2024.01.28
あなたの性格、心臓病になりやすい? なりにくい?
これまでは、心臓病になりやすいのは、真面目で責任感が強くて自分に厳しい人と言われてきました。しかし近年の研究では、コミュニケーションが苦手でネガティブ感情の強い人という結果に。あなたの性格の心臓病のリスクをチェックしてみませんか?
- CREDIT :
文/上月正博(東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長)

「その人の性格も関係していますが、同調圧力の強い日本社会の傾向にも心臓病リスクを高める要因があるようです」と言うのは、東北大学名誉教授で医師の上月正博氏。上月氏の著書『弱った心臓を元気にする方法』より、心臓病になりやすい人のタイプと私たちが気をつける点について一部抜粋・再構成してお届けします。
性格によって傾向が異なる「心臓病になりやすいタイプ」の人とは?
タイプA……真面目で向上心や責任感が強く、自分を駆り立てる性格
タイプB……穏やかで落ち着いた性格
タイプC……几帳面で真面目な性格
タイプD……対人関係において不安を覚えやすい寡黙な性格
では、このなかでどのタイプが心臓病になりやすいのでしょうか。今までは、真面目で責任感が強くて自分に厳しいタイプAの人が、虚血性心疾患の発症率が高いとされてきました。タイプAの人の怒りや攻撃性、敵意といったものが、最も心臓病の発症に関連するといわれてきたのです。
しかし、日本人についての近年の研究結果では、タイプAよりも、ネガティブ感情が強くてコミュニケーションが苦手なタイプDの人が、心臓病になりやすいタイプだと考えられるようになってきました。
あなたはいくつ該当しますか?
▢ ささいなことで過度に騒ぎ立ててしまう
▢ 対人関係で引っ込み思案になりやすい
▢ 不幸せだと感じることが多い
▢ 物事を悲観的に見てしまう
▢ イライラしやすい
▢ よく機嫌が悪くなる
▢ 感情表現が苦手だ
▢ 落ち込みやすい
▢ なにかと心配事が絶えない
▢ なるべく他人とは距離を置きたい
▢ 会話でその場にふさわしい話題が思いつかない
また、「配偶者がなく、信頼できる友人もいない心臓病患者は、そうでない患者と比較して5年間の死亡率が約3倍」といった報告もあります。このような研究結果は、心臓病のリスクが個人の性格や生活習慣などの問題だけでなく、社会的な要因にも左右されるということを示しています。
ちなみにタイプBは穏やかで落ち着いた人、タイプCは几帳面で真面目な人です。個人差はありますが、タイプBの人の性格は、ストレスを感じにくいといわれています。
ストレスへの対処で心臓病リスクを減らす
ストレスが心臓病の発症に密接に関係しているというのは、2011年に起きた東日本大震災直後に、心不全や虚血性心疾患の患者数が増加したという事実も裏付けています。なぜストレスが心臓病を発症させる原因となりうるのかというと、身体的あるいは精神的ストレスが交感神経を過剰に活性化させ、心拍数の増加、血管の収縮などにつながるからではないかと考えられています。仕事や家庭、対人関係などの心理的なストレスも心臓病につながるリスクとなりうると、多くの研究成果が告げています。
また、ストレスによって血液中のコレステロールや血小板数が増えると、動脈硬化や不整脈を起こしやすくなるので、さまざまな理由からストレスは心臓病の発症あるいは再発症の引き金になるものといっても過言ではありません。
日本人においては、タイプDの人が心臓病になりやすいと見られていると述べました。「物事に対してほとんど興味がない」「将来が不安で絶望的な気持ちになる」「目標とするものがなく生きる気力がない」といったネガティブな感情を抱きやすい人はストレスを溜め込みやすく、心臓病にかかるリスクも、かかってからの生存率おける予後との関連を調べてみても、その死亡率が高いとされています。
全力で楽しむことが心臓病の予防になる
解決の糸口は、いたってシンプルです。まずは何でもいいので楽しめることを見つけてください。そして、それを全力で楽しんでください。ストレスは「溜まる」と表現されるように、コップに少しずつ水が注がれていく様に喩えられます。コップに空きがあるうちはいいですが、満タンになった途端に水が溢れ出して大事になってしまいます。ストレスも同じで、ちょっとずつでも解消していかないと、取り返しがつかなくなってしまうのです。
社会的な孤立も、危険性をはらんでいます。たとえば高齢者の場合、仕事を退職してひとりの時間が増えたり、配偶者や友人と死別したりして、社会的なコミュニケーションが激減することがあります。何か新しいことを始めたり、地域の趣味サークルに参加したり、若い人と積極的に関わるようにすることで、心臓病の予防になることを覚えておきましょう。
心臓病にとって、肥満は大敵です。男性は戦後から肥満指数(BMI)が右肩上がりに上昇し続けていて、なかでも40代と50代は約4割の人が肥満に数えられるほどです。肥満は万病のもとともいわれますが、心臓病にとっても同様です。
肥満だけでなく、やせすぎも大きな問題
では、やせていれば心臓病の心配はいらないのかというと、それも正しくはありません。やせすぎていることは、病気に対する免疫力の低下につながります。やせているということは、筋肉量が少ないということでもあり、筋肉がなければそれだけ運動をすることが億劫になってしまいます。
適度な運動は心臓病のリスクを低下させる効果があるので、適切な栄養バランスの取れた食事をきちんと摂り、しっかり体を動かしていきましょう。体を動かすことはストレスの解消にもつながりますから、心身ともに健康維持につながっていきます。