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2025.08.09

竹野内 豊インタビュー。「カッコいい大人とは、外見だけではなく高い精神性が備わってこそ」

太平洋戦争中に活躍した駆逐艦「雪風」の史実を背景に、戦中から現代に繋がる激動の時代を生き抜いた人々の姿を描いた映画『雪風 YUKIKAZE』(8月15日公開)。作品の中で「雪風」の艦長・寺澤一利を演じた竹野内 豊さんに話を伺いました。

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文/福田恵子 写真/瀬津貴裕(biswa.) 編集/鎌倉ひよこ

竹野内豊 WebLEON 雪風 YUKIKAZE
太平洋戦争中に実在した駆逐艦「雪風」。小型で俊敏な駆逐艦の特性を活かし艦隊の護衛から兵員や物資の輸送、沈没艦船の乗員救助など数々の場面で大活躍し、ほぼ無傷で終戦を迎えました。奇跡のような不死身ぶりを発揮した「雪風」の史実を背景に、太平洋戦争の渦中から戦後、さらに現代へと繋がる激動の時代を生き抜いた人々の姿を描いた映画『雪風 YUKIKAZE』(8月15日公開)で、駆逐艦「雪風」の艦長・寺澤一利を演じたのが竹野内 豊さんです。様々な資料を基に生まれたオリジナルキャラクターをどのような想いで演じたのか。作品の話とともに竹野内さんが考えるカッコいい大人像についても話を伺いました。
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若い人たちが未来に向けて一歩動き出すきっかけになる作品に

── 今年は終戦80年を迎えます。戦争を知らない世代が増えるなか、太平洋戦争中に実在した駆逐艦「雪風」の物語を描いた本作への出演をどのような思いで決めたのでしょうか?

竹野内 豊さん(以下、竹野内) 戦争を経験していない自分が史実に基づく人物を演じることに、正直不安もありましたが、変わりゆく日本の中で、本作を送り出すことに意味があると思いました。戦時下を生きた方々の高い精神性を、今こそ見つめ直すべき時なんじゃないのかな、と。特に若い人たちが、このような過去を映し出す作品から今の日本の状況を見つめて、未来に向けて一歩動き出すきっかけになる作品にしたいと思いました。
竹野内豊 WebLEON 雪風 YUKIKAZE
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── どんな激戦を繰り広げても必ず無事に還って来た「雪風」で、いつも冷静にリーダーシップを発揮する艦長・寺澤を、竹野内さんは説得力たっぷりに演じられました。役を演じるうえで大切にされたことは?

竹野内 寺澤艦長は架空の人物なので、自分なりに作りあげる必要があったのですが、彼が大切にしていた武士道の精神は、日本人であれば誰しも自然と根付いているような気がしますし、私もそうでした。ただ、最前線で日本を守る駆逐艦の艦長の責任の重さというものは、想像を絶するもの。目の前にいる乗員たちだけではなく、その家族や友達、大切なすべての人たちを守らなければならないという重圧を常に意識して演じていました。
── クランクイン前にはどんな準備をされましたか。

竹野内 撮影に入る前に広島の旧海軍兵学校や海上自衛隊の横須賀基地を見学しに行きました。その時に、特別に実践さながらの模擬戦闘訓練を見せていただき、それが、自分が想像していたイメージと違い、冷静に淡々と行なわれていることに驚きました。もちろん、最前線に出れば、そんな淡々とっていうわけにいかなくなると思いますが、現役の海上自衛隊の方々の号令のかけ方や任務に取り組む姿勢を見られたのは大きかったです。
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── 海での壮大な戦いがたくさん描かれますが、印象に残っている撮影の時のエピソードはありますか?

竹野内 駆逐艦は小回りの利くスピードの出る艦(ふね)で、何度も急旋回する場面がありますが、その時全員で揃えるのが難しかったです。1人だけ傾いて他の人がまっすぐ立っていたらおかしいし……。艦はセットで実際に揺れるわけではないので、テストの段階から動きを確認し合いながら演じていました。魚雷が向かってくる場面も実際に見えるものではないので、様々な光景はすべて想像する必要がありました。海軍役は初めてでしたので、新たにいろいろな学びがありました。
── 戦争シーンではどんなことを感じながら、演じましたか。

竹野内 戦争映画などから“戦争”をイメージすることはできても、実戦の恐ろしさは絶対に分かるものではないと思います。以前、実際に戦争から帰還された方からお話を伺いましたが、どんなに生々しいお話を伺ってもやはり戦場での恐怖は体験した人にしか分からないと感じました。

また、別の作品でサイパン島に行った際、陸軍が潜伏していたジャングルの奥地に案内していただいたのですが、当時日本軍が作ったコンクリートの建物や鳥居が今も残されていて。その建物や鳥居、周囲の岩肌に残されたおびただしい数の弾痕を見た時に“これは生き延びられるわけがない……”と感じて恐ろしくなりました。最前線で戦うという意味がどういうものなのか……今回、戦争作品を受けるうえで、あの時、目に焼き付けた衝撃を気持ちのどこかに置いて、再び軍人役に挑んでいたと思います。
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── 「雪風」の乗員を演じた共演者のみなさんとはどんな雰囲気の中、撮影されていましたか。

