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2025.05.23

飯豊まりえ「幸せなことをずっと経験するうちに、何が幸せかを感じられなくなってしまうのが一番の絶望」

人気ドラマの映画版2作目となる『岸辺露伴は動かない 懺悔室』で漫画家の岸辺露伴を担当する編集・泉 京香を演じる飯豊まりえさん。全身からポジティブなパワーを発散し、輝くばかりの飯豊さんに今回の映画のこと、仕事のこと、常に前向きに生きる人生について伺いました。

CREDIT :

文/井上真規子 写真/トヨダリョウ スタイリング/高木千智 ヘアメイク/笹本恭平 編集/森本 泉(Web LEON)

飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴
『さらば雑司が谷』『タモリ論』などの著書で知られる作家の樋口毅宏さんが、時代の先端を走る女神たちの魅力に迫る連載対談企画「樋口毅宏の手玉にとられたい!」。今回のゲストは、モデルで俳優の飯豊まりえさんです。小学生の時にティーン雑誌『ニコプチ』でモデルデビューしたのち、『Seventeen』『Oggi』など人気雑誌の専属モデルとして活躍。2012年には女優デビューを果たし、すでに10年以上のキャリアを積んでいます。

2020年には、荒木飛呂彦氏原作の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品である『岸辺露伴は動かない』を実写化したNHKテレビドラマシリーズにて、漫画家の岸辺露伴を担当する編集・泉 京香を、独特の存在感で熱演。

今年の5月には、映画版待望の2作目となる『岸辺露伴は動かない  懺悔室』が公開されます。オールヴェネツィアロケだったという今作の撮影秘話から、飯豊さんのポジティブな人生観まで、樋口さんがたっぷり伺いました!
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「痛いところをグサグサやられて最後までハラハラしながら見ていました」(樋口)

樋口毅宏さん(以下、樋口) 新作の『岸辺露伴は動かない  懺悔室』、ひと足早く観せていただきました。相手を“本”に変えて生い立ちや秘密を読み、指示も書き込めるという特殊能力を持った漫画家・岸辺露伴が、“取材”と称して担当編集の泉 京香と奇妙な世界に立ち向かうこのシリーズですが、新作もすごく面白かったです!

飯豊まりえさん(以下、飯豊) ありがとうございます。

樋口 アランを彷彿とさせる幸福論だったり、自己責任や罪の意識のつめ合わせだったり、めちゃくちゃ深いなと。「最高の幸せは最大の絶望を連れてくる」ってフレーズも思いっ切り刺さりました(笑)。僕は根が小心者なので、痛いところをグサグサやられて最後までハラハラしながら見ていました。

飯豊 本当にそうですよね。
飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴
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樋口 岸辺露伴シリーズはテレビドラマで9作、映画版も『岸辺露伴  ルーヴルへ行く』(2020年公開)に続く2作目で、もはや飯豊さんの代表作ともいえる作品になったわけですが、このシリーズに対してどういう思いがありますか?

飯豊 私が演じる泉 京香という役は、原作の漫画では『富豪村』(ドラマシリーズでは1作目)という作品にしか出てこないキャラクターで、ドラマでも次は出られるのかな? と毎回直前までわからなかったんです。それが映画化もされて、今回もこういう形で新作を、しかも『懺悔室』という原作の原点ともいえる作品を、また皆でできることに驚いています。

樋口 そうですね、『懺悔室』は原作の1作目なんですよね。

飯豊 はい。ただ、『懺悔室』は露伴先生ですら受け取り側の芝居なので、京香はどう絡んでいくのかなと思っていたら、脚本では見事に本編とはまた違うところに入り込んだので、小林靖子さん(脚本家)はすごいなって思いました。
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飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴
樋口 劇中はずっと切迫して、ヒリヒリした感じだから、飯豊さんが「露伴先生〜!」って出てくると正直ホッとするんですよ。

飯豊 光みたいな役ですよね!

