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2021.08.02

ビームス社長・設楽 洋「波乗り感覚で仕事をしてきました」

「ビームス」を日本が誇るファッション企業へと成長させ、セレクトショップという概念を定着させた設楽 洋社長。その成功の秘訣は? 企業のきっかけは? ロングインタビューを敢行しました。

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写真/トヨダリョウ 取材・文/吉田 巌(十万馬力)

価値観が多様化している現在ですが、「カッコいい大人」の定義は、実は昔からそんなに変わらないのかもしれません。例えば、目標に向かって挑戦を続ける人には、いつの時代も周囲を惹きつける魅力があるもの。

今年で創業45周年を迎えた「ビームス」の社長である設楽 洋さんは、そんな大人の代表格。70歳を迎えてもなお挑戦し続けるのはなぜか? そしてそのバイリタリティの源は? カリスマへのインタビューを3回に分けてお届けします!
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熱い・強い・守る。これがいいオトコの三原則

—— 設楽さんは日本にセレクトショップという概念を定着させ、その後も従来のアパレルの枠組みに留まらない大胆な戦略で「ビームス」を日本を代表する企業へと成長させました。そんな設楽社長の挑戦の姿勢をとてもカッコいいと思うのですが、まずは設楽さんご自身が考えるカッコいい大人の定義を教えてください。

設楽 これは自分のポリシーでもあるのですが、「決して威張らず、ヘコヘコもしない」。そんな人をカッコいいなと思いますね。上の人に対しても下の人に対しても同じような態度で臨むというかね。

—— 逆の人はいっぱいいますよね。下には威張ってて、上にはヘコヘコしている人。

設楽 それが一番カッコ悪いですね。あと自分の中では昔から「いいオトコの三原則」というものがありまして。それは、“熱い・強い・守る”の3つの要素を兼ね備えたオトコ。今でもそこは変わりません。ちなみに「ビームス」は“ハッピーライフソリューションカンパニー”をコンセプトにしています。僕が「いいオトコの三原則」を守っていれば、そこに向かってスタッフみんなのモチベーションも高まるんじゃないかと信じています。

—— 部下を育てることは、多くのビジネスマンが悩むところです。
設楽 僕は「ビームス」という企業のトップ。トップの役割は“夢を与えること”だと考えています。具体的な指示をしたり、方法論を教えたりすることよりも、情熱の芽を植えたり、心に火をつけたりすることの方が大切。そのためには上から目線ではなく、常に1人の仲間として接すべきでしょう。僕はよくファミリーという表現を使いますが、そういう意識でいるトップって我ながらカッコいいかなと思いますね(笑)。

—— 設楽さんにそう接してもらっても、スタッフのほうが恐縮するんじゃないでしょうか。若い人は特に。

設楽 僕の気持ちが若いから大丈夫です。まぁ、年齢的には完全にジジィなんですけれども、歳をとることは肉体が老けることで、魂まで老けることではありません。実際、若い人たちから「設楽さんと話していると親父より上の年齢とは思えない」とよく言われますよ。「ひとつかふたつ上の先輩と一緒にワイワイやってるみたい」なんて(笑)。僕はそういうニュートラルな関係の良さや強さも伝えていきたい。

—— 歳をとっても魂まで老けない……今回のインタビュー、のっけから名言続出ですね。

設楽 これは女性に対しても同じこと。はっきり言ってかなりモテるオヤジです(笑)。
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野心が理念に変わる経営者って、意外と少ないんです

—— トップの役割は夢を与えることとおっしゃいましたが、「ビームス」はいまや国内外に170店舗を展開する大企業。たくさんのレーベルや部門があり、従業員も多彩なキャラクターが集まっていると察します。そのすべてに設楽さんの思いや情熱を伝えることは難しいと思うのですが。

設楽 小さい組織のときは僕の気とパワーを伝えやすかったけれど、ここまで大きくなってくるとたしかに難しいものがあります。でも極力伝える。 そのために、伝える機会を多くしたいと思っていますね。コロナ禍の今は多少自粛していますが、例えば地方の店がオープンするとき、ウチは社長以下役員が全員揃ってオープニングに参加することにしてるんです。

大抵そのあとは現地のスタッフと食事会や飲み会となり、ドンチャン騒ぎをやる。こうすることで僕の熱を伝えるようにしています。ちなみに同業でこれをやってるところはほとんどない。大型のテナントビルができた時は競合のお店も同時にオープンするわけですが、社長や役員が駆けつけているのを見たことはありません。
—— 設楽さんのようなスタイルの大人は今までいらっしゃいましたか? お話を伺っていると設楽さんは唯一無二のキャラクターなんだなという気が早くもしてきました。

設楽 いや、いましたよ。数は少ないですけれども、私の考えに近い人もいました。ちょっと先輩では北原照久さん(株式会社トーイズ・株式会社トイズプランニング代表取締役)がまさにそういうタイプ。子供心を忘れずにもっていて、人を楽しませることに全力。すごい大家なのに威張りもしないし、ヘコヘコもしない。そういう先輩がたまにいました。ただ反面教師の方が多かったのは、確かだと思う。

—— 経営者として参考にされた方は?

