も手がける。

■問い合わせ
A.ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080
ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755
ブレゲ ブティック銀座 03-6254-7211

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