2017.06.21
昭和の時代から愛され続ける名旅館でしっぽりお籠りステイを/後編
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文/福田 豊(龍言、湯之島館)、いとうゆうじ(滝亭)
【温泉御宿 龍言(魚沼)】【下呂温泉 湯之島館(岐阜)】【滝亭(金沢)】
昨今のリノベーションブームで平成生まれの和モダンなデザイナーズホテル&旅館も百花繚乱ですが、やはり長く続く歴史の魅力は格別。
昭和を感じる=つまり、懐かしくも逆に新しい、世代を超えた魅力あふれる宿は、彼女とあなたの関係にもきっと新しい刺激を与えてくれるはず。時空を超えて日本情緒を楽しむ旅に出てみませんか?
風情とくつろぎと美味を心から愉しめる「龍言」
龍言ならではの大きな魅力は、約40年をかけて、当地に立っていた庄屋や豪農の館およそ16棟を徐々に移築し、連ねて造られている、ということ。
それもすべてが江戸時代の文化、文政年代の古民家ばかりで、そのため柱も梁が太く立派で、実に趣があります。また各棟を結ぶ回廊も古材を再利用し、建具や金具などの多くも当時のもの。だから雪国独特の風情を深く味わえるのです。
また、そんな広さに対して部屋数がわずか32室というのも、ならでは。実は、広間や風呂などの各所が皆広々していて、客室もすべてが10畳以上。ですから宿泊していて本当にゆったり寛げる。しかもどの部屋も古民家だからそれぞれの造りが違う。ゆえに何度訪れても新鮮なのですよ。
でも、そんな気負いがないところが、逆に素晴らしい。だってこの地は、水がいい。お米がいい。川魚がいい。野菜がいい。ならば美味しくないわけがない。魚沼地鶏鍋というのも素朴で美味しかったなぁ。
さらに忘れちゃいけないのが、そう、日本酒の美味さ。特に美味だったのが「八海山の原酒」というので、あの深味はそのままに、日本酒特有の甘さのないさわやかな飲み口。だから普段は日本酒をあまり嗜まない方でも、きっと気に入る。断然、おすすめですよ。
■温泉御宿 龍言
温泉御宿 龍言
住所/新潟県南魚沼市坂戸79
URL/www.ryugon.co.jp/
予約・お問い合わせ/☎025-772-3470
●料金/2万3760円~(1泊2食ひとり、入湯税別途)。あの渡辺淳一先生の『かりそめ』に登場する「旅館」がここ。各部屋から望める庭園も見事。車で40分ほどの距離にゴルフ場が3つもあり、スキー場も車で15~20分とさらに近くにある。
格式ある老舗宿の特別室で特別なひとときを「下呂温泉 湯之島館」
なので、若い女子には新鮮な魅力。大人な女子にはその格式の高さがうれしい。そして、そんなクラシックの名宿に連れて行くことはオヤジの洒脱さを物語る。名古屋周辺に在住のオヤジさんなどには実際に、湯之島館が子供の頃からの行きつけの宿だ、という洒脱なオヤジさんも多くおられるのではないでしょうか。
湯之島館はその独特の佇まいも素晴らしい魅力です。敷地は山ひとつ丸ごとの5万坪の広さ。そこに創業者の、可能な限り木を切らず、山を削らず、というこだわりで建物が建てられたため山の斜面に各棟が迷路のように廊下でつなげられ、それがなんとも言えない独特の風情。
飛騨の名匠が腕を振るった木造造りは登録有形文化財に指定されており、それをわざわざ見るために訪れる有名建築家もいます。また、大人の男女の社交場として建てられたダンスホールやサンルームなどのある洋館造りの棟は昭和モダンの雰囲気が味わえる。
可能な限り木を切らず山を削らなかったために80年以上前の自然がそのまま残るのも素晴らしい魅力。それこそ樹齢ウン百年の大木があちらこちらにそびえ、しかも各棟が離れているので周囲は木々に深く囲まれ、それこそ昭和初期の一軒家のような趣がある。
で、そんな湯之島館で特にオヤジさんにオススメなのが別館特別室の春慶荘や露天付きの部屋です。部屋のしつらえはどこか懐かしさのある純和風で彼女とふたりでゆっくりと落ち着ける。
それでお茶など飲みつつひと休みをして、前記の迷路のような廊下をふたりで散歩して行って、まず露天の大風呂へ。そうして浴衣に着替えればさらにゆったりと寛げちゃう。
そうして、ほろ酔い気分で彼女とふたりで仲良く部屋の露天風呂に浸かって、後はウフフフ、と。というように湯之島館はすべてが恋するオヤジさんにうってつけ。お泊まりドライブデートに最高の選択となる名宿なのです。
■下呂温泉 湯之島館
下呂温泉 湯之島館
住所/岐阜県下呂市湯之島645番地
URL/www.yunoshimakan.co.jp/
予約・お問い合わせ/☎0576-25-4126
●料金/1万7388円~(1泊2食ひとり、消費税・入湯税別途)。洋館造りの棟も創業当時に建てられたもので、サンルームやビリヤード場など、昭和モダンの雰囲気を味わえる。ダンスホールも当時の姿ほぼそのままで、当時の大人の洒脱なナイトライフを楽しめる。
「下呂温泉 湯之島館」2013年11月号
「滝亭」2015年12月号
の記事を再編集したものです。
ふたりきりで過ごせる空間をいたるところで満喫できる「滝亭」
特筆すべきはそのロケーションで観光にも便利な市街地から15分以内という近さに加え、3000坪もの敷地の眼前には日本海へと注ぐ犀川も流れている。宿名の由来となった裏山から流れ落ちる滝は、金沢城へ引かれた辰巳用水のこぼれ水。
このふたつとない立地、先々代の主人が「訪れる人を景色でもてなすため」発見したのだそう。今回宿泊したのは、和洋折衷のモダンなデザインの辰巳亭のお部屋。インテリアは金沢の街並みのようなレトロシックで、これはいかにも女性が喜んでくれそうな設えです。
また客室で飲む分にはドリンクの持ち込みもフリーなので、露店風呂に入りながらお気に入りのシャンパンで乾杯、なんて楽しみ方も。温泉は弱アルカリ性の別名「つるつるの湯」で、これもネーミングからして女性の心とカラダに効きそうです。
実は金沢は能登牛もあれば加賀野菜に川魚と、なんでも揃う食材の宝庫。特に海の幸は日本海も近く、七尾湾で獲れたものを生きたまま運んだ新鮮なものが味わえる。滝亭でも、冬は石川県のブランドガニである加能ガニの鍋が人気だとか。
ドライブデートですから、翌朝は新幹線の発車時刻を気にするでもなく、おもてなしの心に溢れた城下町・金沢の街をゆっくりしっぽり散策する~、なんていう旅はいかがですか。
■滝亭
滝亭
住所/石川県金沢市末町23-10
URL/www.takitei.co.jp/
予約・お問い合わせ/☎076-229-1122
●料金/2万3000円~(1泊2食ひとり、入湯税別途)。金沢市街から近いロケーションにある川端の湯宿。里山に抱かれ、四季折々の日本の原風景を愛でられるのもポイント。辰巳亭はカップルにも人気が高く、大正モダンデザインで過ごしやすい。