マックイーンが愛した「モナコ」を右腕に付けたい理由

常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之（FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。

CREDIT :: 文／田中知之（FPM）　イラスト／林田秀一

世界を舞台に活躍するDJ田中知之（FPM)さんが自らの美意識に叶った「男の定番」をご紹介する連載。今回のテーマは……。

■ Theme05「タグ・ホイヤーのモナコ」

俳優のポール・ニューマンの腕時計といえば、きっと皆さんはロレックスの手巻きデイトナのエキゾチック・ダイヤルのことを思い浮かべるでしょう。では、スティーブ・マックイーンの腕時計といえば、ホイヤー（現タグ・ホイヤー）のこのモナコですよね。

▲さまざまな逸話や背景が楽しめる価値ある復刻モデル
世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載することでリュウズを巻く必要がなくなったという意味も込めてジャック・ホイヤーがデザイン。奇しくも左利きでも使えるようになったという名作だ。
［ホイヤーモナコキャリバー11クロノグラフ］自動巻き、SSケース（39㎜）×ブラックカーフブレスレット。 63万円／タグ・ホイヤー

私がこの世界初の角型防水腕時計にして、世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントキャリバー11（クロノマチック）を搭載した時計の存在を知ったのは、今から30年近く前のこと。私は京都で映画のサウンドトラック盤のみをプレイするDJパーティーをスタートさせたばかりで、とにかく映画のサントラ盤を買い漁っていました。そしてサントラ盤から遡って映画を見直したり……そんななかで出合ったサントラ盤と映画が『栄光のル・マン』でした。

昨年1月に亡くなってしまったミシェル・ルグランの音楽も素晴らしかったのですが、マックイーン演じるアメリカ人レーサーの腕に光る四角い時計に、私の眼は釘付けになりました。当時はGoogle検索もなく、古本屋で時計雑誌を立ち読みして、この斬新なデザインの時計についてあれこれ調べ上げたものでした。

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左利き用モデルのようにリュウズが左側にあるモナコをマックイーンは映画の中で、右腕にしているのですが、彼は左利きではありません。ある記事によると、左ハンドルのレーシング・ポルシェを運転する際、左手はハンドルを握り続けるため、シフト・チェンジをする右手に時計をするほうが視認性が良いという理由から、彼自身がこのモデルをチョイスしたというのです。グッとくるエピソード！　

しかし、当時20代の私がヴィンテージのモナコを手に入れるのは夢のまた夢のような話。　

実は昨年9月にモナコ誕生50年を祝うパーティーが東京国立博物館法隆寺宝物館で開催され、僭越ながら私はDJとして呼んでいただいたのですが、そこで、映画でマックイーンがしていたモナコをほぼ忠実に再現した現行モデルに実際に出合い、そして決意してしまいました。今まで一度も時計をしたことのない右腕にこのモナコを付けたい、と。

しかし、ひとつ気が付いたことがあります。私の愛車は英国のクルマなので、右ハンドルだということを。