2025.11.06
【オヤジの本音バイブル14】
本音が「愛されるオトコ」と「嫌われるオトコ」の違いとは?
LEONは24年間、「モテたい」というオヤジの“本音”を叶えるためのアレコレを提案してきました。もう歳だからそっちは……なんて本音に蓋をせず、これからも人生を謳歌してほしい! 今回は、服飾史家の中野香織さんに、「愛されるオトコの本音」について綴っていただきました。
- CREDIT :
写真/人物・前田 晃(MAETTICO) スタイリング/坂井辰翁 ヘア/hanjee(SIGNO) メイク/星 隆士(SIGNO) 編集/市村広平、星野真琴(ともにLEON)
ということでお届けしてきた【オヤジの本音バイブル】。vol.14は、服飾史家の中野香織さんのエッセイです。
本音が「愛されるオトコ」と「嫌われるオトコ」の違いとは?──中野香織(服飾史家)

トークイベントの司会をした時のこと。
登壇者は3人のアーティスト。
美や造形をテーマに話をしたあとは
最新のクルマに
会場の注目が向くよう、つつがなく
話が進行する予定でした。
ところが、登壇者のひとり
画家の女性が、新車を見ながら
こう言ったのです。
「きれいでぴかぴかの車は、
面白くない」。
想定外の正直爆弾に
一瞬、場が凍りつきます。
彼女は淡々と続けます。
「泥だらけの古いクルマが
たくさん走っているほうが自然。
きれいな新車ばっかり
走っている日本は
おかしいのではないか」
あまりの率直さに
不意をつかれましたが
いや確かに彼女の言うことは
ごもっとも……という空気が流れ
むしろ、会場と壇上との間に
妙な一体感が生まれました。
もう一人の登壇者
写真家の男性がフォローします。
「新車を買って、家族が増えて
いろんなところへ行って、クルマも
傷がついたり汚れたりしていく。
買った時が最高なのではなくて
時間が価値を積み重ねていく。
写真のほうが
ぴかぴかの新車の写真より
価値があるよね」
この意見には主催者を含む
全員が賛同。近い将来
そのような写真のプロジェクトが
実現するかもしれません。
上品なだけの
場の空気を守るより
自分の心に率直に。
アーティストが本音を放ち
場の空気を破壊した結果
予期せぬ創造的な活動の
可能性まで生まれたのです。
率直に語られた本音は、パンクです。
破壊とともに創造をもたらします。
退屈で無難な関係を
エキサイティングでクリエイティブな
関係に昇華します。
私たちはもっと人を信頼し
率直に本音を伝える勇気を
もっていいのかもしれません。
とはいえ、アーティストのようには
生きられない凡人にとって
本音は諸刃の剣です。
率直さは好感を与えますが
下手をすると相手のみならず
自分まで斬ってしまう。
普通の男が本音上手な
愛される男になるためには
剣術以前に礼を知りましょう。
嫌われることがあるとしたら
本音の内容そのものよりもむしろ
伝え方の礼儀のほうに
問題があります。
愛される本音は、自分の感情と
願いに責任を負って語ります。
「私はこう感じた」「私はこうしたい」。
誰かを一方的に裁かず責めず
あくまで「私」起点の率直な
心のメッセージとして伝えること。
また、嫌われにくい本音の伝え方
として、短く具体的に伝えること
をオススメします。
抽象は角を立て
具体は角を丸めます。
「もっと気にかけてほしいんだよ」
ではなく
「金曜の夜にふたりで
夕食をしたいな」。
批判ではなく
願望形で伝えることも
相手の尊厳を
守るためには重要です。
「ほかの男とふたりで
出かけるなんて最低だ」
と責めるのではなく
「ぼくは傷つくので控えてくれたら
うれしいな」。
比較「前の彼女は……」
診断「君は○○な人だ」
永遠宣言「いつも・絶対」。
本音は征服の道具ではありません。
表層の予定調和を
破壊することで
心と心のあいだに強固な
橋を架けていく
創造的で人間的な表現活動です。
相手の尊厳を守る言葉を選び
責めず、期待を明確にし
次の一歩を提案する。
そんな小さな誠実を重ねるほど
心の絆は確実に深まり
関係はフレッシュに再生され
ワクワクする可能性に
溢れていきます。
そのたしなみにこそ品が宿り
ひいては愛され続ける
秘訣となるのです。
“愛される本音は自分の感情と願いに責任を負って語ります”

● 中野香織(Kaori Nakano)
株式会社Kaori Nakano代表取締役。ラグジュアリー文化を中心に取材・著述・講演・教育・企業アドバイザリーに携わる。日本経済新聞、北日本新聞など多くのメディアで連載、記事は英語版も作成、発信する。最新刊『「イノベーター」で読むアパレル全史 増補改訂版』が好評発売中。YouTubeではスーツ解説シリーズが人気で、2026年のスーツ生誕360周年に向けて着々と準備進行中。
※掲載商品はすべて税込み価格です
■ お問い合わせ
フレッド 03-5635-7040