「荒木先生も寄せてくださったのかな?と思ってうれしかったです」(飯豊)

樋口 荒木先生はご自身の著作『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』で、「泉 京香は実は悪役、しかもかなり手強い敵です」って言っていて。僕はこれ、漫画家が描く漫画家が主人公の岸辺露伴シリーズで、担当編集である泉 京香には荒木先生の複雑な思いがこめられているんじゃないかなと思いました。こういう人がいたらいいな、でも実際いたらちょっと面倒かな、みたいな(笑)。

飯豊 そうかもしれないですね。


樋口 「ミューズであり、エネミーである」とも言っていて、これは絶対荒木先生の照れ隠しだよなって。それを飯豊さんは、見事に二次元から三次元で具現化しているなと思いました。

飯豊 ありがとうございます。
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樋口 飯豊さんは、これまでにも漫画が原作の作品をたくさん演じられていますが、原作作品には独特の難しさがあるのかなと思いました。

飯豊 私は原作があってもなくても、演じ方はあまり変わらないんです。でも原作がある作品だと演じる時に原作からチョイスできる材料がたくさんあるので、それはすごくありがたいなと思います。どれを入れ込もうかなって考えたりしますね。

樋口 なるほど〜。

飯豊 とはいえ京香は天然で直感で動いて、ある種特殊能力を持っているようなキャラクターなので、作為的にやってしまうと成り立たないんですよね。計算高い人に見えてしまうので。だからそこは意識しながらも、あくまでも本気で演じています。

樋口 飯豊さん演じる泉 京香は、原作に近いんだけれども、きちんとした解釈の上でオリジナルの肉付けがされていて素晴らしいなと思うんです。そもそも、原作の泉 京香はこんな美人じゃないですから!

飯豊 身長はもうちょっと低いですよね。原作の『ホットサマー・マーサ』※では、京香の身長が伸びているように描かれていたから、もしかして荒木先生も寄せてくださったのかな? と思って、うれしかったです。
※ドラマ化された後の2022年に描かれた、岸辺露伴シリーズの新しい話。
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飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴

「万華鏡を回すみたいに、色んな人生を見ている感じ」(飯豊) 

樋口 今作の『懺悔室』では、“縁起が悪いとされること”が出てきました。いわゆる迷信で信じる、信じないはあると思うんですけど、飯豊さんは験を担ごうとか考えたりしますか?

飯豊 徳は積めるなら積みたいですね。人助けだったり、相手に感謝を伝えるだったりは意識的にしています。あとは「人じゃない何かがが見ているかもしれないから、ずるはしないでおこう」みたいな意識はありますね。

そういうすべてのことが繋がって未来が起きると思っていて。振り子の法則じゃないけど人生はいいことばかりじゃなくて悪いことも絶対に起きてしまう、でもできるだけそうならないように日頃の行いを良くするって感じですかね。

樋口 まさに、今作の最大のキーワードである「最高の幸せは、最大の不幸を連れてくる」ですね!

飯豊 そうですね。「こういうことが起きるかもしれないから未然に防ごう」とかは考えるんですけど、基本ポジティブ思考で私は運がいいと思っていて、自分にはそういうことが起きないって暗示をかけているのかも。今まで大きなトラブルに巻き込まれたことも、大きい怪我をしたこともないので。
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飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴
樋口 それはすごく伝わってきます。今日、この部屋に入ってこられた時もすごくポジティブなエネルギーを感じました。

飯豊 ありがとうございます。

樋口 先ほどの「何かが見ているかもしれないからズルしない」っていうのは古風な面というか。「おてんとさんは見ているぞ」みたいな、昔からお年寄りが言ってきたようなことを密かに守られているんだなって。

飯豊 そうですね。出会う人みんなが私にそういう色々なことを教えてくれるんです。人生の師匠がたくさんいるみたいな感じですね。

樋口 それは素敵ですね。

飯豊 いろんな人の人生の話を聞くと、漫画を読んでいるような気持ちになるんです。「こういうことで、人には悲しいことが起きるんだ」みたいな。自分が演じる役も、台本を見てその人の人生を知って、こういうことが起きるんだ、ってすごく俯瞰して見ていて。それを繰り返しているうちに「これはやっちゃえ」とか「やっちゃいけないな」とか選択ができるようになってきた気がしています。
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芳根京子 樋口毅宏 WebLEON   LEON   雪の花
樋口 本当に人ってちょっとした躓きで変わってしまうし、悪い方向にいってしまうんですよね。飯豊さんは色々な役を俯瞰的に眺めて演じていくことで、これまで自分が経験してない人生経験を学習しているんですね。

飯豊 そうですね。カシャカシャって万華鏡を回すみたいに、色んな人生を見ている感じ。これはすごく綺麗、これはおどろおどろしい、怖いなとか。

「人生を重く捉えてないんです」(飯豊) 

樋口 「最高の幸せは、最大の絶望を連れてくる」についてですが、飯豊さん自身はどんな幸せを求めていますか? 常に最高の幸せを求めるのか、それとも今作の登場人物に出てくる「二番目ぐらいがちょうどいい」って思うのか。

