2025.05.24
飯豊まりえは、パワースポットが歩いている人。
人気ドラマの映画版2作目となる『岸辺露伴は動かない 懺悔室』で漫画家の岸辺露伴を担当する編集・泉 京香を演じる飯豊まりえさん。全身からポジティブなパワーを発散し、輝くばかりの飯豊さんに今回の映画のこと、仕事のこと、常に前向きに生きる人生について伺いました。その後編です。
- CREDIT :
文/井上真規子 写真/トヨダリョウ スタイリング/高木千智 ヘアメイク/笹本恭平 編集/森本 泉(Web LEON)

今回のゲストは、モデルで俳優の飯豊まりえさんです。NHKの人気テレビドラマ『岸辺露伴は動かない』の映画化2作目となる『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(5月23日公開)に漫画家の岸辺露伴を担当する編集・泉 京香役で出演する飯豊さんに、前編(こちら)では作品のテーマに絡めて人生の幸せと不幸について、そして後編では特別な体験だったというオールヴェネツィアロケについても伺いました!
「かけ離れた役でも、同じ状況に置かれたら自分もそうなりうる」(飯豊)
飯豊まりえさん(以下、飯豊) どの役も、ちょっとずつ自分と通じる部分があると思いますね。
樋口 そうですか。引きこもりの役も?
飯豊 なってはいないけど、同じ環境で同じ状況に置かれたら、自分もそうなりうるんじゃないかなって思います。野島伸司さん原作の「パパ活」(2017年)も、自分とはまったく違うけど、もしもって考えたら否定はできない。それは私だけじゃなく、みんながそうなりうるんじゃないかなって思うし、そういう部分を探しながらやっています。

飯豊 そうですね。
樋口 飯豊さんは俳優業を10年以上やられていますが、はじめはモデルからスタートしてステップアップされました。そこには大きい決断もあったのかなと思ったのですが。
飯豊 私としてはモデルを軸に役者をやっている感覚で、「役者に転換した」って感覚はないんです。巡り合わせで、小学校の頃からずっとファッションのお仕事もやらせてもらっていて、そこを区切るみたいには思っていないです。
樋口 もはや『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド※並みの俯瞰能力を持っていますね!

樋口 演出家の方も答えに窮する質問ですね!
飯豊 でも、そういう場合は俯瞰でいいよって。
樋口 ワハハ(笑)。『ハムレット』では、オフィーリア※をやられたんですか?
樋口 オフィーリアは本当に飯豊さんにピッタリです! それこそ俯瞰能力が役立ちますね。別の人生を生きる、っていうところが最大限に発揮されたんだろうと思います。

「キラキラした感じじゃない、ありのままのヴェネチア」(飯豊)
飯豊 昨年の11月ですね。
樋口 ぼちぼち寒くなる時期ですか?
飯豊 寒かったですね。しかも、ヴェネツィアは街が水浸しになる時期で。でも、私たちがいた期間はずっと天候に恵まれていてまったく水浸しにならなかったですね。
樋口 すごいです。僕も昔ヴェネツィアに行ったことがあって、春頃でしたが、ゴンドラをお約束のように乗って、添乗員さんに本当に今の季節でよかったよって言われました。もう夏になると川が眩しくて目は開けられないわ、川が臭くなって匂うわ、冬は凍えるわ、って。
飯豊 そうなんですね。

飯豊 そうですね。1日でも降っていたら大変なスケジュールでした。本当に天候に左右されなくてよかったなって思います。
樋口 運が良かったですね! それにしてもあれだけ人が来るような場所で、どうやって人をシャットアウトして撮影したんだろうって思いました。
飯豊 人のいない時に撮っているのと、路地裏を挟んで少し奥に行くとまったく人がいなかったりするんです。リアルト橋も観光地だからすっごく人がいるけど、奥に行っちゃうと途端に人がいなくなって。
樋口 あんなに観光客が多い所でですか⁉
飯豊 そうなんですよ。ヴェネツィアには実はそういう所がたくさんあって実際に行けたことも、すごく貴重な経験でしたね。自分では行けないような場所ばかりでしたから。そういう土地や天候、イタリアのスタッフさんなど、いろんなエネルギーに助けられて今作はできあがったんじゃないかなと思います。

