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2023.03.19

【カナダ・オンタリオ州の旅(1)】

マイナス30℃の楽園!? 極寒のオタワで熱く盛りあがれ!

カナダ東部に位置するオンタリオ州。オタワやトロント、ナイアガラの滝がある州として知られ、意外や真冬もおすすめの旅先であります。そこでオンタリオ州の楽しみ方を4回に分けてご紹介。第1回目は2月に氷と雪の祭典が行われる首都オタワです。

CREDIT :

文・写真/大石智子

オタワの魅力を何も知らなかった……

カナダの首都でありながら、多くの人にとって未知の街であるはずのオタワ。「オタワに行ってみたい!」と思ったことはありますか? 正直、筆者はありません。カナダというと、バンクーバー、トロント、モントリオールが目立って、オタワは観光の印象が低かった。

そう思っていた数カ月前の自分に、「オタワを侮るなよ!」と言ってやりたい。あんなに美しくて文化度の高い街とは何も知らなかった。今年の2月、実際にオタワに行ってみると、無知な自分を恥じるほど充実した旅となったのです。ではオタワの一体何が面白かったのか、5つの項目に分けてお伝えします。

【1】 「外は極寒、中は陽気」というギャップに無性に惹かれる

オタワに向かう3日前、天気予報を見ると現地の最低気温はマイナス30℃(体感マイナス40℃)。「いやいや!」と思わず予報に突っ込みました。家庭用冷凍庫がマイナス18℃ほどなので、業務用冷凍庫のレベルです。覚悟して着いたオタワ上空は、一面の銀世界。2月3日、午前10時の気温はマイナス27℃でした。
エアカナダで東京-トロント(約12時間)、トロント-オタワ(1時間)で現地に到着。
▲ エアカナダで東京-トロント(約12時間)、トロント-オタワ(1時間)で現地に到着。
空港で迎えのクルマに乗り込むと、なんと車内にあったペットボトルの水が凍っている。ひと晩置かれていたのでしょう。雪がひと粒も降らない静岡沿岸部で育ち、冬はタイに逃げ、極寒と無縁の生活を送ってきた筆者にとって衝撃の光景。

それでも初日から街の景色に惚れ惚れしました。想像以上にヨーロピアンな空気感で、ゴシック様式の建築に雪が厚く積もる。国会議事堂に立つ偉人の銅像の肩にも雪。欧州の気品とハードな冬が融合し、なんとも幻想的なのです。
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1年に3回ほどマイナス26〜30℃まで下がるというオタワ。この寒さではジョギングもできないのでショッピングセンター内を歩いて運動する人も多いとか。
▲ 1年に3回ほどマイナス26〜30℃まで下がるというオタワ。この寒さではジョギングもできないのでショッピングセンター内を歩いて運動する人も多いとか。
完全防寒してもまつ毛は凍ります。やわな手袋に意味はありません。手袋は二枚重ねで二枚目はスノーボード用をご用意ください。筆者は現地で慌ててフェイスマスクとiPhone用タッチペン(手袋を外さずに操作するため)を購入しました。

そこまで極寒なのに、驚いたのが中じゃ人がやけに明るいこと。レストランの店員さんに「美味しい」と伝えれば「フ〜フ〜!」と踊り歩いていくし、大箱レストランは大賑わいでみんな喋くり倒しているし、ダウンコートの下はちょっと色っぽい服だったりする。
大賑わいだった元銀行のレストラン「Riviera」。
▲ 大賑わいだった元銀行のレストラン「Riviera」。
陽気さの極め付けが夜に行った「Ottawa Jazz Festival」。毎年2月と6月に行われるイベントで、私は22時からキューバンジャズを聴きにいきました。情熱的な歌声に会場の誰もが極寒を忘れているムード。帰りは熱い余韻を感じながらマイナス30℃の街を歩く。この温度差は、2月のオタワでしか体験し得ない特別な体験でした。
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初めてながら聞き惚れたキューバンジャズのOKAN。
▲ 初めてながら聞き惚れたキューバンジャズのOKAN。 ジャズフェスのHPはこちら
翌朝はついにマイナス31℃。人生一度の機会と思い、ホテル裏の公園で服をカチンコチンに凍らせる実験に挑戦。3分ほどで凍って自撮りをしていると、通勤中のオタワ市民が「撮ろうか?」と声をかけてくれて、なんて優しい。雪と氷の街で心温まったのでした。
凍った服と記念撮影。この寒さで凍らない鳩、強し。
▲ 凍った服と記念撮影。この寒さで凍らない鳩、強し。
まつ毛が凍って雪のマスカラ状態。
▲ まつ毛が凍って雪のマスカラ状態。
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【2】 氷と雪の祭典「ウィンタールード」が街を賑やかにする

