2025.06.09
安田成美さんが優しい声で読み上げる「星の王子さま」が、オヤジの心に刺さります!
俳優の安田成美さんが10代の頃に出合ってから生涯の愛読書になったという『星の王子さま』。その純粋で澄み切った世界観をクローズアップして安田さんが自ら構成した朗読劇が開催されることに。安田さんの優しい声で朗読される『星の王子さま』はオヤジさんの心にも刺さりますよ。
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文/渡邉朋子 写真/野口貴司 編集/森本 泉(Web LEON) プロデュース/Kaori Oguri

『星の王子さま』は大人の方に読んで、聞いてほしいなと思う
安田成美さん(以下、安田) 初演は八ヶ岳でやったんですけど、近くに住んでいたママ友がクルマの誘導やチラシ配り、チケットのもぎりなどをボランティアでやってくれたり、うちの子どもたちも手伝ってくれて。小道具とかも全部手作りだったので、私にとって思い入れのある公演になったし、ライフワークにしていきたいと思える作品になりました。
── お客さんの反応はいかがでしたか?
安田 朗読を聞いて泣かれていたお客さんもいたので、私以上にいろんなことを感じてくれているんだなと実感して、やっぱり言葉で伝えるのっておもしろいなと感じました。

安田 メッセージがいっぱい詰まったストーリーなので、私も大人の方に読んで、聞いてほしいなと思うんです。私が初めて『星の王子さま』を読んだ時は中学生で、サリンジャーとかが好きだったこともあって、ちょっと斜に構えて大人を見ているようなところがあったんですよね。星の王子さまも自分以外の誰かを見る時に、なんでこうなんだろう? なんでそこが大事なの? というところをいつも突いていたので、そこに共感して。でも繰り返し読むうちに、星の王子さまがバラや自分の星を一途に愛しているところが自分の中でクローズアップされてきて、その時々で響く部分も変わってくるなと思いました。
── 朗読の楽しさはどういうところだと思いますか?
安田 『LOVE LETTERS』という朗読劇をやった時に実感したのは、衣装を着て動いたり「自分はこういう人物です」といった視覚的な表現が何もないからこそ、押し売りができないというか。同じ空間にいるお客さんたちがそこにある言葉と音楽だけに集中して、それぞれ自分なりの世界を想像する、その集中度がおもしろいなと思うんですよね。
安田 恥ずかしいけど、一番びっくりしたのは老眼で台本の字が見えないこと(笑)。こういうことが起こるんだ!と思って、字をめちゃくちゃ大きく書きました(笑)。

自宅では誰かの足音が聞こえてきたらすぐにやめてしまいます
安田 みんなでお芝居をするのもすごく楽しいんですけど、キャスティングされる側だと、ちゃんと求められたように役を演じる必要があるじゃないですか。でも私は、ここでこんなこと言うかな? とか、そんなことばかり気になっちゃうので(笑)。
── もしかしたら安田さんは、与えられた役を演じるより自分で何かを作って発信していきたいタイプなんでしょうか?
安田 意外とそうなのかも。今回の朗読劇もやっていてすごく楽しいから、私、ものを作るのが好きなのかなと思って。
── 朗読の練習は家でもされるんですか?
安田 昨日はしました。今日のリハーサルは取材のみなさんがいらっしゃるから、噛まないようにちゃんとやらなきゃダメだと思って(笑)。
── ご家族の前で練習されることもあるんですか?
安田 やらないですよ〜(笑)。誰かの足音が聞こえてきたらすぐにやめて、何もなかったようにしています。

安田 私、海太郎さんの音楽が本当に大好きで、『星の王子さま』の朗読劇をやろうと決めた時に、これは海太郎さんしかいないと思って。台本を見せたらすぐにOKをもらえたので、音楽に関してはまったくのお任せです。朗読と合わせてみたら、ほぼ1回目でお互いに、これだね!というところにたどり着けました。
息子に関しては、前回の公演で子どもたちが手伝ってくれた時に、海太郎さんが次男の絵か何かを見たそうで「銀士くんに入ってもらいたい」と言ってくださったんです。親としてはドキドキしますよ(笑)。自分も自信がないのに子どもまでとなると責任を感じちゃうんですけど、本人も大人ですから私のせいじゃないと思って(笑)。私も彼の作品を楽しもうと思っています。
夫は「はい、読みます」「よかったよ~」で、以上でした(笑)
安田 画家であり作家や雅楽歌人でもある、はせくらみゆきさんという方から、ことあるごとに「本を書きなさい」、「成美ちゃんは書く人よ」と言われていて、そんなに言ってくださるならと重い腰を上げたというか(笑)。朗読劇の台本を作った時に印象的だと感じたフレーズから、自分が思ったことを書いてみようかなというところから始まって、7月の公演でどうしてもこの本を会場に置きたかったので頑張って仕上げました(笑)。

安田 全然反応がないから、「私、憲武さんの本、読みましたけど、なんで読まないんですか?」って言ったら、「はい、読みます」とか言って「よかったよ~」で、以上でした(笑)。子どもたちも誰も読んでないです(笑)。昔から私がドラマとかに出ても誰も見ないし、トーク番組に出ても、始まるとみんな、さ~って上の階に行っちゃうんです。照れくささもあるのかもしれないですけど、見ていられないんでしょうね(笑)。
── ご自身の心の中を文章にしていく作業というのはいかがでしたか?
安田 私、日記も1週間ぐらいして読み返すと、自分はもう次に進んでいるもんだから、「バカだね〜。いいんだよ、そんなことは。あ~もう読んでいられない! 誰かに見られたら恥ずかしいわ!」と破って捨てちゃうので、1回もとっておけたことがないんです(笑)。どちらかというと、ちょっと自己否定型なのかな。だから今回も結構勇気のいる作業で、書いては捨てて、書いては書き直しての繰り返しでした。でも、自分の思いだけで走らず、きっとほかの人も似たようなことがあるよねというところに意識を持っていくことで、なんとか書けたかなという感じです。
安田 『星の王子さま』のストーリーと連動して昔の出来事とかも書いているんですけど。当時は何でもないことのようにすましていたけど、あの時、私、意外と怖かったんだなと思って、怖いっていうことも認めてあげてなかったけど、私、結構頑張ったんだなって自分を認めてあげられることができた部分はあるかもしれないですね。

安田成美(やすだ・なるみ)
1966年、11月28日、東京都生まれ。1981年にCMデビューし、翌年、『ホームスイートホーム』でドラマ初出演。1983年にはアニメ映画『風の谷のナウシカ』のイメージソングで歌手デビューし、大きな注目を集める。その後、『同・級・生』、『ヴァンサンカン・結婚』、『素顔のままで』、『この愛に生きて』、『ドク』、『リミット もしも、わが子が…』など数々のドラマで主演を務め、映画『王妃の館』、『Fukushima50』、『すばらしき世界』、舞台『英国王のスピーチ』などにも出演。今回の朗読劇に合わせて書いた最新エッセイ『星の王子さま 私をつくっている大切なものたち』(きずな出版)も好評発売中。

朗読劇「星の王子さま」
作/アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
訳/内藤 濯
構成・朗読/安田成美
作曲・演奏/阿部海太郎
日程/2025年7月1日(火)・2日(水)
場所/東京・重要文化財 自由学園明日館 講堂