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2021.08.04

会社のピンチを乗り越えるには? ビームス社長・設楽 洋のプラス思考

従来のアパレルの枠組みに留まらない大胆な戦略で、「ビームス」を大企業へ成長させた設楽 洋社長。インタビュー中編では、設楽流ピンチの乗り越え方などを伺います。

CREDIT :

写真/トヨダリョウ 文/吉田 巌(十万馬力)

「カッコイイ大人」の代表格である「ビームス」の設楽 洋社長。前編では社長自身が昔から守る「イイ男の三原則」などを教えてもらいましたが、今回は「ビームス」の成功理由についてググッと肉薄。

ピンチに対して設楽社長はどう乗り切ってきたのか? カッコイイ大人となるためのヒント満載でお届けします!

会社にいるより社会にいろ!

—— 設楽さんとビームスの強みは「時代の流れに乗ってきたこと」とおっしゃいましたが、そのために心掛けていることはありますか?

設楽 まず、人と会う手間を惜しまないというものがあります。例えば、コロナ以前の僕は毎日膨大な数の人と会ってきました。それも、ありとあらゆる業界の人たちと。9割近くがファッション業界以外の方々です。業界ごとにトレンドがあって、情報と気付きを得ることで未来を見据えることが出来る。そこで溜まったものが発想のヒントになっている、という感じですね。

—— 前回、ご自分のことを直感型の人間だとおっしゃいましたが、その背景にはそれだけ膨大な人と出会いがあるわけですね。

設楽 僕は「会社にいるより社会にいろ」とスタッフにも言っています。「ビームス」は他のセレクトショップに先駆けていろんな異業種コラボをしてきましたが、それはひとつの成果なのかもしれません。ちなみに今の「ビームス」の守備範囲は“カップ麺から宇宙まで”。コロナで業界全体が大変な中でうちが元気そうに見えるのも、それまで会った人たちとの企画が今進んでいるからです。

逆に言うと、このコロナ禍で人に会えなかったブランクがこれから先どう出るかが心配です。僕自身この一年ちょっとの間、会った人は以前の百分の1ぐらいになりました。それだけ毎日いろんな人に会っていた。レセプションやパーティー、イベントの類いにも積極的に顔を出していました。それが一切なくなったわけですから。
ただその分、Twitterやインスタ、クラブハウスといったSNSを活用しています。最近はYouTubeにもどんどん出ています。

—— 普通のオヤジはSNSを面倒くさいと思いがちです。設楽さんがそれをされているのは意識的、それとも新しいものが昔から好きだからでしょうか?

設楽 確かにこの歳でインスタもTwitterもクラブハウスもやってる人はそんなにいないかもしれない。僕は新しいものが昔から大好きなんです。SNSは多少面倒臭いと思うこともあるんですが、そういうことを言っていたら面白いことはできない。本当に億劫に感じたとしたら、引退する時期でしょう。
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僕は喜ばせフェチ。だからモテるんですよ

—— 設楽さんのインスタを拝見した時、あの場所を訪れた後、あそこもここも行ったのかと知ってびっくりすることもあります。

設楽 ◯◯からの、◯◯からの、◯◯からの……でしょ(笑)。恐らく、僕はうちのスタッフの誰よりも遊んでいるんじゃないかな。それから、僕は毎日知り合いの誕生日にFacebookのダイレクトメッセージでお祝いメッセージを送るのを習慣にしています。知り合いが多いので1日あたり20人くらいになるのかな。やっぱりメッセージが届くのってうれしいことだと思うので、ひと言でも伝えるようにしています。これも大事なコミュニケーション。

—— ものすごくマメですね! 設楽さんがそういうパワーを保てるのはどうしてでしょう?

設楽 単に人を喜ばせるのが好きなんですよ。喜ばせフェチ。だからモテるんじゃないですかね。皆さんは恐らく、僕のことをそれなりにモテるオヤジと想像されるでしょうが、その10倍はモテていて、100倍はいやらしいですよ(笑)。

—— そういうことを堂々と言えるのもカッコいい。
設楽 スカすのが嫌いなんです。ビシビシに決めるのが苦手で……。そもそも僕は社長だし、年齢も上だし、初対面の人は相当とっつきにくいと感じると思うんです。それを少しでもニュートラルな気持ちで接してもらいたい。年齢の差とか立場の差とか意識させずに。