2月の第1〜3週にはオタワ市民が愛するお祭り「ウィンタールード(Winterlude)」が行われます。それはカナダ全土から旅行者が集まる氷と雪の祭典。1979年に始まったこのイベントは、先祖の木こりたちの冬の過ごし方にインスピレーションを得ているとか。
ジャックカルティエ公園には雪の石像が並びます。
▲ ジャックカルティエ公園には雪の石像が並びます。
市内にイベント会場が点在し、入場料はすべて無料。週末には老若男女が集い、街全体が極寒なのに浮き足立つ。目玉となるのは下記の3カ所です。

リドー運河のアイススケートリンク

ユネスコ世界遺産でもあるリドー運河が、冬には天然のスケートリンクに大変貌。その長さはなんと7.8kmもあり、世界最大スケートリンクとしてギネス認定済み。オタワ市民は氷上を通勤・通学にも使っていて、彼らが颯爽と滑っていく様子も冬のオタワらしい風景です。運河沿いにレンタルスケートシューズ店もあるので気軽に参加できます。
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リドー運河は全長202kmもある北米最古の運河。
▲ リドー運河は全長202kmもある北米最古の運河。
氷上そりで順位を競う「アイスドラゴンボートフェスティバル」も行われ、毎年約50チームが参加。
▲ 氷上そりで順位を競う「アイスドラゴンボートフェスティバル」も行われ、毎年約50チームが参加。
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氷の彫刻が並ぶスパークス・ストリート

市街中心部のスーパークス・ストリート(Sparks St.)には氷の彫刻が勢揃い。オンライン投票でどのチームの彫刻が最も優れているか決める催しで、今年のテーマは“海の生物”でした。人魚やブルードラゴン、巨大タコetc. 作品は精巧かつファンタジック。ライトアップされた夜の姿も美しいです。
日本で言う竜の落とし子の「The Seahorse」。Manitoba teamの作品。
▲ 日本で言う竜の落とし子の「The Seahorse」。Manitoba teamの作品。
屋台の「メープルタフィー」もお試しあれ。きれいな雪に熱いメープルシロップの餡を垂らし固めたもので、カナダの冬の風物詩。表面に雪がついたまま食べるので、ひと口目に雪が溶ける瞬間がたまらない。
▲ 屋台の「メープルタフィー」もお試しあれ。きれいな雪に熱いメープルシロップの餡を垂らし固めたもので、カナダの冬の風物詩。表面に雪がついたまま食べるので、ひと口目に雪が溶ける瞬間がたまらない。
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SNOWFLAKE KINGDOM(スノーフレーク キングダム)

会場はケベック州側となるジャックカルティエ公園。雪の遊園地のようなもので、雪の滑り台やワイヤーで飛ぶジップラインを楽しめます。家族連れの多いこの遊び場で筆者が気に入ったのは雪壁にはまる写真スポット。ポーズが彫られた人型にはまれば、自動的にご機嫌な写真が撮れてしまうのですよ。
ただはまるだけで楽しい気持ちになる。ケベック側なので仏語が飛び交います。
▲ ただはまるだけで楽しい気持ちになる。ケベック側なので仏語が飛び交います。
大人も滑っていた雪の滑り台。
▲ 大人も滑っていた雪の滑り台。 HPはこちら
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【3】 各国首相も泊まる歴史深いホテルがオタワらしさを深める