竹野内 本当にチームワークが良く、全員で作っている感じがとても強い映画でした。玉木宏さんが頼れる兄貴的な存在で先任伍長を演じてくださって、そこに奥平大兼さん他乗組員の皆さんがついていこうという自然な連帯感が生まれていました。また、今回の撮影が始まる前、最初の顔合わせの際に司令官長役の中井貴一さんが、実際の戦争の現場がどれだけ壮絶か、当時の「大和」の乗員の方々から聞いた話を共有してくださり、それによって役者たちの士気がより高まったと思います。
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情熱をもってお米作りに取り組んでいるジローラモさんはカッコいい

── ところで本作にもカッコいい男たちがたくさん登場していますが、竹野内さんが思うカッコいい大人とはどんな方ですか。

竹野内 今回、演じた寺澤艦長もそうですが、外見だけではなく高い精神性が備わってこそ、初めて大人の男性と言えると思います。今の世の中は、情報に溢れていて、スマホを検索すれば自分の知りたいことがすぐ分かる。そのような表面的な知識を得るだけでなく、内面的な充実を大事にできる人が魅力的だと思います。

── 着飾るばかりでなく、内面も磨くのは大事ですね。

竹野内 トレンドを追いたくなる気持ちは分かりますが、流行ばかりを追い求めて着飾っていても、自分らしさは生まれなくて、本当に自分に合ったものを選び取るのが大切だと思います。以前、「LEON」でご活躍されているジローラモさんが情熱をもってお米作りに取り組んでいる動画を拝見しました。人生の先輩に対して私が言うのもなんですけど、モデルとしてスマートな衣裳に身を包む姿も素敵ですが、田植え機に乗り、汗だくになりながら、本気で日本の美しい未来を考えて行動している姿には心打たれました。本当にカッコよかったです!
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── それはLEONとしてはとてもうれしいお話です。ほかに竹野内さんが出会ってカッコいいなと思った方はいらっしゃいますか? 

竹野内 以前撮影で地元のライフセーバーの方に急遽エキストラとして参加していただいたのですが、まったくカメラを意識していない自然体の動きがとても印象的でした。自分をよく見せようとするのではなく、カメラの前でも日常をそのまま表現できる。普段から他者の目よりも自分自身として生きているからこそ、撮影という特殊な状況においても、自然体でいられるんだと思います。

あの姿は私自身考えさせられた瞬間でもありました。使い込んだウェットスーツも画になっていました。普段から汗水流して作業着で真剣に働いている方を見かけると素敵だなと思っています。
── 戦場の海から生き延びた役を演じて、改めてこれからの人生、どのように生きていきたいと思いましたか?

竹野内 やっぱり、何事も精一杯やる。そういう生き方をずっと続けていけたらいいなと思います。途中で投げ出したり、中途半端な形で諦めず、自分の中で何事もやり切ること。そうすれば、いつの日か自分の過去を振り返った時、何ひとつ無駄な時間はなかったと自分の中で言いきれそうなので。いつまでも一生懸命やる気持ちを大切にしたいです。
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● 竹野内豊(たけのうち・ゆたか)

1971年1月2日生まれ。東京都出身。94年に俳優デビュー。2001年には『冷静と情熱のあいだ』で映画に初出演し、第25回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した。映画『太平洋の奇跡〜フォックスと呼ばれた男』では、第54回ブルーリボン賞主演男優賞受賞。以降も数多くのドラマ、映画で活躍し、22年には京都国際映画祭で三船敏郎賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『シン・ゴジラ』(16)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)、『カツベン!』(19)、WOWOW『さまよう刃』(21)、映画『イチケイのカラス』(23)、Netflix「THE DAYS」(23)、NHK「あんぱん」(25)などがある。

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『雪風 YUKIKAZE』

太平洋戦争中、激戦の中多くの仲間を救い続け、必ず日本に還ってきた駆逐艦「雪風」。海軍でいつしか“幸運艦”と呼ばれ、唯一ほぼ無傷で終戦を迎えた不沈艦の史実をもとに、戦中から戦後、さらに現代へとつながる激動の時代を懸命に生き抜いた人々の姿とその運命を、壮大なスケールで描く。さまざまな資料を基に映画オリジナルで生み出された艦長を竹野内豊が、早瀬先任伍長を玉木宏が演じる。出演/竹野内 豊 玉木 宏、奥平大兼、當真あみ他。製作/YUKIKAZE PARTNERS 製作プロダクション/デスティニー 配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、バンダイナムコフィルムワークス 8月15日全国公開
公式HP/https://www.yukikaze-movie.jp/
(C)2025 Yukikaze Partners.

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