2025.09.07
岩橋玄樹インタビュー。「人種も環境も関係なくコミュニケーションできる大人になりたい」
日本とアメリカの二拠点生活を送りながらアーティスト、俳優として活躍する岩橋玄樹さん。渡米したきっかけや、米事務所に所属を決めた理由とは? 映画デビュー作となる『男神』の撮影秘話とともに、今の心境をたっぷり伺いました。
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文/飯田帆乃香 写真/大靏 円(昭和基地 ¥50) スタイリング/河田威尊 ヘアメイク/村澤柚香 編集/鎌倉ひよこ

渡米したきっかけや、米事務所に所属を決めた理由とは? 15年に亘るキャリアで直面した決断や苦悩、そして米・ロサンゼルスでの私生活についてなど、岩橋さんの現在地に迫ります。
移民支援施設でボランティア活動も
岩橋玄樹さん(以下、岩橋) メンタル的に強くなりました。小さなことでも落ち込んでしまうタイプですが、アメリカでは自分の意志を伝えないと食べたいものを買うこともできなければ、友達もできない。人として生活するために必要な強さは身につきました。
── もともと英語は勉強していたのですか?
岩橋 全然(笑)。準備しないまま飛び込みました。そのくらいラフなほうが行動に移せると思ったので。だから仕事でも“最初はわからなくていいや”と思いながら、サポートなしにミーティングしてみたり、ひとりでレコーディングスタジオに行ったりと試行錯誤しています。ロスでは苦悩することばかりだけど、それでも生きてくためには落ち込んでいられないので、やるしかない! という気持ちで生活しています。

岩橋 移民が多いアメリカではいろんな言語が飛び交っています。週3でボランティアをしているのですが、一人ひとりの目を見て食事を配膳すると「Gracias!」とか言ってくれてうれしい反面、みんな英語以外の母国語でしゃべりかけてくるので何が何だかわからない。
「僕、スペイン語はしゃべれないよ」と伝えてもずっとスペイン語でたくさんしゃべりかけてくるおばあちゃんがいたりして、そうなるともう、ジェスチャーでやり取りするしかない。こういう多国籍な言語の中でコミュニケーションするのはやっぱり大変ですね。
── ボランティアを始めたきっかけはなんですか?
岩橋 今年、大規模なロスの山火事で、住んでいた家が避難区域になりました。その時は日本でツアーをやっていて、帰りのアメリカ行きの飛行機から大好きだったロスがめちゃくちゃ燃えているのを見ました。帰路につくと馴染みのあるお店やレストランも全部なくなっていて……。すっごくショックで、じゃあ自分に何ができるのかを考えると、ボランティア施設に志願することでした。
山火事の被災が収まってきてからは、お金に困った人や支援が必要な移民の方々に向けて、食事を配膳する活動に移行しています。僕は料理は苦手なので、調理されたチキンをナイフで刻んだり混ぜたりして、料理に手を加えながら配膳する係。給食当番みたいなことをしています。

どんなに小さなことでも、すべてが学びになっている
岩橋 いろいろあるけれど、ひとつはカルチャーが好きだから。HIPHOPなどの音楽、ファッション、アート、街の風景……。そしてエンタテインメントに触れられる場所だからです。
── 現地の事務所とエージェント契約をされましたが、その決め手を教えてください。
岩橋 海外の仕事を自分の経験として積み上げたいと思いました。どんなに小さなことでも、すべてが学びになっています。でも日本での仕事も、僕にとってやりたいことが叶えられている大事な活動です。
── 交友関係の幅も広がったと思います。岩橋さんにとってカッコいい大人とは?
岩橋 どんなに有名でもお金持ちでも、謙虚な姿勢で接してくれる人。立場を気にせず誰とでもフラットにお話ししている人は、グローバルに活躍されている印象です。自分もそういうふうに、人種も環境も関係なく、相手を尊重しながらコミュニケーションできる大人になりたいです。

