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2025.06.13

俳優・三浦獠太がレジェンドの父からもらった言葉とは?

サッカー界のレジェンド・三浦知良を父に持つ俳優・三浦獠太さんが初主演した映画『フェイクアウト』が公開されます。デビューして7年。最近は多くのドラマや映画に出演し、目にする機会も増えた獠太さんが、いま、現場で感じていることとは?

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文/池田鉄平 写真/玉井美世子 スタイリング/作山直紀 ヘアメイク/Emiy 編集/森本 泉(Web LEON)

三浦獠太 WebLEON フェイクアウト! LEON 三浦知良
父はサッカー界のレジェンド・三浦知良、母はモデルの設楽りさ子という特別な家庭に育った三浦獠太さん。ある偶然をきっかけに踏み出した俳優の道は、決して順風満帆ではなかったけれど、自分自身と誠実に向き合いながら歩んできた7年でした。そして今、映画『フェイクアウト!』で初主演という大きな節目を迎えます。現場で感じたこと、背負った責任、そしてこれからの展望まで── その胸中を、率直に語ってくれました。
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「役者は努力でなれる」、と一冊の本がくれた出発点

── 俳優の道に進むきっかけは、どんなところにあったんですか?

三浦獠太さん(以下、三浦) 正直なところ、最初はまったく想像していませんでした。映画やドラマを観るのは好きでしたけど、自分が“出る側”になるなんて、まったくの別世界だと思っていました。

ただ、小さい頃からとんねるずが大好きで、よく真似をしては遊んでいたんです。その姿をたまたま見た知人が、「君はエンタメの世界に行ったほうがいい」と声をかけてくれて。そこから、不思議な縁で「会ってみたいという人がいる」と言われて、紹介されたのが、今も所属している事務所のオーディションでした。

それが台本を読むタイプではなくて、ワークショップ形式の“自分を表現する場”で。演技というより、自分の内側にある何かが即興の中でふと引き出される感覚があって、とにかく面白かったんです。

オーディションの時に読んだ本に「役者は努力でなれる」と書かれていて、それが妙に腹に落ちました。「努力でなれるなら、自分にもできるかもしれない」と思って、そこから挑戦が始まりました。気がつけば、もう7年目です。
── 2019年のドラマ「グランメゾン東京」で俳優デビューしてから、ご自身の中で、「俳優として生きていこう」とスイッチが入った瞬間はありましたか?

三浦 正直、明確に「これだ!」と思った瞬間があったわけではないんです。最初の1年くらいは、どちらかというと“仕事”として淡々と取り組んでいました。

でも、いろんな作品でさまざまな役に触れていく中で、自分が思い描いていた“俳優像”と、現実に求められるものの間にあるギャップに気づかされて。その奥深さと難しさに、どんどん惹かれていったんです。気づけば、「もうこの道しかない」と自然に思えるようになっていました。

特に大きかったのは、映画『彼女が好きなものは』に出演した時。上映後に観客の方々からいただいた感想や反応が、本当に胸に刺さったんです。「ああ、自分の演技が誰かの心にちゃんと届いたんだ」と感じた時、初めて“俳優という仕事の意味”が自分の中で腹落ちしました。
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人間は弱い。でも、そこに打ち勝ってこそ

── 俳優としてのキャリアの中で、うまくいかないことや壁にぶつかることもあったと思います。そうした時は、どう乗り越えてきましたか?

三浦 最終的には「自分との勝負」かなと。壁にぶつかると、つい環境や周囲のせいにしたくなるけれど、それって一時的な逃げなんです。結局、「自分がまだ足りていなかったんじゃないか」「どこかで甘えていたんじゃないか」という自問自答に戻ります。

だから、いつも自分に矢印を向けて、「じゃあ次、どう動くか」を考える。弱さを自覚したうえで、もう一歩だけ踏み出す。その姿勢だけは、どんな時も崩さないようにしています。

それはたぶん、父から言われ続けてきた言葉の影響が大きいです。「人間は弱いから、必ず楽なほうに行ってしまう。だからこそ、そこに打ち勝て」って。父はいつもそれを、自問自答するように語っていたし、僕自身も、自分が弱いと感じたときに、ふと思い出すようにしています。
── もともと負けず嫌いなタイプなのでしょうか。

三浦 めちゃくちゃ負けず嫌いです(笑)。でもその気持ちに何度も救われました。「負けたくない」という思いが、しんどい時でも踏ん張る原動力になる。自分にとっては、大事なモチベーションです。

── 朝ドラや数々の話題作への出演を経て、ついに主演映画『フェイクアウト!』が公開されます。主演が決まった時、率直にどんな気持ちでしたか?