そのためには僕自身がオープンマインドでなければならない。「タラちゃん」と呼ばせているのもそうです。ウェルカムな姿勢でいると自然に情報が集まってくるんです。

—— 設楽さんは人と会うのがエネルギーになっている感じもします。

設楽 すごいエネルギーになっています。あと僕は“人たらし”。女ったらしではなくね(笑)。それが僕の人生にプラスの連鎖をもたらしてきたとも思っています。

—— 企業のトップとしてストレスを感じることはありませんか。

設楽 もちろん、ストレスも悩みだってありますよ。でも、いつからか「抜く」方法論を覚えた。悩みが溜まったら「まいっか」と流そう、って思う癖をつけたんです。そうでないとマイナス思考にハマって、下手すりゃ鬱になって閉じこもってしまう。

それに、ひとりで考えていても出口は見つからないから。人と会うことで解決につながったり「あ、あの人がいたじゃん」と思いついたりできる。そうやって人に随分助けられてきました。逆に言うと、自分も知り合いが困った時にはそういう存在になりたいと考えています。
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落ち込んだときは、“ピンチはクイズ”と考える

—— 設楽さんの苦しかった時のことをもう少し詳しく聞きたいですね。

設楽 いっぱいありますよ。例えば80年代後半から90年代初めに渋カジが大ブレイクした時には、紺ブレがとても売れました。作れば作るだけ売れた。そうなってくると当然他社も追従してきますよね。で、ある時に人気がパタッと止まった。倍々ゲームで紺ブレを作っていたので、ものすごい在庫を抱えてしまった……。安くしても売れないし、あの時は店が潰れるんじゃないかと思いました。

結局何年もかかってその時のダメージを乗り切ったんですけど、改めて「引き際が大事」ということを思い知らされました。センスというのは引き際だなと。でも、こういうことはそれ以前にもちゃんと経験していたはずなんですけれど……紺ブレブームの時は調子に乗ってしまったんですね。

—— それ以前というのは?
設楽 80年代初頭、ブランド名やショップ名を胸にデカデカとプリントしたロゴトレーナーが大ブームでした。それがバカ売れしたことで「ビームス」も軌道に乗ったんですが、やがて店の売上の半分がロゴトレーナーという状態になってしまった。うちはインポートのセレクトなのに、このままいくとキャラクターショップになってしまうと。でもやめたら店の売り上げの半分は吹っ飛ぶ。……で、どうしようか悩んだ結果、「ビームス」はロゴトレーナーをやめたんです。

後で考えてみると、あの時にやめたお店だけが今生き残っているんですね。ロゴトレーナーに頼っていたところは、トレンドが終わった時に相当苦しんだ。あそこで「ビームス」はセレクトという色合いを鮮明にできたとも思っています。そうでなければ潰れていたかもしれない。

それなのに紺ブレでは完全に引き際を見誤った。売り上げの陰で早いお客様が去ってることに気づかなかったんです。「ビームスはいまだ紺ブレ売ってるんだ。紺ブレなんて他でも売ってるじゃないか」という声に気づかなかった。そういうお客様がすごく大事なのに、どんどんマスに降りて行ってしまって……。

—— そういうピンチを乗り切って今の「ビームス」があるわけですね。

設楽 もう本当にピンチだらけでした。よくピンチはチャンスだっていうじゃないですか。プラス思考の僕でもさすがに本当に落ちた時にはチャンスだと思えないですよ(笑)。そこで発想を変えてみたんです。チャンスじゃなく、「ピンチはクイズだ」とね。これこそプラス思考ですね。おかげさまで、今では自分のマインドを簡単にプラス方向に持ってける体質になりました。ちょっとしたコツがあるんですよ。

—— とても気になります! 次回はぜひ、そのあたりことを教えてください。

後編に続きます。

● 設楽 洋(したら・よう)

ビームス 代表取締役。1951年 東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、1975年 株式会社電通入社。プロモーションディレクター・イベントプロデューサーとして数々のヒットを飛ばす。1976年 「ビームス」設立に参加。1983年 電通退社。自らをプロデューサーと位置付け、その独自のコンセプト作りによりファッションだけでなく、あらゆるジャンルのムーブメントを起こす仕掛人。セレクトショップ、コラボレーションの先鞭をつけた。個性の強いビームス軍団の舵取り役。
ビームス公式サイト

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