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2017.06.23

ホイチョイの馬場さんに聞きました「ところで、昭和はモテますか?」

『ロマンスは「昭和」の薫り』というテーマを考えついたとき、まず我々の頭をよぎったのはホイチョイ・プロダクションズだった。ホイチョイといえば1980年代、我々にモテる作法のイロハを教えてくれた最初の先生。“昭和”ד恋”がお題となれば、ハズすわけにはいかないだろう。ということで、普段は滅多に表舞台に顔を出すことのないホイチョイ・プロダクションズ代表、馬場康夫氏に無理矢理インタビューを依頼。さてさて、いったいどんな話が飛び出すのだろうか?

ホイチョイ・プロダクションズ 馬場康夫氏インタビュー

左●『新 東京いい店やれる店』2012年刊行(小学館) 右●『東京いい店やれる店』1994年刊行(小学館)
左●『新 東京いい店やれる店』2012年刊行(小学館) 右●『東京いい店やれる店』1994年刊行(小学館)

無理無理。屁の突っ張りにもならないですよ(笑)

前田陽一郎(web LEON編集長兼LEONブランディングマネージャー、以下、前田)
今週のLEON.jpは『ロマンスは「昭和」の薫り』と題して、昭和をモテるキーワードとして紹介していこうと思っているんですが、率直にどう思われます?
馬場康夫氏(ホイチョイ・プロダクションズ代表、以下、馬場)
 昭和でモテるのは無理でしょ〜(笑)。だって、それはいわば知識でモテようってことでしょ。いまの若いコにそれは無理。
前田
やっぱり、馬場さんにインタビューをお願いしようと決めたときから、まず否定されると思ってました(笑)
馬場
オトコも40、50になると、意識していない人でさえどんどんのプライドの重ね着をして、知らず知らずのうちにプライドの塊になっています。でもね、いいオンナの前では知識に裏打ちされたオトコのプライドなんか屁の突っ張りにもならない。なんの役にも立ちませんよ。

多くの場合、僕らがやっていることは同性を喜ばせるだけですからね(笑)。もちろん、40代後半の女性が相手なら話は別。オトコの知識も役に立つと思います。そこにはいつまでも“勉強したい”人たちがいますから。でも、20代30代の女性には通用しないでしょう。
前田
ということは、馬場さんは昭和をインテリジェンスのあった時代だと仮定されているんですね?
馬場
まあ、そうですね。
前田
我々がなんでいま、わざわざ昭和という言葉を持ち出したかというと、若いコたちにとってそれが新しいものとして映るんじゃないかと思ったからです。

平成に入って29年、平成生まれの彼ら彼女らはいま、昭和をノスタルジーとともにばっくりとひとつの塊として捉えているように感じます。そのとき、実際に昭和を体験した大人の話は新鮮で面白いんじゃないかと思うんですよ。
馬場
でも、ひと口に昭和といっても64年もあって。戦前と戦後なんて、価値観の根底から違うでしょ。僕の世代から見ても1968年の前と後では全然違う時代ですからね。そして1970年代後半からも全然違う。1968年から1975年頃というのは、団塊の世代による学生運動の時代です。

そこから1978年くらいまでのグラデーション時期を含め“金持ちは悪である”という考えが世の中を覆っていました。いまとまったくおんなじですよ。で、僕らはそれにもの申した世代。いつの時代もそうですが、すぐ上、すぐ下というのは気に入らないんです。

だから、僕らはひとつ上の世代よりもむしろ“昭和ひと桁”の人ほうが面白いと感じましたし、実際に面白い人がいっぱいいました。
前田
ちゃんと遊んでいた人たちですね。
馬場
そうです。あの人たちは物心ついてから終戦を迎えたので、大人たちの“掌返し”を多感な時期に目の当たりにしています。だから「世の中なんでもアリだな」と思っていたと思いますよ。その思いたるや大変なものだったでしょう。

そういう人たちだからこそ生き方が自由だし、とってもチャーミングだった。僕らなんか一生かかっても真似できないな、という遊び方をしていましたね。しかも、本当の豊かさは実はお金じゃないということを知っていた人たちでした。
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大切なのはお金じゃなくて知識です

前田
本当の豊かさはお金じゃない。馬場さんがずっと大事にしているのも、実はそこですよね。
馬場
そうです。例えば、僕はカードゲームが好きでよく仲間とポーカーなんかをやって遊ぶんですが、30分に1回カードを破って捨てるんです。で、新しいのを開ける。カードって1箱650円くらいで買えますから5時間遊んで6500円。

それを6人くらいで割ったら、ひとりあたり1000円ちょっとじゃないですか。でも30分に1回ニューカードを開けるのって、めちゃめちゃ気持ちいいですよ。その昔ラスベガスでそんな様子を初めて見たとき、なんて格好いいんだろう、なんて贅沢なんだろうって思いました。

でも、これってお金の問題じゃないですよね。大切なのはそれを知っているか知らないか。要は知識なんですよ。だまされたと思って一度やってみてください。すごく贅沢な気分になれますから。
前田
贅沢はお金じゃなくて知識です…なんかLEONみたいですね(笑)
馬場
バブルの時代に勘違いした人たちがいて、お金を使えばいいだろうって風潮になってしまったんですが、本当はそうじゃない。僕らはいろんなところに行ったり、本を読んだりして知識を身につけていったんです。