三浦 実は監督の堀江(慶)さんとは、以前、別の作品の現場で偶然お会いしていて。その時は現場のスタッフさんとしていらっしゃっていたんですけど、ふと見て「あれ? 見覚えあるぞ?」と。

子どもの頃、大好きだった「百獣戦隊ガオレンジャー」。堀江さんって、実はガオイエローだったんです。当時の印象とは全然違っていたので最初は気づかなかったんですが、思い切って「ガオイエロー……でしたよね?」と声をかけたら、「そうだよ」って笑ってくれて。そこから一気にテンションが上がりました(笑)。

「実は今、映画の監督もしてるんだ」って話になって、「いつか一緒にやれたらいいね」と軽く交わした言葉が、まさかの半年後に現実になるなんて。
── そんな偶然から主演オファーへ。

三浦 そうなんです。だから「主演やりますか?」って言われた時も、驚きより「本当に実現した!」って感動のほうが大きかったです。こういう“いつかやろうね”って話って、だいたい立ち消えることが多いじゃないですか。でも、今回はちゃんと形になった。その事実が、ものすごくうれしかったですね。
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脚本を読んだ第一印象は「主役」らしくない主人公

── 今回の映画『フェイクアウト!』は、ストーリーが二転三転し、巧妙な伏線と多視点で展開していきます。脚本を初めて読んだ時、どんな印象を受けましたか?

三浦 正直、「自分が主演だけど、いわゆる“主人公っぽくないな」というのが第一印象でした。物語の中心に僕が演じた高島という人物はいるけれど、彼が引っ張っていくというより、周囲の出来事に巻き込まれていく。そんな“翻弄されるタイプの主人公”だったんです。

だから演じるうえでも、「主役らしく堂々と立つ」よりは、物語に自然に溶け込み、登場人物のひとりとして存在することを大切にしていました。

── どのように高島という人物を掘り下げていったのでしょうか?

三浦 僕は「役作り」というよりは、演じるからには、どこかで自分の中にある感情とつながっていないと成立しないと思っていて。

高島の場合、「家族や恋人のために必死になれる人」。その誠実さが裏目に出ることもあるけど、誰かのために頑張る気持ちって、すごく共感できる。だからこそ、「この人が守りたいものは何か?」を考え続けながら、共鳴するように演じました。
── たしかに、彼の行動って理屈じゃない“衝動”に近い部分もありますよね。

三浦 正直、傍から見れば「なんでそんな行動するんだよ」とツッコミたくなるような場面もある。でも、それって現実でも同じですよね。第三者目線なら冷静に判断できるけれど、当事者になったら、そんなに簡単にはいかない。

僕自身も、もし同じ状況に置かれたら、空回りすると思います。必死に頑張っても裏目に出て、自分だけで何とかしようとしてあがいてしまう。だからこそ、「これは他人事じゃないな」と思いながら、自然と役とリンクしていました。
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主役然とした立ち方はしたくなかった

── 実際に堀江監督と作品を作る中で、印象に残ったことは?

三浦 監督はとても柔らかくて、対話を大切にする方でした。「ここはこうしたほうが伝わりやすいかも」といった提案も、押しつけではなく常にキャッチボールの延長線上にある。いわゆる“指導”ではなく、一緒に作品を育てていくような感覚でした。

僕自身、演じるうえで「気持ち」と「目的」さえしっかりしていれば、あとは監督の表現に寄り添うことを大切にしているので、動きや所作は委ねながらも、自分の内側はぶらさないようにしていました。

主演という立場ではありましたが、「主役然とした立ち方」ではなくて、あくまで一人の役者として、現場の空気に自然に馴染むことを心がけていたつもりです。

ただ、やっぱり現場って、主演がつくる空気に左右されるんですよね。過去にご一緒した主演の方々の“背中”を見てきたからこそ、自分ももう少し引っ張っていけたら…という悔しさもありました。実際には堀江監督が場をしっかり締めてくれていたからこそ、余計にそう思いました。

── これまでに「この人の座長力はすごい」と感じた俳優はいましたか?

三浦 小栗旬さんですね。映画『フロントライン』でご一緒した時、作品に対する責任感と、中心に立つ覚悟が圧倒的でした。

地方の撮影現場にも、自ら車で2〜3時間かけて通っていて、そうした姿勢ひとつひとつに、現場を引っ張る力が宿っていた。現場の空気感ごと、作品を背負っていたような存在でした。
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満足度はゼロ。でも、悔しさも含めて確かな一歩

── 共演者である浅川梨奈さんや葉月ひとみさんなど、現場の雰囲気はどうでしたか?

