2025.06.15
ヴェネツィア行きを決めたのは、「アマン ヴェニス」にどうしても泊まりたかったから
誰もが憧れる水の都・ヴェネツィア。旅先としてトップクラスの人気を誇るその街に、ホテル好きが羨望するホテルが存在します。それが、「アマン ヴェニス」。ホテルを目指し、結果、街も好きになる流れがあると教えてくれた滞在をレポートします。
BY :
- 文/大石智子(ライター)
3キーホテルに認められた「アマン ヴェニス」へ

それと同じ感情を筆者にもたせたのが、「アマン ヴェニス」。初めて写真を見た時、「本当にホテルなのか?」と疑わざるを得ませんでした。どう見ても宮殿と思ったら、本当に宮殿。16世紀に豪商が建てた宮殿がアマンになっていたのです。宿泊済みのホテル好きからは、絶賛の口コミが相次ぎます。影響を受け、いつか行きたいと思い続けていたらコロナ禍に。

475年前に建てられた宮殿に泊まる

そんな話をしたあとで突っ込まれるかもしれませんが、リアルなところ、筆者は「アマン ヴェニス」に徒歩で着きました。空室状況の都合で前日まで近所のホテルに泊まっていたからです。ホテルの門に着くと、水上チェックインとは違った驚きが。

いったん荷物を置くためホテル内に入ると、時間を伝えていたわけではないのに「Good Morning, Ms.Oishi」と名前を呼んで歓迎してくれたのは、流石アマン。温かなホスピタリティと時代を超越した美しさに包まれる時間が、入って5秒で始まります。
コーヒーでもいただこうと2階へ向かいますが、階段が美し過ぎて立ちどまってしまう。壁にも天井にもフレスコ画が描かれ、光をもたらすのはシャンデリアとステンドグラス。まるで開館前の美術館に入ったようで、しかし階段はまだまだ序章です。







宮殿ホテルには、貴族一家がいまも住んでいた!

「アマン ヴェニス」の誕生は、アマン創業者のエイドリアン・ゼッカが美しい宮殿に心奪われたことがきっかけ。しかし、そこはアリヴァヴェーネ伯爵が妻や5人の子供たちと住む大切な我が家であり、今後も住みたいと思う場所でした。その気持ちを尊重し、伯爵一家が居住したまま「アマン ヴェニス」として宮殿を借りることに。伯爵は「アマンであれば」との信頼関係を元に了承したのでした。
「ヴェネツィアは湿気が多く建築物を維持するには非常に難しい場所でもあります。かかる費用も相当なものになります。当時、アマンは伯爵に元の宮殿をなるべく忠実に再現する修復と保持を約束しました。改修方法の提案も含め、アマンは伯爵の哲学に沿った唯一のブランドだったと聞いています。伯爵は巨大組織とのビジネス的な話は好まず、歴史やカルチャーを尊重するパートナーに扉を開いてくれました」と、広報担当者。ちなみにこの話を広報担当者に聞いている時、背景が美し過ぎてドキュメンタリーフィルムを見ている錯覚に陥りました。
本物の貴族とホテルのゲストが共存する建物という点でも稀少な場所。開放されたライブラリーには代々集められた書籍が並び、読むことは出来ないですが、かつて貴族たちがめくった本に囲まれるという事実が贅沢です。足もとの大理石の切り替えを見れば、床からも当時の職人の技術や保持へのこだわりを感じられます。





人生イチ贅沢なビールとフリットを体験

卓上にビールがあると、夢のような空間をこの瞬間の現実と思えるから不思議です。それはホテルになったからこそ叶う一杯。こんな高貴な場所でビールを飲むことは、もう二度とないはずで、一杯が染み入ります。



曇天にも惚れてしまう

通常、旅先では晴天を望みますが、ヴェネツィアではその欲がなくなったのです。「ヴェネツィアのオレンジの屋根は青い空と一緒だと強い印象。でも、太陽に照らされていない色もまた美しいです」と前述の広報さん。確かにオレンジとグレーの空もいい塩梅なのです。その景色を、「アマン ヴェニス」の様々な窓から眺める時間が至福。

そして一度は、小さな廊下を抜けて、街を一望する共用テラスへ。宿泊者のみが知る絶景ポイントで、運河と逆側の街もまた美しいと発見します。





■ AMAN VENICE
宿泊料金/1泊€1700〜(税別)
アマン共通日本語フリーダイヤル(月~金10:00~17:00)/0120-951-125
HP/https://www.aman.com/ja-jp
