2025.06.15
池田エライザ「私は大人ぶった悪ガキ(笑)。大人っぽさと子供っぽさが混在した両極端な性格なんです」
現在公開中の映画『リライト』は、SFの名作『時をかける少女』へのオマージュを感じさせる広島・尾道を舞台にした、甘酸っぱいタイムスリープ×青春ミステリー映画。主人公の小説家役を演じた池田エライザさん自身、幼い頃から本の虫。読書の楽しみ方や書くことの意味、タイムリープできたら見たいものなどを伺いました。
- CREDIT :
文/飯田帆乃香 写真/土屋崇治(TUCCI) スタイリング/髙橋美咲(Sadalsuud) ヘアメイク/RYO(TRON) 編集/鎌倉ひよこ

タイムリープするなら1000年後の未来で文明を確認
池田エライザさん(以下、池田) そのおふたりの化学反応と、不思議な現象が起きても説得力を感じさせる尾道という空間が相まって、より味わい深い作品が出来上がりました。心の奥にある「あれは何だったんだろう」というひと夏の思い出が蘇るようで、撮影現場にいる時も「世界のどこかで今起きているお話なんじゃないか」と錯覚してしまうほどでした。

池田 神聖と思えばそんな気もするし、閑散としたところが退屈と捉えられることもありますよね。私は福岡の田舎育ちなんですが、地元の“何にもない環境”がどれだけ人をクリエイティブにしてくれるかと気づいたのは大人になってからです。そういう自分の成長過程によって見え方が変わるのが尾道だと思います。加えて、観光客向けにお洒落な施設をつくる一方、地元の人たちは昔ながらのスナックやお店に集まる新旧混在した雰囲気、夏の暑すぎる気温と涼しい海風、海と森に挟まれた閉鎖感、長い一本道、その全部のバランスが心地よかったです。
池田 まず脚本で、文字から理解するのは頭を使いました。でも過去に別の作品(ドラマ「ストリートワイズ・イン・ワンダーランド ~事件の方が放っておかない探偵~」)で上田さんの脚本は経験済み。その時はタイムリープした側を演じたので「何年から何年に来て、戻ったら何歳……」みたいに大混乱したけれど、今回の『リライト』は未来から来た保彦の目撃者であり、ただ起きること、起きなかったことにびっくりする当事者なので、演じるうえでは非常に気は楽でした。

池田 私はどうしても、演じた美雪の視点で読むので、いろんな出来事が明るみになるたびに「やめて~、そんなことしないで~!」と思いながら、これ以上読む手を進めるのが怖いというか、第一目撃者のような感覚になりました。松居監督はそのパラドックスを、ホームビデオで日常を切り取るように映像に落とし込む。内容を知っている私でも、初号を観て美雪の恋心を思い出してちょっと甘酸っぱい気持ちになったり、自分のいないシーンが新鮮だったりして、楽しむことができました。
池田 こればかりは皆さまのあたたかい目に甘えるしかないというか……(笑)、そう言っていただけるとホッとします。高校生役は実年齢に抗いようがないので、ほぼすっぴんになって引き算するしか手はなかったです。あとはもう、堂々と演じるのみ。松居さんからは「身体を大きく使ってほしい」と言われました。そこで思い返せば、自分も学生時代は笑うだけでも大きなアクションをしていたなと。両手を振り上げて叩きながらはしゃいで、子猿のような動き方をしていた自覚があります。周りの目を気にする意識も少なかったのを思い出し、10代の美雪はややガニ股でテクテク歩いたり、大きな身振り手振りを意識しました。

