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2021.10.12

アーティスト塚本暁宣「混ぜるな危険!を混ぜまくるようなアートを作りたい」

ピンクパンサーなどのキャラクターを独自にミックスした作品で人気を高めているアーティスト、塚本暁宣。そのポップな見た目の根底にある、塚本さんの創作への思いとは?

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写真/椙本裕子(YUKIMI STUDIO) 文/井上真規子 取材協力/小倉正裕(@oggyogubone)

遊ぶように描く。注目のアーティスト塚本暁宣

アートを購入して自宅で楽しむなどアートをより身近に感じる人が増えた今、アートシーンにも変化が起きています。自由でポップな画風によりストリートから支持を集めているのが、昨年、ニューヨークから帰国したアーティストの塚本暁宣さん。

身近なものや既製品をコラージュ的に組み合わせて描くスタイルは、見る人にもより自由なイマジネーションを与えてくれます。帰国後も勢いが留まることのない塚本さんに、アーティストとしての生い立ちや作品に込める想いを語っていただきました。
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「机やノートにいたずら書きしていたら、たまたま先生に褒められて本気になった」

── 塚本さんが絵を描くことに興味をもったきっかけは何でしたか。

塚本暁宣(以下、塚本) 高校生の頃、休み時間にいたずら書き感覚でノートや机に色んな絵を描いていたら、美術部の先生が「君の描く絵、面白いね」って褒めてくれたんです。作品として絵を描くつもりなんてまったくなかったし、そもそもリアクションがあるとも思ってなかったので驚きました。

当時はまだ若かったので、その言葉を信じて本格的に絵を描くようになったんです。その頃からだんだん絵の面白さに気づき始め、美術部には入りませんでしたが、先生には描いた絵を見せてアドバイスをもらっていました。

── 褒められたことが絵を描くモチベーションになったんですね。

塚本 確かに、先生のその言葉がなかったら、今も絵を描いてないかもしれないです。ただ、先生は上手い下手という視点で褒めたのではなくて「個性があって良いんじゃない?」という意味で言ってくれたと思います。実際、僕の絵は初めの頃はメチャクチャだったから。それでも、「自分の居場所はもしかしてここにあるのかな」って思ったんです。
── その後、武蔵野美術大学に入学されたとのことですが、高校から絵を描き始めたとなると受験勉強は大変だったのでは?

塚本 はい。僕はスタートが遅かったので、かなり苦労しました。日本の美大って、受験勉強のために技術的な部分を強化する必要があるんです。だから美大を受ける多くの人は、高校1年ぐらいから美術予備校に通ってデッサンを始めます。中には中学生から受験勉強を始める人もいますし。

予備校にいる生徒は写真かと思うほど絵が上手くて、それに比べて、自分は全然上手く描けなくてダメだな〜って落ち込みました。トラウマになったくらい(笑)。そんな風に絵の世界の厳しさを思い知って、結局一浪して合格しました。

── 日本の美大生は、みんな本当に絵が上手ですよね。

塚本 でも、デッサンを重視するのって日本の美大の特徴というか。美術に対する考え方は国によって違うんですけど、例えばアメリカではデッサンなんてむしろ上手いのが異常なくらい(笑)。

日本はデッサンの高い技術が要求されるから、勉強が嫌で諦めてしまう人もいるし、デッサンが上手くなきゃ絵を描けないと思い込んで、考えが凝り固まってしまう人もいる。少し偏っていると思います。それは、あまり健全ではないですよね。

とはいえ、アメリカの美術教育も適当なところがあるので、どちらか良いかは断言できません。大切なのは、自分に合った活動の場を見つけることだと思います。
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「ニューヨークでは、アメイジング!って褒められてばっかりでした(笑)」

── 美大ではどんな勉強をするのでしょう。

塚本 大学では版画と絵画を、大学院ではシルクスクリーンを勉強しました。シルクスクリーンはポップアートとの繋がりがすごく強いメディアなので、そこからアメリカのアートに興味をもつようになりました。卒業後は、友達と一緒に大学の近くにアトリエを借りて制作しながらのらりくらり過ごし、作品は一応ギャラリーでも展示してもらってましたけど、販売はほとんどできていませんでした。

── それから活動の場をニューヨークに移した決め手は何でしたか。

塚本 ニューヨークは当時から現代美術の中心地だったので、元々興味があって。学生時代に一度だけ遊びに行って、向こうの友人に美術館とか色んな場所を案内してもらったんです。その時に、いつかここを生活拠点にして制作できたらいいな、と思うようになりました。

日本に帰ってから、本格的にニューヨークに行くためにはどうしたらいいんだろうって本気で考え始めて、お金やビザなど色々越えなきゃいけないハードルをクリアするために動き出しました。で、渡米してからは、アーティストのスタジオのアシスタントのバイトを4年間しながら、自分の制作を続けて。二足の草鞋生活ですね。

