2020.11.21

リーダーに必要なのは、MBAよりアルバイト!?

サイゼリヤでバイトしている星付きシェフとして有名な村山太一さんは、「MBA取得よりバイトのほうが成長できる」と断言しています。その理由は……。

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文/村山太一(「レストラン・ラッセ」オーナーシェフ)

記事提供/東洋経済ONLINE
「仕事で成長したい!」と思ったときに、MBA取得は1つの選択肢でしょう。しかし、東京・目黒にあるミシュラン一つ星イタリアン「ラッセ」のオーナーシェフ・村山太一氏は、「MBAよりバイトのほうが成長できる」と断言しています。『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』より、その理由とバイトするときの鉄則をお伝えします。 
写真提供/shutterstock

高校生の上司に素直に従う星付きシェフ

僕はサイゼリヤでは一番下っ端の立場です。サイゼリヤではバイトにランクがありますが、僕は週に1回ぐらいしか入れない最弱のスタッフなので(笑)、ずっとランクは低いままです。

僕にはそんな立場が心地よい。上司は高校生なので、向こうは45歳のおじさんに指示を出すのはやりづらいかもしれません。

でも、自分で言うのも何ですが、僕は何でも「ハイ」と素直に従って、何かするときは「この作業を先にやっていいですか?」と確認するので、実に使いやすい下っ端だと思います。

弱肉強食のサバンナでは、下っ端はリーダーに従うのは当たり前。僕は自分の店ではリーダーであっても、サイゼリヤでは群れに入れてもらっている立場だから当然です。ここで、社会人がMBA代わりにバイトするときの鉄則をお教えします。
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鉄則① 自分を消して歯車になれ

働いている最中は完全に歯車になるべきです。なぜなら、そうしないと自分の知識や経験をその場でひけらかしてしまうからです。考えてもみてください。昨日今日入ったばかりのバイトが、「俺だったら、この作業はこうします」なんて言ってきたら、誰でも「何も知らないくせに大きなお世話だ」と思うでしょう。

バイト先にはその会社なりの仕組みやルールが出来上がっているので、そこに完全に組み込まれるほうがいい。それができない人にバイトはオススメしません。自分の社会経験を生かそうと思っているなら、やめたほうがいいです。

僕もサイゼリヤには学びに来ているので、星付きシェフ村山太一のスイッチは完全にオフにしています。サイゼリヤの仕組みを肌でも頭でも吸収しなきゃならないので、「俺だったら~」なんて余計な考えが入り込む隙はありません。そんなことを考えている時間があるんだったら、お客様を満足させることに没頭したほうがいい。

それでも、仕事が終わって「今日は大変だったな」と振り返っているときに、「あのやり方はすごかったな」「ああいう場面では、もっといい方法があるかもしれない」と気づいたことが次々に出てきます。それを自分の本業で生かせれば上出来です。

鉄則② 完全にマニュアルに従え

飲食店や接客業では、たいていどこでもマニュアルがあります。口角を上げる角度まで決まっていて、目尻を下げる笑いをしなきゃいけないとか、相手の目を一瞬見てニコっと笑って安心させるとか、いろいろと細かいことが書いてありますが、僕だったら誰よりも一生懸命にそれをやってみます。マニュアルと一体化するほど没入すると、雑念がなくなりどんどん楽しくなってきます。
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鉄則③ たくさん失敗しろ

バイトを徹底的に楽しむためには、全力で取り組むのと同時に、怒られるときは本当に怒られなきゃいけないと、僕は思います。

たとえ学生に怒られても、自分より経験が浅い社会人に叱られても、その場で自分が一番下っ端なら、上の人の言葉は謙虚に受け止めなきゃいけません。僕は、僕以外は全員先輩だと思いながら働いています。

