
今回ご登場いただいたのは菊川 怜さんです。東京大学工学部在学中にスカウトされ芸能界デビュー。高学歴女優のはしりとしてドラマや情報番組のキャスターとしても大活躍。その後は出産・育児などのため休業していましたが、今年10月には久しぶりの主演映画も公開されます。母となっても抜群のスタイルを維持し変わらず魅力的な菊川さん。その意志を感じさせる毅然とした美しさの秘密とは?




【interview 01】
モデルを始めた頃は怒られてばかり。理系なのでポーズのパターンも数で考えていました
菊川怜さん(以下、菊川) それまで勉強ありきの狭い世界で生きてきてしまったので、進路を選ぶ時に、自分が将来どんな仕事をやりたいか、今やっている勉強がどう仕事につながるのかもわからなくて、広くいろいろな選択肢を考えていたんです。理数系全般は好きだったんですけど、社会科系は苦手でほとんど勉強していませんでしたね(笑)。
── そんな中、東京大学在学中にモデルとしてスカウトされたそうですが、知らない世界に飛び込むことに対して迷いや不安はなかったですか?
菊川 最初はその職業を目指して入ったというより、それまで受験勉強一色だったところに、まったく違う世界のお話だったので、体験のひとつとして自分が経験したことのない新しいことをやってみたいという気持ちでモデルを始めました。

菊川 モデルさんって素敵なお洋服を着せてもらえて、すごく楽しそうなイメージがあったので、雑誌に載るとかそういう華やかな世界には興味があったかもしれないですね。でも、実際にやってみたらすごく難しくて。最初は先輩モデルさんのポーズを見よう見まねでやっていましたけど、私は理系だったので、右足をクロスしたら1個とか、ポーズのパターンも数で考えて、これで10個できた!みたいな状態でした(笑)。でも写真にはその時の気持ちや空気が全部出ちゃうので、ただポーズとっても不自然で全然ダメでした(笑)。
── 現場で注意されたり怒られることもあったんですか?
菊川 ありました。あるカメラマンさんからはずっと「半魚人」と言われていたんです。当時は意味がわからなかったんですけど、要は半人前ということだったんですよね。私の場合、流れの中での動きではなく、ただポーズをとるだけで、どういう気分を表現したいのかという自分の軸がないから、迷いのある自分が全部写真に写っていたんです。それも怒ってもらって初めてわかったことなので、怒られるって重要だなと思いました。

菊川 それまで学芸会とかも含め人前で何かをしたことがなかったんですけど、映画を見ることは好きだったので、高校生の頃は夏休みにビデオ屋さんで借りてきた映画を1日中見て、感動して泣いたりもしていました。だから、そういう世界の入り口に立たせてもらったことはうれしくて、挑戦してみたいと希望に燃えていた自分もいて、昼間は大学に通いながら、週3、4日、夕方5時から8時ぐらいまでレッスンに通っていました。
── 実際に現場でお芝居をした時はどんなことを感じましたか?
菊川 レッスンに通っていたとはいえ、ベテランの俳優さんなどもいる中でカメラの前に立つのはもう本当に大緊張で、セリフも自然に言えないし、そこでも怒られていました。

菊川 勉強はわからなかったら先生に聞いたり、自分で突き詰めて考えていけばいいだけなんですけど、お芝居はいまだにわからないので諦めというか、わからないなりにやっているという感じです(笑)。私はよく、「数学は答えがあるから好きなの?」なんて聞かれることがあるんですけど、答えがあるないに関わらず、これは絶対にこう、という論理的思考でどうにかなるところが好きなんだと思うんです。でもお芝居ってどうすれば正解なのか全然わからなくて(笑)。
前に舞台をやった時も、自分で今日は良くできたと思った時と、人からいいと言っていただく時が全然違ったんです。だからあまり考えずに、その場、その場を一生懸命にやっていくしかないなと思っています。
── その後、「真相報道 バンキシャ!」や「情報プレゼンター とくダネ!」など、キャスター業にも挑戦されましたね。
菊川 これは予想外でした(笑)。私は理系で、社会のことや世の中のことが苦手だったので、最初はやっぱり難しくて。でも必要に迫られてというか、そこで自分なりに吸収して勉強することで自分の幅も広がったので、すごくよかったなと思います。

菊川 生放送で長いこと毎日一緒でしたからね(笑)。もちろん緊張感はあるんですけど、その中で、いろんな食事会やコンサートに連れていっていただいたり、FNS歌謡祭とかを一緒に見に行かせていただいたりという日々の積み重ねでだんだん自然とですかね。
── 菊川さんにとって小倉さんはどういう存在だったのでしょうか?
菊川 小倉さんは、仕事において自分の軸やこだわりがしっかりあって、番組の中で小倉智昭としてこういう思いを伝えたいというものが明確にある方なんです。いろんな環境や条件のもと、キャスターとしてどこまで言えるかという兼ね合いもある中、すごく考えながら思いを発信されていたと思うんです。って私が偉そうに言うのもおこがましいですけど(笑)。そういう仕事に対する姿勢や情熱はすごく学ばせていただきました。それでいてどこか甘えられるし、さらけ出せるし、親戚のようなお父さんのような存在ですかね。

菊川 おいしいものを食べに行くロケですかね(笑)。おいしいものを食べるお仕事もただ楽しむだけじゃダメですけど、ほかのお仕事はやっぱりプレッシャーや緊張感が強いので。
── 逆に一番大変だと感じるお仕事は?
菊川 どれもそれぞれに大変さはありますよね。でも、そのしんどさを乗り超えて自分が何かを得られた時に、すごく充実感があるので、しんどくても自分が成長できる機会なんだと前向きに捉えて取り組めるかというマインドの問題かなと思います。
── 仕事はやっぱり楽しんでやりたいという気持ちがありますか?
菊川 それはありますね。やっぱり仕事は楽しくてやりがいがあって喜びがあって、自分を成長させてくれるものですよね。そして、チャレンジができる場所でもあると思うので、嫌でやるものでは決してないと思っています。
※vol.02に続きます。

● 菊川怜(きくかわ・れい)
1978年2月28日、埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。1997年、大学在学中にスカウトされ、モデルデビュー。その後、「東レキャンペーンガール」に選ばれ、1999年にドラマ『危険な関係』で女優デビュー。2002年と2003年にタレントCM起用社数ランキングで年間首位を獲得。2003年には『OL銭道』で連続ドラマ初主演を果たし、第27回エランドール賞新人賞、第40回ゴールデン・アロー賞放送賞を受賞。俳優業にとどまらず、2002年から7年間「真相報道 バンキシャ!」でキャスターを、2012年から5年間「情報プレゼンター とくダネ!」でサブ司会を務めるなどマルチに活躍。10月10日には主演映画『種まく旅人〜醪のささやき〜』が公開に。
公式HP/映画『種まく旅人 〜醪のささやき~』 10月10日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
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