2025.11.02
壁もドアもないジャングルのリゾートに泊まって、野生にかえりませんか?
この冬、日本を抜け出して逃避行を考えている方におすすめなのが、バリのジャングルに佇む「ブアハン ア バンヤンツリー エスケープ」。そこは壁もドアも存在しない、超絶にワイルドなリゾートです。日本を飛び立って10時間ほどで始まる非日常に、身を委ねてくださいませ。
BY :
- 文/大石智子(ライター)
- CREDIT :
編集/森本 泉(Web LEON))
壁のない世界にそそられてバリへ

場所はウブドよりさらに北の未開の森。上空写真を見ると、ジャングルの中にぽつんと屋根とプールが佇みます。頭を抱えたくなるほどワイルド。なんとも気持ちいい風が吹きそうです。ここは絶対に自分の好きな場所。そんな予感を確かめるべく、バリ島へ飛びました。

バリにこんな深い森が残っているとは知らなかった
椰子並木を抜け、頭にカゴをのせて歩く女性たちを追い越し辿り着いたのは、一棟の大きな東屋。つまり屋根と柱だけの建物で、インドネシアでは“バレ”と呼ばれます。それこそ、「ブアハン ア バンヤンツリー エスケープ」のアライバルホール。

屋根にはクルクルと呼ばれる大きな木が吊るされています。クルクルはバリに古くから伝わる伝達手段で、棍棒で打つ回数により村ごとの様々なメッセージがあるとか。結婚も子供の誕生も緊急集合も、クルクルが知らせます。私が着くと歓迎の合図として3回打たれたのでした。




森で眠るという夢が叶う





ディテールまでハイセンス

バリグローニ

オリジナルのガウンやタオル

ローカルのコーヒーとハーブティー

Don’t disturbのサイン

銅製バスタブ


「鍵をつけないことに関して、何も議論をしなかったし、誰も心配しませんでした。これまで紛失物もクレームもありません。一度アクセサリーが見当たらなくなったゲストがいたけれど、バレの下で見つかり、おそらくリスの仕業。よいお客さまばかりですし、部外者が入ってくることもありません」と広報担当者。
鍵がなくても安心して過ごせる環境とは、真の贅沢。過ごすうちに鍵のない自由さにはまり、心から解放的に過ごせたのでした。

虫に関して、「ここは彼らの家。人間がお邪魔させてもらっている」と話すゲストもいるとか。壁がないリゾートに惹かれるような人が集まるので、虫を気にする声も少ないです。ちなみに鳥は想像以上に多く、朝はびっくりする程の大合唱。たまにサルが通りかかることもあります。
スパと滝行は必須
スタートは朝9時。“聖なる人”を意味する白い衣装に身を包んだ司祭とスタッフ1名が自室バレまで来て、まずはお供えの花を作ります。これが鮮やかでとてもいい香り。







美味しいサステナビリティ
ジャングルのお宿でモダンなコースとは意外ですが、自家製の発酵調味料や、食材同士の絶妙なバランスに驚かされました。サステナビリティの意識は高いものの、とってつけた手法はなく、どこか昔ながら。和食と同じで、調味料の質がいい郷土料理もまた美味しかったです。



このリゾートの料理は、華美にし過ぎず提供するのが好印象。すべてがそこにあることが当然といった、真摯なローカルフードに感じました。



土地購入から20年以上を経て完成
「元はただ木が生い茂る急斜面でしたが、20年以上前にバンヤン・グループの創業者でもある現オーナーが景観に惚れ込んで土地を購入しました。買ったはいいものの、急斜面をどう活用したらいいか分からず、ずっと何も手をつけていませんでした。そこにオーナーの娘さん(現副CEO)が、“この美しい自然を最大限に感じられるリトリートを作りたい”と、壁もドアもない施設を提案したのです」
設計を担当したバリ北部の建築事務所「ルマ・インタラン」のチームは、設計前にブアハン村に4か月間滞在し、村人と生活をともにしながら徹底的に土地を調べたと言います。森林を測り、どんな動物が住み、植物の種類や川の位置などすべてを把握。村人との交流を通し地域の文化も知っていったそうです。

「資材を運ぶのが本当に大変だったんです。特に一番下のバレまで資材を運ぶのが難しかった。できるだけリサイクル素材を使おうと、古い船などから頑丈なウリン材を集めることにも時間がかかったと聞いています」と広報担当者。ジャングルに溶け込むリゾートだから、新たに木を伐採して使うことは矛盾だったのかもしれません。
各客室に敷くマットや小物も、地元の職人による手仕事。細部にまで時間をかけて造られた場所は、人を足早に立ち去らせません。
2泊したけれど私は3泊が正解だった。ただ、稀に「想像していたより野生味が強すぎる」と1〜2泊して早めにチェックアウトするゲストもいるそう。逆に一週間に延長するゲストも存在します。

夜の小径に香るのはナイトジャスミン。その香りを思い出す度に、再訪への願望が湧いてきます。
■ ブアハン ア バンヤンツリー エスケープ
(Buahan, a Banyan Tree Escape)
料金/1泊10万9788円〜
HP/https://escape.banyantree.com

大石智子(ライター)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。















