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2018.10.11

その価値100億!? トヨタとソフトバンクが投資する「多眼カメラ」とは?

多眼カメラ「L16」を製造するスタートアップ企業Light社に100億円超の出資をしたソフトバンク。同社はトヨタと共同で会社を設立するなど、次世代への取り組みを加速させています。そんなIoTの世界で「多眼カメラ」が果たす役割とはどのようなものなのでしょうか。

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文/平井敦貴

10月4日に行われた、トヨタ・ソフトバンク共同記者会見より。合弁会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」の設立が発表された。
10月4日に行われた、トヨタ・ソフトバンク共同記者会見より。合弁会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」の設立が発表された。

グローバル企業が見据える未来とは

10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクによる合弁会社の設立が発表され、大きな話題となりました。企業風土の異なる2社が手を組むことは、多くの人の目に意外に映ったかもしれません。しかしそこには、世界で戦う企業同士が持つ、共通の「未来戦略」が見え隠れもしているのです。
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AIと自動運転によるモビリティ社会はすぐそこまで来ている

実はトヨタ自動車は今年に入り、自動運転の普及やライドシェア社会を見据えて「自動車メーカー」から「モビリティ・カンパニー」への転換を表明しました。これまでは自動車という「製品」の製造・販売を主軸としてきましたが、今後は人々の「移動手段(モビリティ)」を扱う企業へと舵を切ったのです。

一方ソフトバンクは通信事業を核にしながらも、ここ数年「IoT」や「AI」への積極的な投資を行ってきています。例えば、スマートフォン向けCPUを扱う英国アーム社の買収のほか、自動車産業との関わりで言えば、配車サービスを行う米国ウーバー社への出資などが挙げられるでしょう。
「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ」の事業イメージ。
「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ」の事業イメージ。
そんな2社が共同設立した新会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」は、2020年代半ばまでに交通事故のない自動運転の実現を目指すとし、ITと自動車を結びつけた様々なモビリティ・サービスの提供を打ち出しています。有人・無人を問わずクルマは常時インターネットに接続され、そこから吸い上げられたビッグデータをAIが解析し、最適な移動手段をシームレスに提供する、そんな未来はすでに現実になろうとしているのです。
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複眼カメラを製造する「Light」 とは?

ところで、今年の7月にソフトバンクが自社のファンド「ビジョン・ファンド」を通じて、米国のスタートアップ企業Light社に100億円以上の出資をしたのをご存知でしょうか。Light社は多眼カメラの開発を行っており、すでに16個のレンズを持ったデジタルカメラ「L16」などを製品化しています。
孫正義社長は100億円という巨額出資の理由について、「AIが正確に外界を認識する『眼』として、多眼カメラの技術に注目している」ということを述べています。また、トヨタとの共同記者発表の中でも、Lightの多眼カメラが自動車に設置されることで走行時の3D空間認識が高まり、事故を未然に防げることをプレゼンテーションしました。
トヨタ・ソフトバンク共同記者会見での資料より。レンズが複数になった分、それぞれのレンズの視差から距離を演算することが可能になり、3Dの認識能力が向上します。
トヨタ・ソフトバンク共同記者会見での資料より。カメラのレンズが複数になった分、それぞれのレンズの視差から距離を演算することが可能になり、3Dの認識能力が向上します。
このように、多眼カメラはこれまでの「写真や映像を撮る」装置とは次元の違う「3D空間の認識装置」となっているのです。
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AIの『眼』となる多眼カメラ

AIが人知を超え、倍々ゲームで進化していくターニングポイントを、技術的特異点(シンギュラリティ)と呼びます。しかしAIはあくまで人工知能であり、人間で例えるならば頭脳でしかありません。ですがここに、情報をインプットするデバイスとして多眼カメラが加わると、現実世界をより高精度の3D空間としてデータ化し、情報を得ることができます。まさしく孫正義社長が言った「AIの『眼』」となるのです。

Light社の「L16」を例に取っても、16個それぞれのレンズから得た画像情報を解析・合成することで、後からピントを変えたり、明るさの変更や画角の調節ができたりと、これまでの写真の概念を覆すことが可能となっています。

また、身近なところでは一部のスマートフォンでも「多眼カメラ」は搭載され始めています。先日発売されたファーウェイ「nova3」では全面・背面にそれぞれ2つずつのカメラが搭載され、撮影と同時にAIによる解析も行われる仕様となっています。
これらの事例で分かるように、多眼カメラで撮られた画像情報が常にアップロードされ、解析が行われるようになれば、AIはこの「現実世界」を非常に高い精度で把握できるようになります。もちろん空間だけでなく、多眼カメラに写る「全ての物体」がその解析対象になりますから、地形情報のほか、人の顔やクルマのナンバーに至るまで、AIのデータベースには膨大な3D情報が蓄積されていくことになります。

将来、日本中のクルマに多眼カメラが設置され、AIで管理されるようになったらーー小説『1984』で描かれた「ビッグ・ブラザー」のような監視社会が、着々と現実に向かってきているのかもしれません。
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あらゆるデバイスが多眼カメラを搭載

ここからは未来予測となりますが、今後、多眼カメラはどのようなシーンで使われるようになるかを考えてみたいと思います。

まず、スマートフォンに搭載されるのは既定路線だと考えられます。そうなると、一般的なデジカメも追従するように多眼化に向かうでしょう。となれば、写真や映像コンテンツも3D化せざるを得なくなり、もしかすると「3Dテレビ」の復権があるかもしれません。

ほかにも、ドライブレコーダーや防犯カメラに使用され、事故や犯罪の軽減、犯人の検挙に寄与していくことは想像に難くありません。

ビジネスユースでは、工場での検品作業なども多眼カメラが行うかもしれませんし、オフィスでのビデオ会議は3Dの立体映像で行われる…ということが実現するかもしれません。

いずれにしても、「カメラ」は今後、単体ではなくAIと結びついたデバイスとなるのはほぼ間違いありません。

ストリーミング音楽が主流となった今、かつてアナログレコードで音楽を聴いていた時代を懐かしく感じるように、一眼レフで写真を撮っていた時代を懐かしむ未来が、刻一刻と近づいているのです。
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Light L16 Camera

日本での購入はこちらより。

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