池田 いわゆる“本が好きな子”のイメージを強調することは考えなかったです。自分のペースでクラスメイトとコミュニケーションをとりつつ、本は一番のエンタメとしてそこにあるだけ。あまり深く考えずに教室にいて、席に座ってみんながしゃべってるのをボーッと見て、読みたくなったらこっそり引き出しの中で本を読む、ごく普通の高校生。そういう学生の頃の感覚に従って演じていました。
── 池田さんは13歳でティーン誌の専属モデルに。その後、ファッション誌『CanCam』の売れっ子モデルとして活躍していましたが、高校時代はどんな女の子でしたか?
池田 カリスマJKです(笑)。ただ、自分でそう見えるように振舞っていただけで、あまり華やかな事柄が得意じゃなくて。その根っこの部分は今と変わりません。でも学校では、女子同士でギャアギャア騒ぐのも好きでした。
── もし池田さんがタイムリープするとしたらどの時代に行って何をしたいですか?
池田 1000年後に行ってみたいです。そりゃあ昔に行ってみて、恐竜に毛が生えているかどうか確かめたいし、日本の空白の150年も気になるけど、過去はそこで終わりというか……。例えばクレオパトラの美しさを目に焼きつけても私は絵がうまくないから現代に残すことができません。でも未来なら、新しい技術を学んで知識を持ち帰ることができます。それだとパラドックスを起こしちゃうけど……(笑)。

池田 フィーチャリスティックな感性が大好きなので、1000年後のインテリアとか見てみたいです。その時代に排除されているもの、ブラッシュアップされているもの、はたまた文明が終わっているのか、いろいろ気になります。もし人間が滅亡していたらめっちゃ反省しながら現代に戻って「地球を守ろう!」と奮闘します!
── まさに物語のような世界観ですね! 『リライト』を劇場でご覧になるにみなさんにメッセージをお願いします。
池田 この作品は映画館推奨です! 迫力のあるシーンや爆音があるわけじゃないけど、蒸し暑いこの時期に館内に入って涼をとり、身体がひんやりしてきた頃に上映が始まって、誰かと共有することもできずスクリーンに目を向ける。DVDや配信だったら巻き戻して謎の真相を確認できるけど、それもできない環境で「あれは一体何だったんだろう」とモヤモヤしながら外に出ると、また蒸し暑い初夏の空気がまとわりつく。そんなひと夏の思い出を残していただけるとうれしいなと思います。
本は共感と学び。たまには残酷さに触れるのもいい
池田 自分のバランスを取る時間です。特に日記は、手を止めずに書くと心が整います。手を止めると、誰も読まないのにうまくまとめようとしてしまうから、考える暇もなく筆を走らせる。そうすると「あれは人を思いやった言動か、自分の本心か」という、今日の出来事から本音と建前が見えてきて、メディテーションに近い状態がつくれます。

池田 昔は作家名のあ行からわ行までランダムに読み漁っていたんですけど、今はそんな時間の余裕がなく、読み方も変わってきました。ファンタジーは仕事で毎日のように脚本を読んでいるので十分。最近はアウトプットが続いて頭が疲れた時に、新書や自伝、歴史の本を読んでいます。そうはいっても青春時代の、あの時の何かを思い出しておきたい時は、石田衣良さんや重松 清さんの作品に触れることも。限られた時間の中で目的を持って、今得たいものが書かれた本を選んでいます。
── 読書時間はどのタイミングが多いですか?
池田 寝る前かな。むしろ、寝落ちするために読んでいます。最後の方は記憶が曖昧になりながら、そのままベッドの上の縁に積読。愛猫がそこにひょいっと飛び乗って私の顔に本が直撃する。そんな日常です。
── 読書が池田さんの人生に与えてくれたものは何ですか?
池田 共感と学びです。幼少期、なんでこんな経験をしなきゃいけないんだろう、自分は恵まれてないんだと、どんなに悲観的になったとしても、同じような経験をしている子が小説の中にいました。この作家さんはなんで自分のことを知っているんだろうという共感と、この主人公はどうやって壁を乗り越えるんだろうという学びがそこにある。本の世界に救いを求めるように読んでいました。主人公と生みの親である作家さんの存在がとても有難かったです。

