2017.06.06
刺激的なドリンクが日本のビジネスパーソンを救う?
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文/岩﨑譲二(マーケティングプランナー)
空前のオトナ強刺激ドリンクブーム
今、日本の飲料業界ではオトナ強刺激ドリンクが大ブームになっているのをご存知だろうか。強炭酸ペプシ(人類未体験!強炭酸ペプシ)、ウィルキンソン・ドライコーラ(刺激、強め。無糖のコーラ)、大人のキリンレモン(圧倒的レモン感)、三ツ矢サイダーグリーンレモン(三ツ矢史上最高に酸っぱい)など、飲料業界各社が次々と強刺激商品を投入している。
なぜいま、これほど強い刺激が求められているのか?その背景を探ると、日本のビジネスパーソンにとっては見逃せない社会トレンドが垣間見える。

ターゲットはビジネスタイム
日本のビジネスパーソンは忙しい。企画、打ち合わせ、資料作成、プレゼン、実行、そして忘れてはならない社内の周到な根回し。さらに夜の会食や合コンがあるとなれば大変だ。とても時間が足りない。さらに、そんな忙しいビジネスパーソンに追い打ちをかけるのが昨今の長時間労働問題。
仕事の量は変わらないが、残業時間を減らさなくてはならない、有給もしっかり取らねばらない。ワークライフバランスは重要だが、仕事も頑張りたい。限られた時間の中で、次々襲ってくるタスクの波を捌き、高いパフォーマンスを発揮する鍵は、効率的なストレス解消、気分転換にある。
忙しい中でも集中力を失わず、効率的に仕事を捌くためのストレス解消と気分転換は、もはや現代のビジネスパーソンの必須スキルと言っても過言ではない。そんなビジネスパーソンのニーズにぴったりとマッチするのが、冒頭にご紹介したオトナ強刺激ドリンクだ。

大人強刺激ドリンクは苦境を乗り切るスマートソリューション
「24時間働けますか」。これは、バブル時代を象徴するキャッチコピーだ。空前のバブル景気に沸いた80年代、モーレツ社員たちは滋養強壮ドリンクを飲みまくって朝から晩まで働き続けたものである。
当時ほどではないが、このモーレツぶりは現代と似ている。ただ、少し違うのは現代において「頑張ってる感」を出すのは恥ずかしいというムード。
「昨日も二時間しか寝てない」は、かつては「弊社、儲かってます」「でかい仕事、任されちゃってます」と捉えられた言葉だが、現代ではあまり良い印象を与えない要注意ワードだろう。
スマートでありたい、ワークライフバランスがきちんと取れているように見せたい現代のビジネスパーソンにとっては、滋養強壮ドリンクは本当にヤバイ時のとっておきの秘策。最近ではエナジードリンクがブームとなっているが、それではどうしても「わたし、追い詰められてます感」が出てしまう。
そこで登場するのが刺激を強化したコーラやジンジャエールなどのオトナ強刺激ドリンクだ。炭酸などの強い刺激でストレス解消・気分転換を図りつつ、頑張ってます感も出さない。オトナ強刺激ドリンクは、しっかりとストレス解消・気分転換を図りながらクールな抜け感を演出する、まさに現代のビジネスパーソンのニーズにマッチしたスマートソリューションなのだろう。
そんな飲料業界に新しい風
オトナ強刺激ブームに沸く飲料業界だが、また新しい風が吹き始めている。
最近CMでご覧になった方も多いと思うが、サントリーの新商品「クラフトボス」がその好例だ。

「刺激」など、どこ吹く風。この商品のコンセプトは「WORK&PEACE —仕事って戦争ですか?ピースじゃダメなんですか?—」だ。
CMは、インターネット業界で働く堺雅人氏演じる主人公が、自由奔放なワークスタイルの部下や社長に振り回され、これまでの常識を覆すその新しい思想・スタイルに新しい風を感じるというものだ。抜け感どころではない突き抜ける斬新さに目が奪われる。
社会のトレンドに敏感な同社らしい、現代の忙しすぎるワークスタイルへのアンチテーゼとも言える、チャレンジングかつコンセプチュアルな商品だ。
オトナ強刺激ドリンクが苦境を乗り切る相棒だとすれば、クラフトボスはその対極にある。製品を通じ、価値観や、生き方、働き方ごと変えませんか?という提案を行っているのだ。
あなたならどちらを選ぶだろうか。仕事帰りにふらりと立ち寄ったコンビニで両極端な飲料を前に、自分の、そして日本のビジネスシーンの未来に想いを馳せるのも一興かもしれない。