飯豊 それって、その時々によりますよね。でも、二番目が最高の幸せだって後から気づく場合もあると思います。二番目を与えられたからこそ、本当は一番が良かったんだって自覚することもあるし、二番目にしかわからない経験や気づきもあるから、それはそれでいいのかなと思うんです。

樋口 とてもポジティブな受け取り方だと思います。

飯豊 そうですね。二番目も最高じゃないですか? 人生って凸凹しているからこそ幸せを感じられると思うんです。死んで棺桶に入った時の走馬灯で、ずっと幸せな映像だけ流れるのが幸せか? って言ったら、個人的には違うなと。そういう意味でも自分は幸せな道を歩んでいると思います。
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飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴
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樋口 辛いことや悲しいことも、人生のスパイスにしていくという。

飯豊 はい。以前『あのコの夢を見たんです。』というドラマで、映画の『アバウト・タイム』みたいな人生を何回でもやり直せる役をやったことがあるんです。好きな男の子に告白して振られて、その人と付き合ってプロポーズされるまで人生を何回もやり直して思い通りにするっていう。

でも、結局最後にまた全部をやり直すんですよ。やり直すことをする前にやり直すみたいな。幸せなことをずっと経験するうちに、何が幸せかを感じられなくなってしまうのは一番の絶望だなって思うので、時には悲しいことでも流れに身を任せてみて、人生色々あってこそだよねって考えで生きています。

樋口 ご自身の人生もある種、俯瞰で見ているんでしょうね。

飯豊 そうですね。「これがダメならこの人生ダメだ」とかも思わないし、「絶対」っていうワードが自分の中にないんです。

樋口 本当にポジティブな方なんだということがよくわかりました!

※後編に続きます。
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飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴
▲ チェックシャツ22万円、スカート28万6000円、シューズ16万5000円/すべてボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)、 ベルトはスタイリスト私物
飯豊まりえ 樋口毅宏 WebLEON   LEON   岸辺露伴

● 飯豊まりえ(いいとよ・まりえ)

1998年1月5日生まれ、千葉県出身。Oggi専属モデル。2012年の女優デビュー以降、映画、ドラマ、CMなど数々の話題作に出演する。近年の代表作に、ドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズ(NHK)、「君と世界が終わる日に」シリーズ(日本テレビ/Hulu)、「ひねくれ女のボッチ飯」(テレビ東京)、「オクトー ~感情捜査官 心野朱梨~」シリーズ(読売テレビ)、「何曜日に生まれたの」(ABCテレビ)、映画『暗黒女子』、『いなくなれ、群青』、『惡の華』、『シライサン』、『くれなずめ』、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』など。
SNS/公式X公式Instagram

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● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)

1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊『無法の世界』(KADOKAWA)が好評発売中。カバーイラストは江口寿史さん。現在雑誌『LEON』で連載小説「クワトロ・フォルマッジ-四人の殺し屋-」を執筆中。
SNS/公式X

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『岸辺露伴は動かない  懺悔室』

荒木飛呂彦の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を実写化したテレビドラマの映画版第2作。漫画家・岸辺露伴はヴェネツィアの教会で、仮面を被った男の恐ろしい懺悔を聞く。それは誤って浮浪者を殺したことでかけられた「幸せの絶頂の時に“絶望”を味わう」呪いの告白だった。「幸福になる呪い」から必死に逃れようと生きてきた男は、ある日無邪気に遊ぶ娘を見て「心からの幸せ」を感じてしまう。その瞬間、死んだ筈の浮浪者が現れ、ポップコーンを使った試練に挑まされる。「ポップコーンを投げて3回続けて口でキャッチできたら俺の呪いは消える。しかし失敗したら最大の絶望を受け入れろ……」。奇妙な告白にのめり込む露伴は、相手を本にして人の記憶や体験を読むことができる特殊能力を使ってしまう……。やがて自身にも「幸福という名の呪い」が襲いかかっている事に気付く。岸辺露伴役の高橋一生、担当編集・泉 京花役の飯豊まりえらレギュラー陣のほか、井浦新、玉城ティナ、戸次重幸、大東駿介らが出演。
5月23日(金)ロードショー
HP/映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』公式サイト
©2025『岸辺露伴は動かない  懺悔室』製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

※掲載商品はすべて税込み価格です

■ お問い合わせ

ボッテガ・ヴェネタ ジャパン 0120-60-1966

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