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2021.07.30

■松井玲奈(役者・小説家)後編

松井玲奈「私、“面倒くさい”人です」その理由とは?

挑戦し続ける「カッコいい大人」たちをクローズアップする今回の特集。アイドルを卒業して役者として着実にステップを登りつつあるなか、一昨年には小説家としてデビューして話題となった松井玲奈さんに話を伺いました。その後編です。

CREDIT :

文/相川由美 写真/岸本咲子 スタイリスト/佐藤英恵(DRAGON FRUIT) ヘアメイク/白石久美子

2015年、24歳の時に7年にわたるアイドル活動を終了し、その後は役者として数々のドラマや映画、舞台でも活躍。一昨年には小説家としてデビューして話題になるなど、次々と「我が道」を広げながら進んできた松井玲奈さん。

前編では小説を書くことの意味や作家としてのスタイルについて伺いました。後編では役者として大人として目指す方向性と、この世界で「生き残る」ための決意について語っていただきました。
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座右の銘は「生き残る」。その真意とは

── アイドルグループを卒業して役者業を活動のメインとすることもひとつの挑戦だったと思いますが、その時はどんな覚悟がありましたか?

松井 もともと芸能界に入った理由が、「お芝居がしたいから」で、それは私の子どものころからの夢だったんです。だから、自然と次のステップに進んでいきたいな、という気持ちで卒業するという選択をしました。

── では選択は自分自身で?
 
松井 はい。そういう人生の選択をする時は、基本的に自分で判断することが多いです。お芝居のお仕事で、例えば「この作品はすごく大変そうだけどどうする?」みたいなことをマネージャーさんに相談することはありますけど、基本的にはぜんぶ挑戦したい。

日常生活でも、夜、寝る前とかに「明日は絶対、チャーハンを食べる!」みたいな(笑)。突発的な自分の感情で決めることが多いんです。それで失敗する時もありますね。このお店に行きたいって衝動で動いて、電車に乗っている時に調べたら「あ、休みだった」とか。気持ちだけが先走っていたり、作ろうと思っていた料理の材料が足りなかったとか(笑)。
── 日々トライ&エラーがあるんですね(笑)。今は、子どものころから憧れていた役者の仕事ができている手ごたえはありますか?

松井 「やれていてうれしいな」と思いながらも、「いつやれなくなるかわからないな」という気持ちがすごくあります。もちろん、一瞬一瞬で自分が納得するものを表現するようにしているんですけど、いつも崖っぷちにいるような気持ちです。

── そう言えば「生き残る」が座右の銘だそうですね。生き残るとは、松井さんにとってどういうことですか?

松井 「アイツ消えたな」って言われないっていうか(笑)。必要としてもらえないと、本当にお仕事ができないので。個人「松井玲奈」としては生きていけるんですけど、表に出る側の「松井玲奈」としては求められなかったら消えていくしかないので。それはまだまだイヤだなと思うんです。

お芝居に出てくる登場人物って、必ずしも10代、20代ばかりじゃなくて、50代、60代、70代だったり、本当に幅広い人たちが私たちと同じように物語の中で生きているので、私もその中でいくつになっても生きられる役者でいたいと思って、「生き残りたい」です。
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ぜんぶに勝ちたいわけではなくて、自分の好きなものに勝ちたい

── そのガッツは、アイドル時代に培われたものが大きいですか?

松井 私、芸能界に入るって決めた時から、ずっと「生き残りたい」と思っていたんです。そもそも最初からもう競争社会で、「ライブのステージに立てるコと立てないコがいる」みたいにふるいにかけられるところから始まって。

私はいずれお芝居のステージに立ちたかったので、そのためにもまず第一関門を突破して、目立たなくちゃいけないし、その中でさらに上にいかなくちゃならない。ある意味、トーナメント戦を勝ち残っていかなきゃ「見つけてももらえない」のは分かっていたので、その気持ちがもとからあったんだと思います。

でも、例えば事務所に「お芝居がやりたいです」って何もない状態で入っていたとしても、オーディションをたくさん受けさせていただいて、その中でもひとりで生き残っていく必要があるわけで、経験したものは違えど、考えることは一緒だったんじゃないかな、とも思います。

── 負けず嫌いの性格は元来、子どもの頃からもっていたものですか?