世の中のスクラップ&ビルドを行った団塊の世代の人たちからは、カラッポの世代なんていわれたりもしましたが、ただ“ストック”を伝承するだけの世代も絶対に必要だと思っています。
前田
だとしたら、20代後半くらいの平成女子に対してそれを上手く使う手はないんですか?
馬場
彼女たちはある意味イノベーティブな世代。団塊の世代もそうですけど、そういう人たちに知識のストックは通用しないんです。
前田
興味がない、と?
馬場
いや、興味がないを通り越して“悪”だと思っていますよ、きっと。その人たちにいわせれば「SNSのない世界に生きてたんですか? あり得な〜い!」で終わり(笑)
前田
ということは、そういう世代と対峙しようと思ったら、上手にバカにならなきゃいけないってことですね。
馬場
そうそう。情報を知識としてストックするのではなく、その場その場で臨機応変に使って流していく“フローカルチャー”の人から見れば“ストックカルチャー”は本当に鬱陶しい。まさに余計な鎧です。そんなものはスポーツするのに一切役に立たないから、脱ぎ捨てるしかないですね(笑)
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格好いい! の先があるかないかが最大の違い

前田
では改めてお伺いしますが、馬場さんにとって昭和って何ですか?
馬場
繰り返しになりますが、昭和ではくくれないですね。1968年を境に前と後では全然違う空気感でしたし、1978年以降もまた違いますから。
前田
とはいえ、いま若い女性の間では、新しくできたトランクホテルが話題になっている一方、お座敷で食べる老舗のすき焼き屋さんみたいなところが人気のあるのも事実です。彼女たちにとってはそこに、伝承されていないがゆえの新鮮味を見ているんじゃないかと。

そして、彼女たちを彼女たちの知らないところに連れて行ってあげられるところにこそ、我々大人のアドバンテージがあると思うんです。例えばこの前、25歳の女のコにスタイルカウンシルを聴かせてあげたんですね。すると「超カッコいい〜!」となったわけですよ。

ということは、僕らがもっているものをポンと投げれば、それは武器になるんじゃないか、と。
馬場
もちろんですよ。もちろん、それはあります。例えばすごく古くて格好いい昭和の名店に若いコを連れて行けば「超格好いい!」ときっと言いますよ。それはきっと心からの言葉でしょう。

でもそれ以上は何もない。僕らが若い頃、同じように連れて行ってもらったときも格好いいと思ったんですが「じゃ、ここってなんで格好いいんだろう?」とか「格好いいからもっと知りたい」となって、いろいろ調べた。すると、そこからまたいろんなことがどんどんつながっていく。

というふうにして知識のストックが増えていきました。でも、フロー世代は「格好いい!」で終わり。そこがストック世代とフロー世代の決定的な違いだと思います。スタイルカウンシルの音が格好いいと感じても、その後ろにあるものはたぶんどうでもいいんですよ。
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僕なら昭和の名店よりもトランクホテルに行きますね

前田
もちろん僕も後ろ側までわかってほしいですよ。でも、オトナが無理して若い子たちの間で流行っている店に行くよりも、自分たちのフィールドで戦ったほうが強くないですか?
馬場
いやあ、僕だったら昭和の名店よりもトランクホテルに行くな。
前田
そのココロは?
馬場
だって老舗に行ったら絶対にウンチク語っちゃうもん(笑)。あ、でもトランクホテルに行っても「君はエースホテルを知ってるかい?」とか言っちゃいそうだけどね(笑)
前田
そこでバカにならなきゃいけないんじゃないですか?
馬場
いや、まあ、おっしゃるとおりなんだけどね…。もちろんバカになれるオトコは正しいし、ある意味尊敬もしていますが、誤解を恐れずにいえば、僕はそういうバカなオトコ、バカな自分は嫌いです。

それに彼女たちにとって昭和の名店は素敵ではあっても自分たちのものだとは思わないでしょ。一方で、できたばかりのトランクホテルなら後ろ側を知らなくても自分のものだと思えるはず。
前田
ということは馬場さんいわく「昭和でモテるなんて嘘だね」ということでいいんでしょうか?(笑)
馬場
嘘というか、そもそも昭和でモテるという概念がないんです。しかも、当の昭和の時代でさえ、オトコがモテるために女性の前でウンチクを語っていたかというと、そんなことはないですからね。いわんやいま昭和を持ち出せば、そこには何かしらストックなものを感じちゃうでしょ。
前田
まさにそうです。昭和という言葉に求めているのは、馬場さんがおっしゃるところのストックな空気感ですね。
馬場
だったら、それはない、というのが僕の意見です。だいたい、若い人はいま僕らがこうして一生懸命話している世代論自体すごく嫌いですよ。それを持ち出すと「人それぞれですから…」みたいなことになる。

世代が関係ないんだから昭和ってこと自体通用しないんじゃないかな。面倒くさいな〜と思われますよ、100%(笑)。とはいえ、僕自身は大好きですよ。ストックな話も好きだし、ストックなお店も大好き。でも、そういうところにはオトコと行くね。前田さんと行くよ(笑)
前田
じゃ、もういっそのこと面倒くさい人たちによる面倒くさいラジオでもやりましょうか! かつての「アヴァンティ」みたいな(笑)

といいつふたりは、夜の銀座に消えて行くのだった…。

●馬場康夫(ばば・やすお)
1954年生まれ。ホイチョイ・プロダクションズ代表。1982年『気まぐれコンセプト(現在も連載中)』でデビュー。代表作に『見栄講座』『東京いい店やれる店』『エンタメの夜明け』、映画『私をスキーに連れてって』『バブルへGO!!』(原案・監督)など。

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