ホテルは「フェアモント シャトー ローリエ(Fairmont Château Laurier)」一択と言い切りましょう。街の中心にアイコンとして立つホテルであり、ここ以上の好立地はないです。名所に囲まれ、今回ご紹介するレストランへも歩いてすぐ。客室の窓を開ければ目に入るのは雪に覆われたゴシック様式の建築群。オタワで最も印象に残った景色はこのホテルにありました。
「コーナースイート キング」(57㎡)からの眺め。約4割の客室が国会議事堂側を向きます。
▲ 「コーナースイート キング」(57㎡)からの眺め。約4割の客室が国会議事堂側を向きます。
客室からファンタジーの世界と見間違う絶景を眺められますが、ホテル自体も城のように優雅で美しい。
ホテルの目の前は凍ったリドー運河。客室数は425室でうちスイートは33室。
▲ ホテルの目の前は凍ったリドー運河。客室数は425室でうちスイートは33室。
1912年に開業した同ホテルのオーナーはカナダ西部で成功していた鉄道王、チャールズ・メイヴィル・ヘイズ。彼は自身が鉄道を敷く主要都市に豪華なホテルを建て続け、線路がオタワに届いた時期に合わせ「フェアモント シャトー ローリエ」を作りました。行政の中心であるオタワだから、世界の要人に恥じないよう外壁から床まで高級資材を惜しみなく使用。ホテル名にカナダの第7代首相、ウィルフリッド・ローリエ卿の名をもらい、1912年4月にいよいよ開業へと漕ぎ着けます。

しかし、ヘイズはホテルの開業をその目に映すことは出来なかった。開業セレモニーのためにロンドンから経由地のNYに向かう彼が乗船したのは、あの沈没したタイタニック号だったのです。
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110年以上経ったいまもエレガンスは健在。
▲ 110年以上経ったいまもエレガンスは健在。
オーナーの不運を乗り越え、ホテルは同年の6月に開業。オタワ初のラグジュアリーホテルとして、王族、政治家、セレブリティを迎え続けてきました。エリザベス2世にネルソン・マンデラ、ロジャー・ムーアetc.ここに住んだカナダの歴代首相も2人いて、筆者が滞在した前月には岸田首相も宿泊していました。
眺望のよさに加えてクラシックな空間が大人を落ち着かせます。天井の高いロビーはステンドグラスから光が差し、回転扉を囲うのは精巧に飾りが彫られたオーク材。そんなロビーを背筋が伸びる気持ちで歩いていると、出会ったのはホテルのアンバサダーである黒ラブラドールのスチュワート! ホテルのSNSには「ホテル内で彼と一緒にお散歩してください」とあったので、次回はもっと交流を深めたい所存です。
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盲 導犬の学校に4 年間通ったものの適正が違ったようでホテル業界に入ったスチュワート。
▲ 盲導犬の学校に4年間通ったものの適正が違ったようでホテル業界に入ったスチュワート。
また、サステナビリティに熱心なホテルでもあり、館内で使用する食材を極力近隣の生産者から仕入れ、食材の使い切りにも注力。植樹活動も行っていて既に3700本を植えたというから本格筋です。朝食ビュッフェは行っているものの、余った分は従業員の食事に回るとのことでフードロスも抑えます。
宿泊はゴールドラウンジへのアクセスがついた3〜4階のゴールドフロアがおすすめ(1泊約4万8200円〜)。朝食ビュッフェもラウンジでゆったりいただけます。
▲ 宿泊はゴールドラウンジへのアクセスがついた3〜4階のゴールドフロアがおすすめ(1泊約4万8200円〜)。朝食ビュッフェもラウンジでゆったりいただけます。

● フェアモント シャトー ローリエ

1泊1室約3万3410円〜 ※価格は編集部調べ
HP/https://www.fairmont.jp/laurier-ottawa/ 

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【4】 冬のご馳走とワインでエネルギーチャージ!

グルメ事情も謎だったオタワ。そんな筆者のテンションを一気に上げたのが、「カナダでは鴨がよく食べられる」という事実です。養殖も天然も出荷量が多く、いずれにしろ育つ環境は大自然。これだけ寒い冬を乗り越える鴨の脂はもの凄く厚いのかなとも気になりました。

実際、オタワのレストランに入ると、多くの店が鴨をオンメニューしている。それも大半が“鴨のコンフィ”。オタワは仏語が公用語であるケベック州のすぐ隣で、フランス色の強い店がメジャーなのです。さらにうれしいのがカナダ産ビーフの“ステーキタルタル”も定番なこと。ワインは米国、フランスのほかナイアガラ産もよく見かけました。

