2019.09.15
プロが伝授。正しい高級時計の扱い方、知ってますか?
機械式時計は、非常に繊細なバランスで成立している高度なメカ。それゆえに雑に扱ってしまうと、購入して数年ほどで調子を崩したり故障を起こしてしまうことも。そこでプロの時計師に、正しい機械式時計との付き合い方を伺いました。
- CREDIT :
イラスト/林田秀一 文/長谷川 剛(04)
小さなミスから大きな故障になることも
今回は特時計初心者に多い、よくある勘違いについて、同社代表取締役の佐藤 努(さとう・つとむ)さんに話を聞きました。
● Point 01
機能付き時計は、操作ミスに注意
また、クロノグラフを動かしっぱなしにして故障させてしまうケースも稀にあります。機構のスタート/ストップを制御するクラッチに種類があり、水平クラッチでは故障の原因になったり、精度に影響を与えたりするため、動かしっぱなしはオススメしません」
● Point 02
年代物こそ、水濡れに注意
「これも基本事項ですが、”10m防水”は深さ10mの水圧に耐えられる時計だという目安で、水深2〜3mくらいのプールでも、勢いよく飛び込んだりすると、場合によっては時計内部に水が侵入することもあるのです」
「特に、アンティーク時計はケースバックのネジ込み部分やリュウズ回りがサビていることも多く、またパッキンも劣化していることがほとんどなので、特に水は大敵と言えるのです」
● Point 03
携帯電話と時計を近づけるのは御法度
「確かに磁気は時計の精度を狂わせるひとつの要因ですが、とはいえ、あまり神経質になる必要はないと思います。オーバーホールの際など定期的に磁気を除去すれば、大きな問題に至ることはありません。ただし、デスクワーク中に時計を外した際にスマホなどと一緒に重ね置きするクセのある人は、注意が必要かもしれません」
「また、磁気帯びを機械式時計だけの問題と捉えている人も多いのですが、実はクオーツ式も要注意。女性のお客様に多いのですが、"時計が急に遅れるようになった"とクオーツを持ち込まれた場合、耐磁していることがほとんど。クオーツは微弱な電流で動いているので、それ以上に強力な磁気に近づけるとその間止まってしまい、結果遅れが生じたように感じるのです」
● Point 04
初心者の方に特に多いのが、リュウズの扱い方ミス
「時計に馴れている人は起こさないミスですが、捻じ込み式や二段引きのリュウズなどを最後まで差し込まずに使用する人が少なからずいるのです」
「そういった状態のまま使用すると防水性も下がりますし、リュウズに何かが当たったりすると、衝撃で巻き芯が折れたり巻き上げ構造に不具合が生じたりします。また、リュウズ自体が外れてしまい紛失、といったケースもあるので、ぜひ注意して欲しいですね」
● Point 05
年に1度は、クリーニングと"健康診断"を
よほどの人でないかぎり、外す度に洗浄などしないはずですから、裏ブタ周辺に現われるサビも、夏期に付着した湿気や汚れが原因ということは実に多いもの。それゆえ夏が終ったところで時計の外装洗浄を行うことは、とても合理的と言えるのです」
ちなみにゼンマイワークスでは磁気帯びや防水、精度チェックを行う簡単な検査サービス(1回3000円)に加え、専門機器による外装洗浄サービス(1回3000円〜)も行なっているとのこと。人間と同様、年に1度の"健康診断"が大切な時計を長く愛用するための秘訣です。
● 佐藤 努(さとう・つとむ)
1968年大阪生まれ。1989年より一新時計株式会社サービス部に勤務。その間にパテック・フィリップ、ショパールなどの海外研修を受ける。2014年ゼンマイワークスを始動。現在、代表取締役社長。
■ ゼンマイワークス
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URL/http://www.zenmaiworks.jp/
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