松井 あぁ、そうですね(笑)。負けず嫌いは昔からでした。でも、興味がないことは本当にどうでもよくて、全部に勝ちたいわけではなく、自分の好きなものに勝ちたいというか、自分が満足する結果を残したい、みたいな感じですね。

だから、テストも国語は絶対100点を取りたいけど、英語は嫌いだから0点でもOK。トータルで平均点超えていれば赤点じゃないからいいでしょって。好きな国語と社会と理科だけ頑張って、あとのテストは捨てた、みたいな高校時代でした(笑)。不真面目です。
── まわりの人たちからは「真面目」と評されることが多いですよね?

松井 どうでしょう。「面倒くさい人だな」と思われているんじゃないでしょうか。よくそう言われます(笑)。気まぐれというか「これはやりたいけど、これはやりたくないからやらない」とか。「これはちょっと興味がないから大丈夫」とか。それがけっこう激しかったりするので。自分の好きなものだけに本当に熱量を注いでる感じです。
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30歳。特に感じることもなく、粛々と歳を重ねていけたらいいなと

── ところで役者として、ご自身が書かれた小説の登場人物を演じたいですか?

松井 いえ、やりたくないです。書き始めた時からそう思っていました。「松井玲奈が書いた小説」だと思って手に取ってくださる方も多いと思うんです。本から離れている方が多い中で、それが読書のきっかけのひとつになれることはうれしいんですけど。

私自身はほかの作家さんと同じように……というのはすごく難しいことですが、書いた人のことを考えずに物語に集中してもらえるのがうれしいと思っているんです。よく感想とかでも、「この物語の主人公は玲奈ちゃんだと思って読んでました」とか言っていただけて、それは読み手側の自由なので、まったく反論はないんです。

ただ、何か映像だったり、ひとつの明確な作品になる時に、そこに「私」が入ってしまうのはノイズにしかならないと思っています。まったく別の方たちにいいようにしてもらえるのが一番うれしいですね。

── 役者の仕事と、小説を書くことは並行して一生の仕事としていきたいですか?

松井 そうですね。どちらも、演じさせていただける、書かせていただける場所がある限りは頑張ってやっていきたいです。どちらも年齢制限がないという素晴らしいお仕事だな、と思っているので。その時に自分が感じたものをお芝居で表現できたり、その時に自分が経験して得たものを物語として執筆できたらなと思っています。
── 7月27日には30歳になられますが、どんな思いがありますか?(※取材は誕生日以前)
松井 特に何も感じてはいなくて(笑)。え~と……そうですね。粛々と歳を重ねて、自分の得意、不得意を理解して人生に生かしていけたらいいな、という気持ちでいます。例えば、お芝居だったら、こういう役は自分に合っているのかもしれないと思ったり。逆に、やってみるけどうまく乗らなくて、まだ自分には伝えきれない感情があるんだなと考える機会にして、いつかできる時がくるかなと思ったり。

日常生活では、苦手なことは本当にやりたくないので、たとえば、極端に人の多いところとかは行かなかったりします。基本的にひとりが好きなので(笑)。自分のペースを保てるようでいたいなと、わがままに思っています。外では「仕事だから」っていろいろとやれるぶん、家では何もしたくない感じです(笑)。

── 小説を拝見すると、松井さん自身、料理が得意な片りんが垣間見えますね?

松井 全然、全然。そんな得意ではないです(笑)。お料理することはストレス発散というか、気持ちを整えたりするうえでとても大事だし、日常的に料理はするんですけど、おいしいか、おいしくないかで言うと、私よりももっと上手な人はいっぱいいると思うので、そんなそんな(笑)。自分のメンタルの安定のために料理している感じです。
衣装/トップス2万6400円(ランバン オン ブルー/レリアン)、スカート2万7500円(オットダム/ストックマン)、サンダル1万4850円(ダイアナ/ダイアナ 銀座本店)、ブレスレット1万1000円(ヴァンドーム/ヴァンドームヤマダ)。その他はスタイリスト私物。
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自分より若い世代に、ちゃんと手を差し伸べられるような大人になりたい

── 最後に、今の松井さんが思う、「カッコいい大人」とはどんな大人だと思いますか?