飯豊 キラキラした感じじゃない、ありのままのヴェネツィアが写っていたのが、私もすごくいいなって思いました。
樋口 そう、観光向けではないんですよ。ある意味「ヴェネツィアじゃなくてもよくないか」と思うくらいでした(笑)。でもその暗さ、ダークさが良かったですね。
飯豊 そうですよね。廃墟ばっかり行っていましたからね。どこか死の気配がするような雰囲気ですね。
樋口 それは、すごく出ていました。
飯豊 ヴェネツィアの街は明るい部分だけなく、陰の部分もすごくあって。露伴先生と京香が2人でオペラを見るシーンがあるんですが、圧倒されました。あと教会のシーンでも、何十年も開けていなかった扉を開けてもらって撮影したり、全部が特別でしたね。
観光でジェラートと食べるとか、美術館を見に行くとかじゃなく、撮影自体がどの時間も濃密で、情報過多になるぐらいの体験で。撮影に行くのがすごく楽しくて、自分のシーン以外の撮影も見学に行っていました。

飯豊 小学校の頃からこの世界にいるので、仕事で海外に行くことは何回かあって、そういったところでいろんな経験をさせてもらっている感じですね。
樋口 前作の舞台となったルーブル美術館も、撮影で初めて行ったんですか?
飯豊 そうです。仕事で行っているので、プライベートでは行かないっていうのもあるかもしれないですね。観光もできるし、観光以外のことも見られるから、満足しちゃうのかもしれません。
樋口 最後に、今後こんな役を演じてみたいとかあったら教えてください。
飯豊 専門的な職業の役もやってみたいですし、あとは寓話のような作品にも出てみたいですね。今は世の中が暗くて、そういう時に自分は明るい作品を選んだりするので、やっぱり明るい作品に出たいなって思います。
樋口 それはいいですね。楽しみにしています。短い時間でしたが、すごくポジティブなパワーを受け取りました。今日はありがとうございました。
飯豊 ありがとうございました。

【対談を終えて】
暴力的な美で半径10メートルを制圧する人、目の前のものすべてを包み込む聖母のオーラを持つ人にはお会いしたことがあるけど、「パワースポットが歩いてる」と感じたのは初めてでした。
人を惹きつける感性と物怖じしない胆力。飯豊さんのアグレッシブさが、生まれてこの方ずっとネガティブな僕にも心地良かったです。
きっとこの人はこれまでも、他者から見たらタイトロープを渡るような時も鼻歌混じりに潜り抜けてきたのではないかと思いました。まるで合気道の達人が降り掛かる災いを素知らぬ顔で回避するように。
飯豊さんの自己肯定感の「正体」は何だったのか。インタビューの後もしばらく考えていました。はたと気付く。幸せパワーでしょうか。愛し愛される者が持つ無双状態だったのでしょうか。
樋口毅宏


● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊『無法の世界』(KADOKAWA)が好評発売中。カバーイラストは江口寿史さん。現在雑誌『LEON』で連載小説「クワトロ・フォルマッジ-四人の殺し屋-」を執筆中。
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『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
荒木飛呂彦の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を実写化したテレビドラマの映画版第2作。漫画家・岸辺露伴はヴェネツィアの教会で、仮面を被った男の恐ろしい懺悔を聞く。それは誤って浮浪者を殺したことでかけられた「幸せの絶頂の時に“絶望”を味わう」呪いの告白だった。「幸福になる呪い」から必死に逃れようと生きてきた男は、ある日無邪気に遊ぶ娘を見て「心からの幸せ」を感じてしまう。その瞬間、死んだ筈の浮浪者が現れ、ポップコーンを使った試練に挑まされる。「ポップコーンを投げて3回続けて口でキャッチできたら俺の呪いは消える。しかし失敗したら最大の絶望を受け入れろ……」。奇妙な告白にのめり込む露伴は、相手を本にして人の記憶や体験を読むことができる特殊能力を使ってしまう……。やがて自身にも「幸福という名の呪い」が襲いかかっている事に気付く。岸辺露伴役の高橋一生、担当編集・泉 京花役の飯豊まりえらレギュラー陣のほか、井浦新、玉城ティナ、戸次重幸、大東駿介らが出演。
5月23日(金)ロードショー
HP/映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』公式サイト
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