■ 『獺祭 未来を作曲』
革新を続ける蔵元の「獺祭」が、またユニークな日本酒をリリースしました。なんと醸造過程で30日以上にわたり音楽を聴かせ続け、その振動が酵母に影響を与えることで、かつてない独特の風味を引き出そうという、同社初の試みで生まれた一本『獺祭 未来を作曲』です。
日本とオーストリアの友好関係の象徴として、2025年の大阪・関西万博で発表されて商品化。聴かせた曲はオ
ーストリアを代表する作曲家で、生誕200周年を迎えたヨハン・シュトラウスⅡ世の代表曲のひとつ「入り江のワルツ」だそう。しかも「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」のメンバーと、「日本センチュリー交響楽団」という、両国最高峰の楽団の音源をドッキングさせたという徹底ぶりです。


オーストリアの国旗の紅白をモチーフにした特別なラベルには「入り江のワルツ」の楽譜が描かれています。
『獺祭 未来を作曲』720㎖ 8000円/獺祭
さらに挑戦はそれだけではなく、なんとこの特別な獺祭のためにオーストリアを代表するふたつのブランド、グラスウエアの「ロブマイヤー」と陶磁器の「アウガルテン」の両社に、器の製作を依頼。筆者は実際にこのふたつの器を使って、定番の『獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分』と、この『獺祭 未来を作曲』を飲み比べるという好機に恵まれました。

▲ 右●5万5000円、左●4万500円/ともに獺祭
右はオーストリアを代表する陶磁器メーカー「アウガルテン」による純米大吟醸ボウル。職人の手による24Kの筆塗りで仕上げた豪奢な作り。内側の底には「獺祭」のロゴが描かれています。左はウィーンのガラス工芸メーカー「ロブマイヤー」のバレリーナシリーズ ワイングラスⅡ。優美な姿とやや口の開いたシェイプで、獺祭の魅力を引き出しています。
あくまで個人的な感覚ですが、どちらの器で体験しても、“未来を作曲”のほうが少し円やかな風味が引き出されている。同社の桜井一宏社長にお聞きすると「音楽の波長によって、酒中のガスが抜けやすくなり、酵母の働きが変化することで丸みや柔らかさが出る可能性がある」と言います。ご存知のとおり獺祭は世界に輸出されていますが、「現地の文化を尊重しながら、ともに新たな文化を作ること」が使命だという桜井社長。今回のコラボレーションもそうしたふたつの文化が融合した新たな味わいという見方もできそうです。上質な酒もワルツも人を心地よく酔わすという意味でも、晴れやかな新春にふさわしい一本と言えましょう。
■ お問い合わせ
獺祭 0827-86-0120

● 中村孝則(なかむら・たかのり)
コラムニスト。世界各地を独自の視点で読み歩き、さまざまなメディアでラグジュアリーライフを提案。「世界ベストレストラン50」の日本評議委員長も務め世界各地で美食探求の日々を送る。
2026年3月号より
※価格はすべて税込み価格です














