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2018.05.07

お弁当がアートになる!? 東京都美術館の「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」

7月21日から東京都美術館で開催される企画展のテーマが「お弁当」。美術館でお弁当!? そもそもなぜ? の疑問を学芸員に突撃。それはそれは斬新かつ、日本人の魂をくすぐる作品ばかりのようで……

CREDIT :

文/中島 由貴 写真/東京都美術館

本展ロゴマーク
本展ロゴマーク
お弁当は食べるもの、作るもの、だけだと思っていません? ま、普通はそうですよね。ですが、7月21日から約3ヶ月、東京都美術館で画期的な展覧会が開催される予定です。その名も「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」。

なんでも、お弁当を見て・聞いて・触れることができる参加体験型の展覧会なんだとか。ん? お弁当を体験する? どういうこと!? ということで、企画立案者で学芸員の熊谷香寿美さんにお話を伺って参りました。

お弁当は時空を越えるコミュニケーションツールだ!

美術館などが数多くある上野はいわばアートシティ。その玄関口でもある東京都美術館には、「アート・コミュニケーション係」といって芸術と人をつなげる可能性を広げていくことを目的として活動する部署があるんです。

先出の熊谷さんは東京都美術館学芸員で、アート・コミュニケーション係に所属。で、なぜお弁当をテーマにしようと? もしかして、“お弁当大好き学芸員”だったりして…?

「残念ながら好きが高じて、というわけではないんです(笑)。当館での企画展には3つのシリーズがあります。『現代作家展』『アーツ&ケア』と今回のシリーズ『アーツ&ライフ』の3つです。これまでの『アーツ&ライフ』では“これからの住宅のデザイン”を取り上げた「生きるための家展」や“物を見つめて集めて並べることで生まれるコミュニケーション”を切り口にした「キュッパのびじゅつかん展」を開催してきました、それを受けて、次は“食とコミュニケーション”に注目した次第です。なかでもお弁当は、時間と空間を超えるコミュニケーションツールなんじゃないのかなと。作る人が、食べる人の食べる時間と場所、状況を想像して、箱に適した形でデザインし、整えて作るという日本ならではのものなんですよね」と熊谷さん。

そう言われて思い出すのは、遠足や運動会のお弁当ならご飯が手で食べやすいおにぎりになっていたり、嫌いなものがさりげなく入っていたり、母親の作るお弁当に込められた無言のメッセージ。知らず知らずに受け取っていたんですよね。

今回はお弁当にまつわるアーティストだけでなく、コミュニケーションをテーマにしている作家たちに新たに依頼した作品が集う「こんなの初めて〜」があふれる内容に。ささ、詳しく聞いてまいりましょう。
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「サラメシ」のお弁当ハンターから“イーティング・デザイナー”、楼閣型弁当まで一挙展覧!

まずお弁当といえばやはり思い浮かぶのは、NHKの人気テレビ番組「サラメシ」。写真家で、番組中もお弁当ハンターとして登場する阿部了さんによる作品《ひるけ》をはじめ、お弁当を介したコミュニケーションに注目した写真や映像、作品などが並びます。

そして、企画を進める中で早い段階で熊谷さんが声をかけたというのがマライエ・フォーゲルサングさん。
「オランダのデザイナーなんですが、イーティング(食べること)にまつわることをデザインしています。本展では彼女に新作を依頼。海外でもお弁当は知られてきていますが、彼女が再定義するとどうなるのかな?というのを見たいと思いました。」
ん、食べることをデザインするってどういうことですか?
「大きな空間に、たとえば『記憶』や『お米』、『海苔』というように、お弁当をいくつかの要素に分けたブースのようなスペースがあって、その中に入って行くと、それぞれでいろいろな体験ができるというものです。外から考えるのではなく“お弁当の中に入ってみる”ことができます。例えば海苔なら、オランダの作家がseaweed(海藻、海苔)を素材に3Dプリンターで作った花瓶を展示し、そこから食べる用途以外の海藻の可能性を考えさせるようなスペースになる予定。ちなみにこの子(上のイラスト)が『スピリット オブ ベントウ』という精霊です。私たちは彼の話を聴きながら空間をめぐって体験ができるという、とても面白いアイディアなんです」
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もはや芸術の域! 遊び心を超越したユニークすぎるお弁当箱

「ひとりで食べるイメージもあるのと思うのですが、今でもお花見のときにみんなで食べるように、お弁当は人と共に食べるものとしても存在してきました。近世にさかのぼると、日本語をポルトガル語で解説した辞典日葡辞書(にっぽじしょ)に、『BENTO=文房具に似た一種の箱であって、抽斗がついており、これに食物を入れて携行するもの』という意味が記されてあり、1600年代には弁当箱がかなり使われていた可能性が伺えます。武士が戦場で同じものを食べて結束力を高める陣中弁当と呼ばれるものもありました。その歴史が伝えるのは、共に食べるもの(共食)としてもお弁当は使われていたということ。」

なるほど、お弁当の元は大勢で食べるための存在でもあったとは。となると、やはりお弁当箱も人を喜ばせる仕掛けがあったりするのでしょうか?

「日本人はついつい発達させちゃう、というか凝る気質がありますよね。それは相手をおもてなしする宴用のお弁当箱にも発揮されていて…(笑)」と、熊谷さんにこっそり見せていただいたのが展示予定の弁当箱の画像。そのひとつが楼閣を模したもので、実用的かつ遊び心を通り越した精巧な完成度に、驚きを通りこして笑いが止まりません。ほかにも驚愕なものがたくさん紹介されるそう。いや、どれもすごい!

ここでご紹介しているのはほんの一部。構想から約2年かかったという充実した内容になっています。一通りお話を伺ったあとはお弁当を見る目が激変。まだ開催まで2ヶ月以上もあるなんて待ちきれない!というのが正直な感想です。慣れ親しんだお弁当のイメージが一新してしまう、楽しい感覚が待ってますよ。
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 ● 熊谷香寿美 / 東京都美術館 学芸員

大学卒業後、広告会社での約10年の勤務を経た後、美術に関わる仕事を目指し一念発起。一橋大学大学院言語社会研究科にて学芸員課程および修士課程修了。2013年より現職。子供たちのミュージアム・デビューを応援する上野公園の連携プロジェクト「Museum Startあいうえの」でワークショップ等の企画運営に従事。
最近ではおにぎりを型崩れなく入れられる理想のお弁当箱に出会ったことでタッパー派から卒業し、おにぎり&おかずスタイルのお弁当ライフを謳歌中。好きな具材は、からあげと春巻き。

◆ 東京都美術館

住所/ 東京都台東区上野公園8-36 (ギャラリーA・B・C)
会期/2018年7月21日(土)~10月8日(月・祝)
開室時間/9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
※ただし、7月27日(金)、8月3日(金)、10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)はサマーナイトミュージアムにつき 9:30~21:00
観覧料/一般 800円 大学生・専門学校生 400円 65歳以上 500円
※サマーナイトミュージアム割引として、7月27日(金)、8月3日(金)、10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)の17:00以降は、一般600円、大学生・専門学校生 無料(証明できるものをご持参ください)
休室日/月曜日、9月18日(火)、25日(火)
※ただし、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開室
特設ウェブサイト/ http://bento.tobikan.jp/ (作家情報、イベント情報、割引情報など)

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