2020.05.14

VOL.02「美人の前では、奴隷であるべき?」

深夜4時、美女に頼まれたお買い物

人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんが、長い業界生活の中で見聞きし、あるいは遭遇した、恋するオヤジさんたちの愛すべき艶話をこっそり披露する連載です。

CREDIT :

文/野呂エイシロウ イラスト/早乙女道春、林田秀一

人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんが、世の恋するオヤジさんたちの愛すべき艶話をこっそり披露する連載。第2回のテーマは……。

■Theme02「美人の前では、奴隷であるべき?」

「お前みたいな男が、そんな美人と!?」と言われ続けている男がいる。彼は以前、誰もがうらやむ女優似の女性と付き合っていた。ある冬の深夜4時。突如彼女からの着信、「こんばん〜」という挨拶もそこそこに「今夜、なんだか寂しいの。悪いんだけど良さげな玩具を買ってきて」と命令形で電話は切れた。
男は一瞬迷ったが、とりあえずシャワーを浴びた。「もしかして」と期待を膨らませ、入念にヒゲを剃り髪型を整えコートを羽織ると、24時間営業の店へ行き、彼女が求めているものを手に入れ、マンションへ。 「買い物は口実のはず」と確信しインターフォンを押すと、ドア越しにガウンを羽織った彼女が立っていた。

「買ってきたよ」と袋を手渡したら「ありがと」という素っ気ないお礼のあと、「はいっ」と一万円札を渡され、ピシャリとドアが閉まった。

そんなものだ。が、この話には後日談がある。彼女と焼き鳥屋さんのカウンターでムルソーを傾けていた時、「あの時、本当は入れてもらえると思ったんだ」と口にした。すると「私だってそのつもりだったわよ。でも本当に買ってきちゃうし……コートを開いて素っ裸だったら面白かったのに」と。奴隷になりきれば願望は実ったのだ。

「今からどう?」と誘ってはみたものの「玩具が壊れたら、またね」と、残りのワインを飲み干し、頬のキスだけで去っていったという。奴隷になりきれない男は、大きなチャンスを逃したのだ。ドM具合がボクっぽいって? それはまた別のハナシということで。

野呂エイシロウ

『天才・たけしの元気が出るテレビ‼』で放送作家デビュー。気さくな人柄と豊富な知識、そして巧みな話術にファンも多い。現在は戦略的PRコンサルタント業務など、多忙を極める。

2019年12月号より

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