2025.08.25

気持ちが整う香りの道で淑女とデート

これだけ連日猛暑が続くと、外へお出かけは正直ぐったり&うんざり、ついおウチで過ごすデートばかりで、ちとマンネリ気味という御仁も多いのでは。ちょっと新鮮なデートシーンを求めている方に、この暑い季節にぜひともオススメしたいのが、お香の奥深~い香りの世界を楽しむ「香道」です。編集部の堀川が体験してきましたので、ご紹介いたします。

CREDIT :

写真/トヨダリョウ 取材・文/大出剛士 編集/堀川正毅(LEON)

今回お邪魔したのは「香十 銀座本店」

香りを当て合うことで彼女とお近づきに♡

香道とは、華道や茶道と並んで日本伝統文化「三芸道」とも言われていて、室町時代後半に登場した東山文化の祖、八代将軍足利義政が命じてその基礎を作らせたものだそう。そして平安時代に貴族たちが優雅な生活文化として香を位置づけたことを継承し、日本人の四季への感性や文学詩歌と深く結びつけて体系化した、世界に類のない香りの芸道のことなんです。

細かい歴史の説明は割愛しますが、まさに千年余にわたる歴史の重みと、嗅覚という非常に繊細な感性が求められます。「鼻が利く~」なんて言い方もありますが、それはこんな奥深い歴史から来ているのかもしれません。華道や茶道に比べて聞きなれないこともあり、日本人として何だかちょっと気になりますよね。

お香といえば、お線香などでなじみがある人も多く、最近ではルームフレグランス代わりに家で楽しむ人が増えているとか。女性人気もうなぎ上りなんてこともあり、色々なブランドから新作が登場しています。
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芝浦B.クリニック
人間の五感のなかでも、特に嗅覚は太古から存在する原始的な感覚器とされています。嗅覚の情報は見たり聞いたりする情報と違って、本能的な行動や感情、直感に関わる大脳辺縁系にダイレクトに届くのが特徴。そのため香りを嗅ぐと、何の香りかを判断する前に感情が動きます。

あの香りを嗅ぐと不思議と昔付き合っていた彼女を思い出すなんてこと、ありますよね。さらに、香りの情報は脳の視床下部に伝わり、人間の生理的な活動をコントロールする自律神経やホルモン、免疫系に影響を与えるため、心身のバランスを整えることも。香りは一瞬にして脳を活性化し、毎日ヘトヘトで疲れ切ったオヤジの感情をリセットするのに有効な手段なのです。
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今回ご紹介する香道は、2種類の香の良否を比べる「香合わせ」よりも一歩前進した「組香」と呼ばれるもので、文学的なテーマが多いのが大きな特徴です。なかでも平安時代に書かれた『源氏物語』をテーマにした、代表的な「源氏香」となります。香炉から立ち上る5種類の珍しい香木を順番に嗅いで、そのなかから同じ香木を当てるという、まさに貴族に愛された優雅な遊びです。

