2025.09.06
第9回 国仲涼子 【vol.02】
美しい人、国仲涼子。「俳優は100点が何かわからない仕事だから、続けられているのかなと思います」
大人の女性の美しさに迫るグラビア連載「美しい人」。第9回目にご登場いただいたのは国仲涼子さんです。「ちゅらさん」で国民的女優となり、数々のドラマや映画で活躍ののち、結婚・出産・育児で休業。最近少しずつ仕事を再開し始めた国仲さんの母となっても変わらぬ美しさの秘密とは? そのvol.02です。
- CREDIT :
写真/野口貴司 文/渡邉朋子 スタイリング/仮屋薗寛子 ヘアメイク/高梨祐子 編集/森本 泉(Web LEON) プロデュース/Kaori Oguri

今回ご登場いただいたのは国仲涼子さんです。2001年、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」でヒロインを演じて大ブレイク。国民的女優となったその後も多くのドラマや映画などで活躍しました。2014年には俳優の向井 理さんと結婚。その後は出産・育児などのため休業していましたが、最近少しずつ仕事を再開。母となっても変わらぬ美しさの国仲さんですが、その輝くような「美」の秘密とは? 前回(こちら)に続きvol.02では「ちゅらさん」のお話を伺いました。




【interview 02】
「ちゅらさん」で“やってやったぞ”と、天狗になっていた部分もあったのかも
国仲涼子さん(以下、国仲) バイト先のぜんざい屋さんで「沖縄でオーディションを開くので、そこに出ませんか?」と声をかけられたんです。それは歌とかお笑いとかダンスとか何種類かの部門に分かれていたと思うんですが、私は歌も歌えないですし、「オーディションには出ません」とお断りして。
でもその後でまた、家に連絡があったのかな。そこで「事務所に入りませんか?」というお話をいただいたんです。

国仲 芸能界に興味はなかったんですけど、それまでに何度か東京に旅行に行ったことがあって、住んでみたいなという気持ちがあったので、何となくやってみようかなと(笑)。
── 沖縄を離れることに不安はなかったですか?
国仲 その時はすぐに帰ってこられるだろうって、結構軽い気持ちだったかもしれないです。
── まったくの未知の世界である芸能界に入ってみて、どうでしたか?
国仲 すぐにお仕事が決まったわけではなく、最初はずっとオーディションやレッスンを受けていて。事務所の寮にいたんですけど、寮にいた子はみんなレッスンに行かなきゃいけなくて。私はレッスンもあまり乗り気じゃなかったので、嫌々行ったりしていました。
そういう時期が何年か続いていたので、もう帰りたいと思いながら、自分に何ができるかもわからず受けていた数あるオーディションのひとつが「ちゅらさん」だったんです。

国仲 いえいえ、全然です! 大勢の人が受けていたし、オーディションで手応えを感じたことなんてないです。
── 役が決まって、朝ドラのヒロインという大役へのプレッシャーはなかったですか?
国仲 プレッシャーというより、とにかく何にもできない状態だったので、ヒロインに選ばれてから弟役の山田(孝之)くんとふたりでお芝居の先生について2週間、朝から夕方まで集中してお芝居のお稽古がありました。
そこでいろんな台本を渡されて「こういう時はこう思うからこんな表情だよね」というようなことを教わったんですけど、セリフを覚えるのもどうしようという感じだったので、とりあえずセリフだけは頭に入れなきゃということしかなくて。だからプレッシャーよりも、やばい! できない! でも、とりあえずやらなきゃ! という気持ちのほうが大きかったですね。

国仲 やらないよりはよかったかなと思いますけど、だからと言って、すごくお芝居ができたわけでもなく。最初の頃はご飯を食べながらセリフを言うとか、何かをしながらセリフを言うのが難しくて。セリフをしゃべっている時や、自分のセリフがもうすぐ来ると思うとお箸がずっと止まったままで食べられなかったり、食べたら食べたでセリフを忘れたり、そんなことばかりでした。
── 「ちゅらさん」は沖縄が舞台の作品で、国仲さんの名を一躍、全国区にしたドラマでもあるので、反響も大きかったのでは?
国仲 撮影期間は10カ月ぐらいだったんですけど、沖縄でのロケは意外と少なくて。撮影はほぼ都内だったんですが、放送が始まってから沖縄ロケに行った時に「見てるよ!」と言ってもらったのが一番うれしかったです。そういう声で、あぁ、みんなが知ってくれてるんだなとすごく実感しました。

国仲 はい、知らない親戚も増えましたし、「前から友だちだったよね」と言う知らない友だちも増えました(笑)。
──10カ月も撮影していると、クランクアップは感慨深いものがあったのでは?
国仲 それまで毎日がリハーサルと撮影の連続で、これ、いつ終わるんだろう? まだ中盤かとか思いながらの撮影期間だったので、終わった実感があまりなかったですね。明日もまた会えるだろうみたいな感じで終わっちゃったので、「終わりました!」と言われても何だかピンとこなかったです。だから寂しい感じもなかったし、また会えるんじゃないかという感覚で。実際、シリーズ化されて会えました。

国仲 小浜島での「ちゅらさん」のクランクアップの時にNHKの「五瓣の椿」という時代劇の台本をいただき、その後すぐに現場に入ったんです。その時の役が人を殺しちゃうような役柄で、「ちゅらさん」とは全然正反対の役だったんですけど、初めての時代劇で所作とかも難しいし、なかなかうまくできなかったんです。
その時の監督さんがすごく厳しい方で「全然できてない」と言われて。「ちゅらさん」で“やってやったぞ”みたいな感じでいた自分の気持ちをへし折られたというか。

国仲 もう全然余裕がなくて。2カ月ぐらい京都で撮影していたんですけど、京都の撮影所の雰囲気も独特ですし、そこで心が折れて「もうこの仕事をやめたい、沖縄に帰りたい」と本当に思いました。今となっては、そこで監督やスタジオの皆さんにいろいろ指導していただいてよかったなと思いますけど、当時はそんな余裕もなく。自分の中では、沖縄のみんなにも知ってもらえているし、自覚はなかったですけど、それこそ天狗になっていた部分もあったんだろうと思います。
── これまで女優を続けてこられたモチベーションは何だったと思いますか?
国仲 なんだろう……。たぶん、自分がまだ100点満点じゃないなというのがあって、満足しきれてないところが今も続けられている理由なんじゃないかなとは思います。いつも100点満点を目指してはいますけど、この点数のつけ方というのも誰がつけるのかわからないところもあるし。
例えば現場で、私が「今のシーン、もう1回やりたいな」と思っても、監督は「すごいよかったよ」と言ってくださる場合もありますし。それが作品となった時に、見てくださる方がみなさん100点をつけてくださるわけでもないし。その100点が何かわからない仕事だから、こうして続けられているのかなと思います。
vol.03に続きます。

● 国仲涼子(くになか・りょうこ)
1979年6月9日、沖縄県生まれ。1999年に女優デビュー。2001年、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」でヒロインを演じ、第39回ゴールデンアロー賞「放送新人賞」、第26回エランドール賞「新人賞」を受賞。その後、ドラマ「夢のカリフォルニア」「ブラックジャックによろしく」「みんな昔は子供だった」「結婚できない男」「風のガーデン」「光る君へ」、映画『感染列島』『ダーリンは外国人』『366日』など、出演作多数。10月スタートのドラマ「終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―」(カンテレ・フジテレビ系月曜22時〜)に出演が決まっている。
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