三浦 実は皆さん、撮影が2日ずつくらいのスケジュールだったので、ずっと一緒にいるような絡みのある方がいなかったんです。なので、正直言うと仲良くなる前に「はい、解散!」みたいな感じで……(笑)。もうちょっと一緒にいられたら良かったなっていう気持ちはありますね。ちょっと寂しかったです。僕自身、「相方」みたいな存在が現場にいたらもっと楽しかったかも、なんて思ったりしました。

── 完成した作品を客観的に観た時、どんな思いが湧きましたか? また、初主演作としての満足度は?

三浦 まず思ったのは、「浅川さんと矢柴さん、めちゃくちゃカッコいいな」って(笑)。台本を読んでいた時から「このシーンいいな~」って思っていたので、正直ちょっと羨ましかったです。

満足度で言えば……正直“ゼロ”ですね(笑)。やっぱり「あの時、もっとこうできたかも」って思うところはあります。でも、その時、自分が持っていたすべてを出し切ったのは間違いない。だから、悔しさも含めて、自分にとっては確かな一歩だったと思います。

いざという時、“背中で語れる男”でありたい

── これから先、俳優としてどんな姿を目指していきたいですか?

三浦 実は「こうなりたい」といった明確なビジョンは、あえて持たないようにしているんです。もちろん、自分の中にブレない芯はあります。でも、俳優という仕事を続ければ続けるほど、「理想像」って変わっていくものだなとも感じていて。

時代は流れ、求められる表現や在り方も、日々変化していきますよね。だから強く理想を固定してしまうと、むしろ自分を縛ることになりかねない。

ただ、どんなに技術が進化しても、人と人が心でつながる“あたたかさ”だけは、変わらず価値があると思っています。今回の映画もAIがテーマでしたが、だからこそ“人間らしさ”の意味をあらためて考えさせられました。

ぬくもりや共鳴、ふとした瞬間に感じる感情の揺らぎ。それを丁寧にすくい取り、表現できる俳優でありたい、今は、そんな思いを大事にしています。
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── 最後に雑誌『LEON』は、皆さんに聞いているのですが、三浦さんにとっての「カッコいい大人」とは?

三浦 自分の心に正直でいられる人ですね。ブレずに、でも頑なじゃなくて。そういうしなやかさに、大人の色気って滲む気がします。

もうひとつ、最近のテーマでもあるのが、“痩せ我慢”の美学。男の粋って、そこにある気がするんです。感情を全部さらけ出すのも人間らしいけれど、苦しい時でもあえて笑って見せる強がりには、余裕と品格がある。

たとえば映画『カリオストロの城』(宮崎駿監督)のラスト。ルパンがクラリスに「君はこの国に残りなさい」と言うシーン、すごく好きなんです。本当は一緒にいたいはずなのに、背中で別れを選ぶ。あの強がりがたまらなくカッコいい。

僕も、いざという時にはそんな“背中で語れる男”でいたい。感情に流されるだけじゃなく、大切な誰かの前で、少しだけカッコつけてみせる。そんな痩せ我慢に、大人の美学が宿っていると思うんです。
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● 三浦獠太(みうら・りょうた)

1997年9月5日生まれ、東京都出身。2019年、ドラマ「グランメゾン東京」(TBS)で俳優デビュー。その後映画やドラマへの出演を重ね、2024年は映画『言えない秘密』、『赤羽骨子のボディガード』、連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)、ドラマ「オクラ~迷宮入り事件捜査~」(フジテレビ)、25年はドラマ「119エマージェンシーコール」(フジテレビ)のほか、「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)で大河デビューを果たす。

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『FAKE OUT フェイクアウト!』

近年の目覚ましい技術革新により、社会のインフラになりつつあるAIを題材にしたクライム・エンタテインメント。とてつもなく精度の高いAI株価予想プログラムをめぐるカネと欲望が、壮絶な騙し合いを引き起こす。知らぬ間に背負わされてしまった借金返済のために、騙し合いの渦に巻き込まれてしまった純朴な青年が行きつく先は……。ストーリーが二転三転し、物語の視点が変わるごとに、今まで見えていた現実がまったく違う者であることに気づく。騙し騙されの新たなクライム・エンタテインメント。主演は三浦獠太。ほかに浅川梨奈、矢柴俊博、久保田秀俊、呉城久美、石田明(NON STYLE)ほか。監督は『ベロニカは死ぬことにした』の堀江 慶。
公式HP/映画『フェイクアウト!』
6月20日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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