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2025.12.24

棚橋弘至選手、引退直前インタビュー【後編】「棚橋ロスなんかいらない。太陽は一回沈んでも、また次の陽が昇ってくる」

2026年1月4日の引退試合に向けて「ファイナルロード」をひた走る新日本プロレス選手兼社長の棚橋弘至さんに、大のプロレスファンである作家の樋口毅宏さんがインタビュー。26年にわたる現役生活への思いから社長としての将来の目標まで、棚橋さんの本音に迫りました。その後編です。

CREDIT :

取材/樋口毅宏 構成/井上真規子 写真/トヨダリョウ 編集/森本 泉(Web LEON)

棚橋弘至 新日本プロレス 樋口毅宏 LEON

新日本プロレスのトップレスラーでありながら社長も務めるという二足のわらじでプロレス界を牽引する棚橋弘至さん。2026年1月4日の引退試合までわずかとなったこの時期に、大のプロレスファンである作家の樋口毅宏さんが棚橋さんをインタビュー。26年の選手生活を振り返っていただくととともに、社長に専念するこれから、日本のプロレス界にどんな未来を思い描いているのか、じっくりお話を伺いました。その後編です(前編はこちら)。

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「昔から新日本プロレスに後輩を育成するシステムはない」

樋口毅宏さん(以下、樋口) 今、棚橋さんは新日本プロレスの社長として、自分のことだけでなく、個々の選手から全体の運営まで、見なきゃいけないところがたくさんあると思いますが、後世の選手の育成の難しさも実感されているのではと思いました。


棚橋弘至さん(以下、棚橋) いや、それが昔から新日本プロレスに後輩を育成するシステムはないんです。「テメエの力で勝ち取ってみろ、この野郎!」っていうことです。


樋口 猪木イズムですね‼


棚橋 はい。僕は第三世代の永田(裕志)さん、中西(学)さん、天山(広吉)さん、小島(聡)さんに何度も跳ね返されて、それでも突き破ったわけです。中邑(真輔)と一緒に。で、僕もオカダ(・カズチカ)、内藤(哲也)が上がってきた! と思ったらいなくなっちゃったんで、繰り下げで僕が壁になったんですね。


樋口 そうおっしゃいますが、下の世代にとっては高くてブ厚い壁ですが。 若い選手と接して、自分たちとは全然違うなとか、いいなとか思うところはありますか。

棚橋弘至 新日本プロレス 樋口毅宏 LEON
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棚橋 親子ぐらい歳の離れている選手もいますから、やっぱりジェネレーションギャップはあります。ただ練習、技術、プロレスへの熱い想いは、みんな持っています。僕が2000年代に一生懸命地方を回ってプロモーションしたのを、いまは上村(優也)とかが率先して営業のスタッフと組んで行ってますし、みんなSNSの発信もこまめにやってます。


樋口 ちゃんと継承されているんですね。


棚橋 あと僕は仮面ライダーとか音楽とか自分が好きなものをプロレスにも巻き込んできましたけど、(高橋)ヒロムが音楽好きが高じてラジオパーソナリティやったりとか、段々巻き込む力が出てきているなって。プロレスだけ出来ますっていう選手ではなくて、自分が好きなものも上乗せして、そのジャンルのファンまで巻き込んでしまおうというようなバイタリティですよね。


樋口 ちなみに棚橋さんはファッションもお好きですよね。

棚橋 そうですね。ファッションは本当に大事で、仕事でも、デートでも、遊びに行く時でも、服が決まった時って1日気分がいいじゃないですか。プロレスラーも自分のお気に入りのコスチュームがキマると100%のポテンシャルが出せるんですよ。


樋口 先ほどコスチュームに着替えた棚橋さんと記念写真を撮ってもらいましたが、バチっとキマったキャラクター感が半端ないです。


棚橋 そういうファッションからもらえるエネルギーを使わないのはもったいないので、いつも自分が好きな格好をして出かけます。

棚橋弘至 新日本プロレス 樋口毅宏 LEON
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樋口 今はどういうスタイルが好きなんですか?


棚橋 大学時代は古着が好きで、アメ村とか京都の古着屋さんに行ってました。それから裏原系が流行ってエイプを着たりして。2000年代でチャンピオンになると、ライダースとかを買うようになって、防衛するたびにクロムハーツを買いに行ってましたね。今度タイトル獲ったらクロム行こ! みたいな(笑)。ちなみに今日もクロムの革ジャンです。

樋口 色々な変遷があるんですね。若い選手たちもファッションが好きな方が多い印象です。

棚橋  みんなお洒落ですよ。それぞれに好きなスタイルがあっていいなと思いますね。リングを降りてプライベートもカッコよかったら、小さい子もプロレスラーってカッコいいな、ああなりたいなって憧れの存在になっていくんじゃないですかね。

「太陽は一回沈みますけど、また次の陽が昇ってくる」

樋口 そして2026年1月4日を迎えるわけですが、その翌日以降、プロレスファンはもうみんな棚橋ロスになることが予想されています。棚橋ロスを埋める新しいスターは現れるでしょうか。

棚橋 ロスにはならないと思いますよ。でも現われます。現れてもらわないと社長としては困ります(笑)。太陽は一回沈みますけど、また誰か昇ってきますよ。

樋口 プロレスラーって対戦相手だけでなく、観客とも戦わなければいけないし、1度勝っても何回でも勝たないといけない。キャラクターも認知されなければいけないし、団体のトップ、顔になるにもすごい時間がかかります。新日本は、ある時代はもうずっと猪木さんの影響下に、ある時は武藤さんの影響下にありました。