こういう場面でこそ、バカであることは大事です。自分は何もわからないからと素直に教えを受ける心を持ち、人のために無心で働けることが、僕の考えるバカです。

バカになるには、これまでの経験や実績を脇に置いておくこと。自分が気持ちよく働くためにも、真剣勝負でなきゃいけません。そのためにはプライドを脱ぎ捨てて、たくさん失敗して、たくさん怒られる覚悟を持っておくことです。

人は努力して何かを達成し、成功体験を積み重ねていくと、それが自信になります。けれども、それは傲慢や思い上がりという副作用があることを忘れてはいけません。それでつぶれていくシェフも結構います。

人は、「これでいい」と思ったところから衰退は始まります。現状維持なんてもってのほか。だから学びのチャンスを最大限に生かさなくてはなりません。

それに、社会人になってそれなりに経験を積むと、怒ってくれる人はいなくなります。誰かに怒られる経験は初心に返れて、「自分は新入社員にもっと丁寧に教えよう」と気づくこともあるので貴重な体験になります。

バイトって、実はリーダーとしての修業に最適なんですよ。「先輩」と呼ばれるようになったら、それだけで自分は立場が上のように思えますし、「課長」なんて肩書で呼ばれたら、自分は人間的にも特別なんだという勘違いが生まれそうです。「先生」などと呼ばれたら、自分を見失わないほうが難しい。そうならないようにしていても、気が付かない間に慢心や過信は、心に巣くっています。

実はこれ、思考停止なんです。おごり高ぶらず、思考停止しないためにも、何でもいいから自分が一番下っ端になれる場をつくっておくのは大事です。

例えばゼネコンの社員は、孫請けの作業員に仕事を発注しますよね。もしその孫請け会社でバイトをしたら、そこで働く人の気持ちがわかるし、実際に現場がどう動いているのか体感として理解できるので、きっとよいリーダーになれると思います。
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ベテランのリーダーこそアルバイトをしよう

アメリカのドミノピザは、社長が売り上げの落ちている店や風紀が乱れている店のバイトの面接を受けに行くそうです。末端のスタッフは社長の顔を知らないので、「週に何日入れる?」みたいな会話をするんでしょう。不良社員だったら、「おじさんには大変な仕事だよ?」なんて偉そうな態度を取りそうな気がします。

そして、実際に働いてみる。すると、不良社員が隠れてピザを食べていたり、床に落としたものを捨てずに使っている光景を目の当たりにするのです。社長はそれをずっとメモっておきます。

ただ、水戸黄門のようにその場で「実は私は社長だ!」と正体を明かさないし、後でお白洲に引っ張り出して桜吹雪の入れ墨も見せません。後日、本社にその店の店長や社員を呼んで、再教育するのだそうです。

つまり、末端の人の気持ちに寄り添って再教育するということです。末端の気持ちを知るために自ら末端を体験しているのです。そこまでしないと、自分とは違う立場の人の気持ちはなかなかわかりません。

バイトはそれを体験できる貴重な場です。社会人として自分はベテランだと思っている人ほど、バイトをしておごりや固定観念を捨ててみてはいかがでしょうか。きっと新たな成長のステージに踏み出せます。

『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』

コロナでも黒字を達成し、「飲食業界の奇跡」とまで言われた星付きイタリアンのオーナーシェフ、初のビジネス書が発売。伝説の三ツ星レストランで副料理長にまで上りつめた著者が次に求めたのは、サイゼリヤの「すごい生産性」だった。経営するレストランの生産性は、なんと3.7倍に! 成長したければ、MBAを取るよりアルバイトをしよう。
26万PVのnote記事『目黒の星付きイタリアンのオーナーシェフは、サイゼリヤでバイトしながら2億年先の地球を思う。』で話題騒然! 「落とし穴に落ちない」で「最短で成長する」という、偏差値37の"バカ"が見つけた必勝法を初公開します。
著者/村山太一 飛鳥新社刊 本体900円+税
HP/www.asukashinsha.co.jp/bookinfo/9784864107655.php

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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