── 現在の作風はニューヨークでの影響を受けていますか。
▲ 宮下パーク内のDAYZ(デイズ)にて開催された展覧会「Psycho Cubism」での作品。ピンク・パンサーを題材に、様々なモノを混ぜ合わせている。
塚本 そうですね。アメリカで色々な作品を見ていくうちに、グラフィティやグラフィックカルチャーに注目するようになって、自分なりに作品に取り込んでいきました。だからニューヨークでは、はじめのうちは落書きのようなものを描いていて。そこからだんだんキャンバスに描くようになって、キャラクターを使ったスタイルやキュビズムをミックスした今のような作風ができました。

── ニューヨークでは何度も個展を開いていて、高い評価を受けていたそうですが、自身としても手応えはありましたか。

塚本 アメリカ人ってネガティブなことはあえて言わない人が多いんです。だからひたすら、挨拶がわりに「アメイジング!」って言われていました(笑)。あとは、僕の作風がアメリカにフィットしていたのかな。日本より反応は大きかったですね。

── それはすごいことだと思います。帰国してから日本でも注目が集まっていますね。

塚本 ニューヨークに行く前と少し状況が変わっていて、日本でもちょっとしたアートブームが起こっていますよね。だから、アメリカにいる時と同じくらい僕の作品に興味をもってくれる人がいて、うれしいです。今は日本でもお客さんからいろんな反応をもらえるので、すごく楽しいですね。
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「落書きしているうちにキュビズムっぽいものができあがってきた」

▲ 最近ではパステルを使った作品も制作。軟らかいものと硬いものを組み合わせた独特のテクスチャも魅力。
── 塚本さんの作品は、キャラクターの使い方が独特ですよね。

塚本 キャラクターは昔から好きで、特にカートゥーンとか、アメリカのものを好んで見ていました。日本だとニャンちゅうやアシベみたいな、ゆるカワ的なキャラクターが好きで、おもちゃやぬいぐるみも家にたくさんあります。

── そうしたキャラクターをキュビズムと組み合わせたきっかけはありますか。

塚本 実は、最初からキュビズムというテーマがあったわけではないです。落書きしているうちにキュビズムっぽいものができあがってきて、ピカソっぽく見えてきて。それでピカソについて調べていたら、彼も意図していたわけでなく、デフォルメされた中にアニメキャラっぽい表情が生まれていたと知って、すごく面白いと思いました。そこから、あとづけで発展させたのが「New Cubism」のシリーズで、何でもミックスさせるっていうのがテーマとしてありますね。

── 色んなものをミックスさせる面白さは、作品からも伝わってきます。

塚本 本来接点のないものをミックスさせることで、何ができあがるかわからないというすごいワクワク感を感じるんです。「混ぜるな危険」を混ぜまくるみたいなのって最高に楽しい(笑)。だから、どんどん危険なものを混ぜていきたいなって思います。
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「アートは自由な遊び場であって欲しい」

── 何が創作のモチベーションになっているのでしょう。

塚本 展示会場でお客さんに見てもらって色んな考えを共有することが、自分の創作の源です。意見交換の中でお客さんから新鮮な視点をもらうと、また違う作品を作ろうというモチベーションにもなるし、すごく楽しい。それがあってはじめて作品が完成するという感覚です。あとは、単純に絵が上手くなりたいという思いもあります。

── 最後に、塚本さんにとってのアートはどんな存在ですか。

塚本 僕にとって、アートは自由な遊び場です。高校の机に描いた落書きに始まり、それからずっと遊びやいたずらをするような感覚で絵を描いてきました。勉強もしましたが、やっぱり本質はそういう硬いものではなく、公園の砂場のように誰でも参加できて、自由に楽しみながら鑑賞したり、意見や考えを共有したりできる場であって欲しいですね。

● 塚本暁宣(つかもと・あき)

1989年埼玉県生まれ。高校卒業後に油絵を始める。武蔵野美術大学油絵学科版画専攻、同大学院卒業後に渡米。四年間ニューヨークにてアートを学ぶ。2020年に帰国後、活動の拠点を東京に移す。
Instagram/aki.tsukamoto03

DAYZ(デイズ)

東京発世界行きのムーブメントをベースに、現在のカルチャーを切り取るというコンセプトの下、ウエアや靴から生活雑貨、アートに至るまでを取り扱うセレクトショップ。

場所/ミヤシタパーク サウス 3階
住所/東京都渋谷区神宮前6-20-10
定休日/無休
営業時間/11:00〜21:00(宮下パークに準ずる)
URL/https://dayzarchives.com/

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