そして今は棚橋さんの全面的な影響下にあります。ここをブレイクスルーするのがどれだけ大変か棚橋さんもよく実感されていると思うんです。棚橋さんの二番煎じでは、棚橋さんのところに座れない。
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棚橋 海野(翔太)、成田(蓮)、辻(陽太)、上村、大岩(陵平)、ボルチン(・オレッグ)、ウルフ(アロン)もいますので。


樋口 どんな言葉をかけてあげたいですか。


棚橋 同じプロレスラーは2人いらないわけですが、みんな一番になりたいという思いを持ってやっているので、自然と形になってくると思います。新日本プロレスはいま、かつてないほど群雄割拠なんです。


樋口 本当に‼


棚橋 猪木さん、長州さん、藤波さん、闘魂三銃士(※1)、第三世代、棚橋・中邑、オカダ・内藤と来て、いま一気にトップ取りそうな人間が5〜6選手以上いるんですよ。この時代に生まれなくてよかった〜と思いますよね。何人倒さないとファンに認めてもらえないんだ⁉ みたいな。


タイトルマッチがあって防衛したら、「次は俺だ!」って突っ込んでくる選手ばっかりじゃないですか。でね、またその下にYuto-Iceや、OSKAR(オスカー)という強力な若手もいますから。

※1 闘魂三銃士 は、1984年に新日本プロレスに同期入門した武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也からなるユニット。

樋口 いや〜Yuto-Iceはいいですね! 棚橋さんと同じ中学の後輩で。喧嘩っ早くて危険な感じで、見ていてハラハラさせられます!


棚橋 あんな風に肩を怒らせながらの歩き方、石井(智宏)さんだけだと思ってた。


樋口 ワハハ(笑)。石井さんも怪我されて本当に心配です。武藤さんの名言で「プロレスはゴールのないマラソンだ」っていう風におっしゃっていました。棚橋さんは来年の1月5日の後にプロレスリングを降りた後も、プロレスラーでいてくださると思うんです。い、いてくれますよね⁉


棚橋 はい。気持ちは。元プロレスラーですけど。

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樋口 実現しなかったけれど、闘ってみたかった選手はいますか? 


棚橋 猪木さんとは向き合ってみたかったですね。藤波さんとはシングルマッチもできましたし、長州さんともタッグマッチで1度試合しました。だから、猪木さんとはどんなんだったんだろうなと思いますね。


樋口  わ〜、そうですよね。プロレスは長嶋茂雄対大谷翔平が可能になるジャンルなので、ファンとしては猪木さんはもちろん、(ジャイアント)馬場さん、(ジャンボ)鶴田さん、前田日明など、勝手に妄想してしまいます。

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「新日本プロレスが先頭に立って、日本全国の経済を回していく」

樋口 僕らが気になるのは、プロレスラーを引退した後、実は成功した人というのがそれほど多くはない印象を受けます。棚橋さんは社長業に専念されますけれども、その先も棚橋さんを見続けたいと思っています。


棚橋 出来る限りこの新日本で育った感謝というものを、新日本プロレスの社長としてファンの皆さんに返していきたいです。選手にも頑張れる状況を作りたいですし。


あとは急にトレーニングをやめず、今は体重100キロぐらいありますけど、70〜75キロにして、フィジークとか違う分野も視野に入れながら新しい楽しみにしたいなって思ってます。


樋口 楽しみです! 今のプロレスは猪木、長州、藤波、三銃士の頃と様変わりしました。僕は新日本プロレス=プロレス界だと思っていますが、今後のプロレス界はどうなっていくでしょう?

棚橋 いい材料ばっかり揃っていますね。というのも先ほど言ったように、選手の頭数が充実していますので。コロナ禍で動員に苦戦しましたが、インターネット配信やオンデマンドシステムが整っていますし、あとは昔からのファンの方が家庭を持って家族単位で楽しんでいただけたらと思います。


樋口 そうですね、ファミリー層も獲得しました。

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棚橋 怖い、痛そうとかっていうイメージを徐々に変えてきましたし。それに今、家族で楽しめるコンテンツが少ないんですよね。遊園地や旅行と同じく、プロレスを見に行って、家族でご飯食べて、って日本全国回るとその土地の経済を回せるんですよ。


樋口 プロレスはオフシーズンもないですしね。


棚橋 だから近い将来、地方自治体とのコラボレーションももっと増えてくると思っています。そうしたら、その土地の美味しいものも紹介できるし、日本全国からファンが集まってきて、その土地で買い物してって新日本プロレスが先頭に立って、日本全国の経済を回していける。

樋口 もはやライバルはディズニーだと思います。

棚橋 じゃあ僕は新日本プロレスのミッキーマウスですよ!

樋口 「100年に一人の逸材」の次は、そのキャッチコピーを使って下さい!
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棚橋弘至 新日本プロレス 樋口毅宏 LEON

● 棚橋弘至(たなはし・ひろし)

1976年、岐阜県大垣市出身。1999年に立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入門。同年真壁伸也(現:刀義)戦でデビュー。2003年に初代U-30無差別級王者となり、自身としての初のタイトル戴冠。2006年には、当時の団体最高峰王座となるIWGPヘビー級王座を初戴冠。以降、同王座を8度戴冠し、これは歴代最多戴冠記録となっている。「100年に一人の逸材」「エース」の名のもと人気を博し、プロレス界の顔として、リング内外で活躍。2023年12月より新日本プロレスリング株式会社代表取締役社長に就任。2026年1月4日東京ドーム大会で現役を引退。引退試合の相手は現在アメリカAEWで同団体の統一王者に君臨するオカダ・カズチカ。

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● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)

1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊で初のノンフィクション作品となる『凡夫 寺島和裕。「BUBUKA」を作った男』(清談社)が好評発売中。雑誌『LEON』で連載した小説「クワトロ・フォルマッジ-四人の殺し屋-」も単行本化予定。
X/@byezoushigaya

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