2025.09.07
【第4回】
美人秘書の恋愛談「どんなにいい男性でも浮気はする……」
生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか、大人の女性たちは何を求めているのかを、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で深掘りします。
- CREDIT :
取材/林 伸次 写真/田中駿伍(MAETTICO) 文/木村千鶴 編集/岸澤美希(LEON.JP)
本連載「林 伸次のLove la Bossa」では、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で大人の女性の本音を深掘りします。
第4回のゲストは、前回(こちら)に続いて、小雪さん(40代)です。
前編では、一緒にいてホッとするような中性的な男性がタイプなこと、信頼しあっていた彼がいたけれど、仕事との兼ね合いで結婚しなかったことなどを聞かせてもらいました。後半では30代でお付き合いした彼とのお話を伺います。

結婚するならこの人しかいないと思った相手に浮気をされ……
「頭が良くて博識だった。彼は大きな病気をしていて、挫折を知っているからこその優しさがある。とても人間愛にあふれているので尊敬していました。彼と知り合って私も成長した部分があります」
── 彼とは結婚しようと思わなかったんですか?
「思いましたよ。結婚するならこの人しかいないって思っていたし、彼も同じように思ってくれていたけど、彼の浮気が発覚して別れたんです」
── え、その彼がですか? びっくり。男性ってやっぱりみんな浮気するんですね。
「私も同じように思いましたよ、その時。どんなにいい人でも浮気するんだなって(笑)」
「彼の海外出張に帯同した時に、仕事中ひとりになっちゃうからって彼がiPadを貸してくれたんですよ。それで動画か何かを見ていたら、温泉宿からリマインドメールがポンっと来ちゃった。それでピンと来たのが最初です。彼に聞いたら、友達の代わりに予約してただけだ言って絶対に認めなかった」
── それはそうですよね〜、絶対に嘘を突き通すってみんな言いますよ。
「そこから疑心暗鬼になってしまい、仕事で使わない携帯が置きっぱなしになっていたので、それ見ちゃいましたね。結局、彼は私の友人と浮気してたんですよ。
すごいことするなこの人、と思って血の気が引いちゃったというか、あの時の私は真っ白な灰のようになっていました」

「でも見ちゃったんです。それでも私はあの時見て良かったと思っています。だって彼がそういう人だってこと、自分で判断できたから。
自分で決められる人生を送ることって大事だと思うんですよ。知らなければ知らないで悪くない人生はあったかもしれないけど、私は知りたいと思ったし、彼と向き合いたいと思ったから見ました。ショックで、帰りの飛行機はずっと泣いていましたけど」
「後で話し合った時に、彼が『本当にごめん、もう一回やり直してほしい』と言ってきました。でも私も未熟だったし、本当に人を信じられなくなってしまって、飲み行くと聞けば『どこに行くの? 誰と行くの?』となり、彼も窮屈で耐えられなくなって、終わりました。
私がもっと大人だったら広い心で彼を見守れたのかなと思って、ちゃんと信じてあげられればよかったなぁって、そこはちょっとだけ後悔しました。でもすごくいい勉強になったので、今ではいい恋愛だったと思っています」
── 全然気づかないまま結婚していた人生は、やっぱりなしですか?
「ありだと思いますよ。でも途中で彼の嘘に絶対に気づいてしまうと思う。嘘で誤魔化さずに向き合ってくれるなら、向き合いたいなとは思いますけど」
権力をもつと人は変わってしまうんですね
「いえいえ、その後にお付き合いした人との恋愛は、とんでもない目に遭ったなって感じでしたよ(笑)」
── あらら、それはどんな人だったんですか。
「元会社の先輩で、取締役にまでなった後、政治に目覚めて議員になった人です。会社にいた時はそんなに関わりがなかったんですが、議員になった頃に偶然会う機会があって。当時、彼は離婚調停中でしたが、離婚後にだんだん距離が縮んでいって、お付き合いするに至りました。ただ、付き合ってみたら、そんな人だと思わなかった……ということだらけでした」

「そもそもは話が面白く、刺激的な世界を色々と見せてくれた人だったから好きになったんですが、誇り高いというのかな、私の一挙手一投足に『それ恥ずかしいからやめて。僕のイメージに響くんだから気をつけて!』というようなことを言うんです。でもそんなに変なことをやっているつもりはないんですけどね」
── え〜、自尊心が高いのはわかりますけど、そんなことを言ってくるんですか。小雪さんはとてもきちんとした印象で、変なことをするような感じはまったくしませんよ。
『何があなたに関係あるの? それどうやってあなたにつながっていくの?』って思うじゃないですか。私名義のプレゼントなんですから」
── すごい越境だ。どうしたらそんなこと思えるんだろう。
「それから、僕のサポートを全部してほしいという人でした。『僕は今痩せたいから、一日三食油を使わないでお料理を作って』とか言うんですよ。え!? って思いました」
── 議員とか経験するとそうなっちゃうんですかね。それとも前からそうでしたか?
── そうか、以前はそういう人じゃなかったんですね。
「心優しい人でした。先輩も『昔は違ったのになぁ』と言ってましたから。権力を持つと人は変わってしまうんですね」
── 別れを選んだ理由は相手にもはっきり伝えましたか?
「はい、それはお伝えしました。でも彼は『あなたは僕のことを分かってくれていない』と言っていました。ちゃんとお別れをしたんですが、1年くらいずっと『別れたくない』と連絡が来ていて怖かったですね」

「そう思います。彼が奥様と別れた原因もわかりましたもん。元奥様は決して悪い人じゃない。もちろん色々あったのかもしれないけど、彼には思いやりがなかった。それは私も付き合っていてわかりましたし、元奥様と別れた後も直っていなかったから彼は原因を振り返ってないはず」
── 全男性、大事なのは思いやりですね。小雪さん、今は恋愛していますか。
「いえ、ちょっとお休み中です。先日後輩がマッチングアプリを登録してくれたんですが、なじめなくてすぐにやめてしまいました。でもまたいい恋ができたらいいなと思っています」
── きっとまたいい出会いがあると思います。今日は本当に貴重な話をありがとうございました!
【林さんから〆のひと言】

■ bar bossa(バール ボッサ)
ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185
● 林 伸次(はやし・しんじ)
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CDライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセイ「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。』(幻冬舎)、『恋愛は時代遅れだというけれど、それでも今日も悩みはつきない』(Pヴァイン)、最新刊は『30歳になってもお互い独身だったら結婚しようか』(三笠書房)。