設楽 僕は他の経営者とは基準が違うようなんだけど……、若い頃に経営者になった人は誰しも「野心」をもっているものです。例えば、シェアナンバーワンになるぞとか、売り上げ日本一になるぞか、目標何千店舗とか。そういうことが成功のカタチだと信じている人は多いけど、でもそれが「理念」に代わる人って少ないんですね。

でも僕の考えはちょっと違っていて、日本一や世界一の売り上げを誇る企業になるよりも、日本一、世界一、周りが笑顔になるような会社でありたいし、人物でいたいなと思ってるんです。
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ビームスの経営戦略は波乗りの感覚に近い気がします

—— 設楽さんが「ビームス」を起業されたとき、どんな目標を掲げていたのでしょうか。野心はありましたか?

設楽 1975年に電通に新卒入社し、そこで働きながら76年に原宿の6.5坪のお店で「ビームス」をオープンしたわけですが……全然野心はなかったですね。単に好きなことをやりたいというだけで。当時、僕らの世代はアメリカのファッションやライフスタイルに強い憧れを抱いていた。でもそういうものが手に入らなかったから、自分たちで集めて売ってみようと。まぁ、趣味の延長ですよね。今だったらネットで始めたんでしょうかね。

—— 当初は副業的にスタートさせたんですね。
▲ 「ビームス」1号店の様子。衣類のほか、生活雑貨を取り扱うところに、現在の“ハッピーライフソリューションカンパニー”につながる価値観がすでに息づいています。
設楽 そうそう副業といえば、当時の局長に呼ばれて「お前、ビームスとかいう店をやってるだろう? ウチは副業禁止だぞ」って問い詰められたんですよ。そこで僕は「副業とはそっちからも収入を得ることです。僕はお金を注ぎ込んでるだけなんだから、これは趣味でしょ」と言い逃れた(笑)。最初は本当に注ぎ込むばっかでね。だから最初の7〜8年は電通のサラリーマンと「ビームス」の両方やってたんですよ。

—— ずっと二足のわらじでいくと思っていたんでしょうか。それともゆくゆくは「ビームス」1本でいくと考えていたんでしょうか
設楽 電通の仕事も自分に合っていましたし、ある程度両方を続けられればいいなという感じでしたね。今もそうですけれども、僕は割と直感主義で、いろんなことを「波乗り」的にやってきた。それは今に続く「ビームス」の特徴でもあり、弱点でもあると考えています。

「ビームス」の今までの出店戦略や、新たな部門を始めた時のことを振り返っても、自然発生的なものばかり。そもそも、ウチが76年にオープンしたときは西海岸的な品揃えだったんです。でもトレンドが東海岸に移ったら、プレッピー文化の影響を受けた「ビームスF」を興した。その後、早い人たちがファッションのルーツはヨーロッパにあることを意識しはじめた時には、「インターナショナルギャラリー ビームス」をスタートして……。

レディスを始めたのもそうです。メンズしかやってないのに、女性のお客様がやたらウチにメンズライクなアイテムを買いに来るので、だったら本格的にやってみようと。すべてが自然発生的なんです。

普通のアパレル小売りは、ひとつのことが成功すると、それを武器に何店舗にも広げて何十億を狙うぞとなるもの。でもウチはそうじゃない。今の時代にはこういうものもありだよねという感じで新しいことに次々と挑戦してきたんです。

—— 時代の流れに乗ってきたということですね。

設楽 そうです。時代の流れに乗って、他の店よりいろんなものに手を出してる。だから、どんな流行りが来ても強いんじゃないかなと考えています。もっとも、いつもその流行りの一番じゃなく、二番か三番目にいるわけですが(笑)。

中編に続きます。

● 設楽 洋(したら・よう)

ビームス 代表取締役。1951年 東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、1975年 株式会社電通入社。プロモーションディレクター・イベントプロデューサーとして数々のヒットを飛ばす。1976年 「ビームス」設立に参加。1983年 電通退社。自らをプロデューサーと位置付け、その独自のコンセプト作りによりファッションだけでなく、あらゆるジャンルのムーブメントを起こす仕掛人。セレクトショップ、コラボレーションの先鞭をつけた。個性の強いビームス軍団の舵取り役。
ビームス公式サイト

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