松井 大人になるって、「責任をもつこと」だと思っていて。私自身はどの年齢も、自分が思い描いていたよりはずいぶん精神年齢が子どもだな、と感じるんです。だから自分がやることに責任をもって行動しないと「大人なのに」って言われちゃうなと思って。

やっぱり自分より若い人たちから、「カッコ悪い大人だな」っていうふうに見られちゃうと、ほかの大人たちにも迷惑がかかるじゃないですか。そこは気をつけようと(笑)。責任をもってひとつひとつのことを行動するという基本的なところに立ち返らないといけないな、と思ったりします。

今しゃべっていて感じたのは、自分より若い世代の人たちをガッカリさせたくないというか、大人に対しての失望を感じてほしくなくて。それは自分が子どもだったり、学生時代に、「大人たちにしゃべったことがわかってもらえなかった」、「意志の疎通がうまくいかなった」ことで傷ついたことが何回もあって。だからこそ、ある意味、カッコいい大人でありたいというか。自分より若い世代の人たちに、ちゃんと手を差し伸べられるような、そういうアンテナを持った人になりたいですね。

そう思うからこそ、自分が想像している大人像みたいなものに、ときにはちゃんと近づいていかないといけないな、と。いつまでも気持ちが10代前半のもうすぐ30の女はマズいな、と(笑)。

── でも、松井さんは丸く収まることをせずに、いい意味で常にトンガっているところがカッコいい大人だな、と思います。
松井 私、トンガってますか? ずいぶん丸くなったって言われるんですけど(笑)。できるだけ普通に普通に。型の中にハマりに行きつつも、やっぱりハマり切れない部分が溢れているんだと思います(笑)。それをまわりの人たちが個性として見てくれているというか。

みなさんにも「真面目でおとなしそう」と言ってもらえるんですけど、お芝居でも小説でも、そこからバーンとはみ出るものがあるから、「おもしろい」と言っていただけるのかなと。今、おっしゃっていただいたような、ある意味、トンガっている部分は折らずに大事に伸ばしていかないといけないなっていうのは常々思ってます。基本的には社会のはみ出しものなので(笑)。

●松井玲奈(まつい・れな)

1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。2008年、SKEの第一期生オーディションに合格して芸能界入り。ドラマ『海月姫』『まんぷく』『エール』、映画『21世紀の女の子』『今日も嫌がらせ弁当』『ゾッキ』、舞台『新・幕末純情伝』『神の子どもたちはみな踊る after the quake』など多くの作品に出演。現在ドラマ『プロミス・シンデレラ』(TBS)出演中。19年4月に初の小説集『カモフラージュ』(集英社刊)を発売。即重版が決まるなど話題に。21年1月には2冊目の小説『累々』(集英社刊)発売。セフレ、パパ活など現代的な要素を盛り込んだ恋愛小説集として大きな評判となっている。

『プロミス・シンデレラ』

主人公の桂木早梅(二階堂ふみ)は、無職で無一文、宿無しという崖っぷち状態のところを金持ちのイケメン男子高校生・片岡壱成(眞栄田郷敦)に拾われ、彼の家である高級老舗旅館「かたおか」へ。「ただで泊めるかわりにリアル人生ゲームをしよう」と持ち掛けられる。実はその旅館の跡継ぎ・成吾(岩田剛典)は早梅の初恋の人だった。思わぬ再会からの恋の行方が気になるラブコメディ。松井さんは「かたおか」に出入りする人気芸者の菊乃を演じる。「まわりの人たちに“あいつ蛇女みたい”と言われる人なので、湿り気があってまとわりついてくるような女性なんだな、と思って。仕草や目線もどこか粘着質な感じを出して演じてます(笑)」と松井さん。「早梅の恋敵として暗躍していくので見ていただけたらうれしいです」。TBS系・火曜22時~放送。

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