ちなみに香道では、嗅ぐことを「聞く」と言います。嗅ぐのとは違って、心を傾けて香りを聞く、心の中でその香りをゆっくり味わうという意味があるそう。何だかこんな言い方までとても新鮮で美しいですよね。色々なお作法などもあってハードルがちょっと高そうですが、初心者でも優しく教えてもらえるのでご安心を。
香道 香十 銀座本店 Web LEON
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会場となったのは、東京・銀座にある「香間 暁」。約450年にわたる香の世界を追求してきた日本香堂のビル「銀座香箱」ビルの3階にあって、香道以外にも、お香にまつわる様々なワークショップも行っています。ちなみに、テーブルとお座敷があります。
香道 香十 銀座本店 Web LEON
体験した編集部・堀川がお世話になったのは、御家流師範である丸山堯雪先生。大学在学中より御家流二十一代 三條西堯山宗家に師事。その後、三條西堯雲宗家、三條西堯水宗家に師事。書道は17歳で金子鷗亭氏に入門し、現在まで50年以上にわたり研鑽を積まれています。アメリカ、フランス、ドイツ、中国など、海外での香席経験も多数あって、まさに香道を知り尽くした方です。
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香道 香十 銀座本店 Web LEON
使用する香木は、伽羅(キャラ)、羅国(ラコク)、真南蛮(マナバン)、真那伽(マナカ)、佐曽羅(サソラ)、寸聞多羅(スモタラ)という、6種の六国(りっこく)と呼ばれるもの。これらは日本産ではなく、カンボジアやベトナム、タイ、マレーシア産ということに驚きです。ちなみ、伽羅は現在新しいものはもう生まれないという超希少&超高額なもので、その優雅で奥深い香りはぜひこの香道で味わいたいもののひとつです。
「源氏香」、スタートです。まずは先生がその日に使用する香木を数種類用意して、任意の順にひとつずつ香炉で焚いていきます。
▲ 「源氏香」、スタートです。まずは先生がその日に使用する香木を数種類用意して、任意の順にひとつずつ香炉で焚いていきます。
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先生から回ってくる香木の器=聞香炉をしっかり鼻と心で「聞いて」、その香りを記憶にとどめます。左掌を水平にして聞香炉をのせて、右手の親指と小指をのせて覆いながら香りを貯めるのがポイントです。
▲ 先生から回ってくる香木の器=聞香炉をしっかり鼻と心で「聞いて」、その香りを記憶にとどめます。左掌を水平にして聞香炉をのせて、右手の親指と小指をのせて覆いながら香りを貯めるのがポイントです。
親指と人差し指の間から、深く息を吸い込むように3度嗅いだら、次のメンバーに聞香炉を回します。聞香炉を水平に保って、上に載っている香木がずれないように移動させることも大切です。
▲ 親指と人差し指の間から、深く息を吸い込むように3度嗅いだら、次のメンバーに聞香炉を回します。聞香炉を水平に保って、上に載っている香木がずれないように移動させることも大切です。
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5種類すべて嗅ぎ終わったら、記憶をたどりながら、どれとどの香りが一緒だったか? を頭の中で整理します。そして5種類の香りを5本の縦線で表し、同じ香りがあれば線の頭を横線で結び、その正解数を競います。ちなみに正解の可能性は何と52通り。この数から『源氏物語五四帖』を連想させ、その初巻である『桐壷』と最終巻である『夢の浮橋』を除き、各巻に図柄を当てはめたのがこの「源氏香之図」です。
手記録紙に自分の答えを記載して、先生に提出します。自分の嗅覚や記憶力がどれほど合っているか、ドキドキする瞬間です。自分がどの名目であるとか、各巻の内容と合わせて想像することがこの源氏香の楽しみのひとつだとか。
▲ 手記録紙に自分の答えを記載して、先生に提出します。自分の嗅覚や記憶力がどれほど合っているか、ドキドキする瞬間です。自分がどの名目であるとか、各巻の内容と合わせて想像することがこの源氏香の楽しみのひとつだとか。
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全員の回答を集めたら、最後に先生が実際に焚いた順を読み上げ、各メンバーが提出した答えと照らし合わせながら、最終的な成績をつけます。
▲ 全員の回答を集めたら、最後に先生が実際に焚いた順を読み上げ、各メンバーが提出した答えと照らし合わせながら、最終的な成績をつけます。
最後にお腹に今話題の「マンジャロ」を投与します。こちら、糖尿病治療剤として有名ですが、抗肥満薬としても使用可能で、人によっては劇的に食欲が減退するとか。やはり痩せるためには、物理的に食べる量を減らすことも大切なのですね。
▲ そして、正解の名目の源氏物語の和歌をしたためてくれます。ちなみに堀川の順位は2位と、惜しくも優勝を逃しました。
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先生が達筆な腕で書き上げてくれた、いわば答え合わせの結果シートがこちら。師範であり、書道家でもある先生の直筆で、家に飾っておきたくなるほど美しく、見事な出来映え。
▲ 先生が達筆な腕で書き上げてくれた、いわば答え合わせの結果シートがこちら。師範であり、書道家でもある先生の直筆で、家に飾っておきたくなるほど美しく、見事な出来映え。
優勝した人が最後にご褒美として、先生より直接いただけます。何だか賞状を渡されたように誇らしく、その嬉しさは格別なもの。先生も自分も思わずにっこり笑顔に。
▲ 優勝した人が最後にご褒美として、先生より直接いただけます。何だか賞状を渡されたように誇らしく、その嬉しさは格別なもの。先生も自分も思わずにっこり笑顔に。
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最後に一礼して「源氏香」が終了です。こんな所作も現代ではなかなか味わえないので、背筋がピンと伸びて心地よい充実感でいっぱいです。
▲ 最後に一礼して「源氏香」が終了です。こんな所作も現代ではなかなか味わえないので、背筋がピンと伸びて心地よい充実感でいっぱいです。
香道体験、いかがでしたでしょうか。

正直、デジタルに慣れ過ぎた現代の楽しみとはまったく逆をいった、ある意味新鮮な面白さがこの香道ともいえます。若者たちが使っている“エモい”という言葉の極限の遊びかもしれません。

小さな木から生み出される、雑味のない純粋な香りを聞くという行為は、邪念を捨て、襟と姿勢を正しながら香りに集中する貴重な時間となり、まさにデジタルデトックスといえますよね。月に2回行われている香道のワークショップは、外国人観光客にも大人気だとか。肝心の我々日本人がこの楽しみ方を知らないのは、もったいないかもしれません。
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体験した堀川の感想は以下の通り。

「香道という、案外知られていない教養は、深い知識がなくても手軽に楽しめる、大人の余興。彼女とわからないなりに楽しめる、インテリ感じる良いコミュニケーションになり得ると思いました。何度もやることで、そのうち正解率が上がってきたらハマってしまいそう⁉」

そう、約1時間で終わるこの優雅な遊びは、少しマンネリ化している彼女とのデート先としてもオススメ。新鮮なひと時が体験できるだけでなく、新たな人間性の発見や相手の魅力の気づきにもなっちゃいそうですよ。
香十 銀座本店

■ 香十 銀座本店

住所/東京都中央区銀座4-9-1
TEL/03-6264-2450
営業/11:00〜19:00
料金/「香席体験」4000円(60分)
開催日時/第2金曜日 18:00〜19:00
     第4土曜日 11:00〜12:00
HP/https://the-koju.com/experience/kaorinotsudoi

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