岩橋 演技に挑戦したい気持ちは昔からずっとあったのですごくうれしいです。俳優としてはまだまだですが、アーティスト活動とはまた違う楽しさでとても刺激があります。
── “アーティスト”と“俳優”のものづくりの仕方にどんな違いを感じますか?
岩橋 音楽のアルバム制作は、自分であれこれ考えて提案しながら進める面白さがあります。映像作品は監督がいて、他のキャストの方と一緒に作り上げるものなので、自分が失敗したら最初からやり直し。逆に、自分では絶対NGだと思ったテイクでOKが出ることもあって、正解がわからない面白さがあります。
英語の台詞はすべてアドリブで演じることに
岩橋 そうですね。もちろんストーリーは理解したうえで挑ませていただいたけど、少年を生贄に捧げられる“男神”という、目に見えない存在がどう表現されるのかまったく想像できなかったです。

岩橋 完成した作品を見たら、現代的かつ神秘的な映像でした。現場ではスモークやドローンなど色々な方法を駆使していたので「こういう感じになるんだ!」と新鮮でした。
岩橋 そこに宗教の呪縛も描かれているので、信仰のミステリアスさに興味のある方も楽しめる作品だと思います。
── 岩橋さんが演じる裕斗は、穴が出現した工事現場で働く重機の技術者としてひと役買います。
岩橋 シリアスな雰囲気が漂う中に、裕斗がいいアクセントとしてみなさんの印象に残るとうれしいです。撮影期間中、朝から作業着の衣装のまま牛丼を食べに行ったんです。そうしたら、まさに工事現場で働いている方も店内で朝食をとっていて、その中に溶け込めている実感のおかげで役がより身体になじんだと思います。

岩橋 そのシーンに関しては、考古学のアーサー教授を演じたチャールズ・グラバーが現場で色々とアドバイスをくれるうちに、「全部アドリブでいこう!」という流れに。結局、裕斗の男気や、人を守りたいと思う性格を踏まえつつ、このキャラクターが目の前の現象にどんな感情を抱くのか意識しながらアドリブで会話をしました。
── 対応力が試される現場でしたね。
岩橋 台本とまったく違う台詞に変わってしまうことは、ハリウッド映画でもよくあるらしいです。おかげで自分の経験値が上がる機会を得て感謝しています。
岩橋 神話やスピリチュアル、心霊系も大好きです。アメリカではUFOツアーがメジャーでよく参加しています。なんで日本のメディアはもっと紹介しないんだろうって不思議なくらい、UFOスポットに行くと普通に飛んでいるんですよね。僕も何回も目撃しました!

● 岩橋玄樹(いわはし・げんき)
1996年12月17日生まれ、東京都出身。10代から芸能活動をスタート。一時休止を経て2021年よりアメリカと日本を拠点にソロアーティストとして再始動。1st写真集『Labneh』や、3rdアルバム『I'm A Hero』を発売するなど精力的に取り組む。ドラマ『恋愛ルビの正しいふりかた』では俳優として主演に抜擢された。また、ジュエリーブランド「TwO hundRED」をプロデュースする。
公式サイト/岩橋玄樹 オフィシャルサイト | GENKI IWAHASHI OFFICIAL SITE

『男神』
全国各地で母子の失踪事件が相次ぐなか、新興住宅地の建設現場に突然、大きく深い穴が発生する。建設会社勤務の和田(遠藤雄弥)は自分の息子が穴に迷い込んでしまったことを知り助けようとするが、そこは「決して入ってはいけない」と語り継がれる禁足地。巫女たちが「男神」を鎮めるため異様な儀式を行う聖地だった。それでも息子を取り戻そうとする和田と家族の結末は…。出演/遠藤雄弥、彩凪 翔、岩橋玄樹、須田亜香里 他 配給/平成プロジェクト
9月19日(金)公開 公式HP/https://otokogami-movie.com
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