まるでフランスのブラッセリーと思ったのは、「Metropolitan Brrasserie Restaurant」。赤いソファに小さめの木製テーブルが並び、人々はワイン片手に大賑わい。前菜にタルタルステーキ、メインに鴨のコンフィを頼めばフランス気分。カナダ産ビーフの赤身肉はサラダのようにさくさく食べられて食後感が軽やか。鴨のコンフィで言えば「Social Restaurant + Lounge」も美味しかったです。
オタワのフードシーンを現地ガイドが案内してくれるツアーもおすすめ。「C’est Bon」(仏語で美味しいを意味するセボン)では、一夜で人気店を3軒ホッピングする“Gourmet Experience”を約1万8000円から提供中。前菜、メイン、デザートを各店舗でいただく梯子コースでペアリング付き。すべてご近所なので寒さの心配も無用です。

3軒のうち特に印象に残っているのはメインをいただいた「Oz Kafe」。ここはシェフが仕事終わりに集まる店で、コーニッシュチキンの付け合わせの芋の美味しさが忘れられない。元陸軍の事務所だった建物も趣たっぷりで再訪したいものです(他の2軒は「Restaurant e18hteen」と「Fairouz café」)。

● C’est Bon

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【5】 大人の知的好奇心をくすぐる美術館と博物館が点在している

オタワとその近郊はミュージアムの箱もダイナミック。建築にもしっかり力を入れていて空間から見応え満点です。今回訪れたのは、「カナダ歴史博物館」と「カナダ自然博物館」、そして「カナダ国立美術館」。なかでも最も時間をかけたいのはひとつめの歴史博物館です。カナダの成り立ちを把握できる博物館で、印象深いのが展示内容に先住民への懺悔とリスペクトが込められていること。

カナダには現在も600以上の異なる民族が住み、独自の言語も50以上存在。ここは先住民の子孫とコミュニケーションをとりながら展示内容を決めた博物館であり、先住民による踊りの集会“パウワウ”も定期的に行われています(撮影厳禁)。訪問時に聞いた話で興味深かかったのは、先住民の間では芸術という言葉が存在しなかったということ。それぞれの感性を表現するアーティストでいることが当たり前だったのです。
「カナダ自然博物館」はガラスの箱をのせたような建築が見もの。中で回っている地球のインスタレーションも大迫力です。恐竜の化石を多くコレクションする研究機関でもあり、所蔵は3万5000点以上(展示はその1%)。カナダは国土の40%が北極圏のため北極圏ギャラリーもあり、恐竜好きやシロクマ好きは胸が躍るはず。
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「カナダ国立美術館」を手掛けたのはマリーナベイサンズの設計者としても知られるイスラエルの建築家、モシェ・サフディ。1920年代にカナダで活躍した風景画家7人組「グループ・オブ・セブン」の作品を多く所蔵する美術館であり、モシェ・サフディは外の景色を見ながらでも彼らのことを考えられるように中と外が一体化するデザインとしました。
近代的なコンクリート建築とローマの伝統建築を融合した造り。
▲ 「カナダ国立美術館」は近代的なコンクリート建築とローマの伝統建築を融合した造り。
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ガラスの屋根が目印。
▲ ガラスの屋根が目印。 HPはこちら
きっちり名所もローカルも見て、あっという間にオタワ4泊が終了。今回掲載のスポットを巡るには4泊でちょうどよかったんですが、大人の語学留学として長期滞在するにもよい街と思いました。というのも人が明るいですし、これまで旅した街のなかでトップクラスに接客レベルが高い。形式ばったホスピタリティではなく、自然と出てくる気遣いや優しさにはまってしまう。きっと本人が幸せだから余裕があるのかなと想像します。寒くても縮こまらない。

私はといえば寒いのが苦手だったくせに、マイナス30℃を体験したらマイナス15℃では「今日はあったかいですね」なんて余裕をかますほどに。オタワという街が心地よかったから調子が上がったのでしょう。ではでは、第2回はオンタリオ州で楽しむ「サウナ&スキー」についてお届けします。

※価格は1カナダドル98円で計算
HP/https://www.destinationontario.com/en-ca

● 大石智子(おおいし・ともこ)

出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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