池田 たまには残酷さや童心に触れてみるのはどうでしょう。アゴタ・クリストフ『悪童日記』なんかは風刺もいいところ。双子の少年たちが、痛みを感じないために自分たちを痛めつけ合う日記形式で書かれたその極端な表現は、今まで背けてきたことに目を向けるきっかけになるかもしれません。もしくは絵本を改めて熟読。うんちをテーマにした作品から「結局、うんちってなに?」と考えを巡らせるのも楽しい。もちろん好みに合うものがいちばんですが、あえて縁遠いジャンルを読んでみると新たな発見があり、思考の鮮度が上がると思います。
池田 リアルな話をすると、多頭飼いの猫たちのトイレを快適にすることに本気で取り組んでます。やっぱり女の子は男の子と近いトイレだと落ち着かない様子なので、その子の縄張りだと思っている部屋の隅に音が鳴らない小さなトイレを設置。他にも自動トイレや消臭の猫砂を物色して、猫ちゃんたちが安心できる環境をつくってあげることに邁進しています!

池田 最近始めたことはピラティスで体幹を鍛えつつ、ジムでウエイトトレーニングをすること。食事のアドバイスもいただいているおかげで、血糖値の上昇を感じづらくなりました。胃下垂や自律神経の乱れも少しずつ快調に。午前中に体を動かすと午後はずっと元気でいられるから、たぶんセロトニンの分泌も好調です!
── ジム通いのきっかけは?
池田 7月のライブに向けて腹筋を割りたいんです。お客さんたちが気兼ねなく立ったり踊ったりできるように、私はへそ出しの衣装でテンションを盛り上げていこうかと(笑)。ラスト1カ月、アラサーの固い覚悟で身体を絞っていきます!
池田 しながわ水族館。品川は駅構内や周辺も散策できる楽しい場所です。眼鏡屋さんに靴下屋さん、レストラン街に水族館……。ウロウロしているとあっという間に時間が過ぎています。あとラゾーナ川崎プラザもお買い物が好きな人なら楽しめるはずです。私は月イチで母と行きます。この前はキャラクターグッズと粘着クリーナーのコロコロを買って帰りました(笑)。

池田 無邪気に立ち返れる人。それをキャラ設定したものではなく自然体でできる人は、こっちが「ずるい!」って妬んでしまうほどカッコいいです。
── 池田さんも無邪気なイメージですよ。
池田 私の場合、大人っぽさと子供っぽさが混在した両極端な性格。大人ぶった悪ガキなんです(笑)。

● 池田エライザ(いけだ・えらいざ)
1996年4月16日生まれ、福岡県出身。2011年に『高校デビュー』にて俳優デビュー。主な出演作に『ルームロンダリング』(18)、『貞子』(19)、『騙し絵の牙』(21)、『真夜中乙女戦争』(22)、『ハウ』(22)、「DORONJO」(22)、『お前の罪を自白しろ』(23)、「地面師たち」(24)、「海に眠るダイヤモンド」(24)などがある。『夏、至るころ』(20)、『MIRRORLIAR FILMS』『Good night PHOENIX』(22)では映画監督を務める。主演ドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』(24/NHK総合)が6月17日より再放送。また、ELAIZA名義の音楽活動では、『たましい』『FREAK』などを配信リリース。7月26日(土)に東京・竹芝ニューピアホテルにてELAIZA LIVE 2025 “DIVE”を開催予定。

『リライト』
高校3年の夏、転校してきた保彦(阿達慶)は、実はある小説に憧れて300年後からタイムリープしてきた未来人だった。クラスメイトの美雪(池田エライザ)はその秘密を共有し、恋に落ちる。そして7月21日、ある出来事をきっかけ10年後にタイムリープする。そこで会った未来の自分は1冊の本を手に「あなたが書く小説」だと告げた。現在に戻った美雪は、未来へ帰る保彦にこの夏の思い出を小説にすることを約束して別れた。その後、小説家になった美雪は約束通りにあの時見た小説を完成させ、運命の7月21日、10年前の自分に小説を見せるために帰省。しかし待てど暮らせど何も起こらない…。あの夏のタイムリープの謎、そして時を翔けて「リライト」される運命とは――。監督/松居大悟、脚本/上田誠、原作/法条遥 出演/池田エライザ、阿達慶、橋本 愛ほか。
公式HP/https://rewrite-movie.jp/
6月13日(金)より全国公開
(C)2025「リライト」製作委員会
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ロエベ ジャパン クライアントサービス 03-6215-6116