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2026.01.25

【第92回】 スープについて考える《3》

「明寂」で供された水出汁のお椀に通じる革命的なラーメンスープといえば?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。今回のテーマはラーメンのスープについて考える、その3です。

明寂 八五 Craft Ramen BiT ラーメン革命! 山本益博 LEON

西麻布「明寂」でいただいた玉ねぎ椀は日本料理の「お椀」の革命

東京・西麻布にある日本料理店「明寂」へ出かけると、通常なら八寸などの前菜が運ばれてくるところ、献立の最初に「お椀」が供される。それだけですでにイレギュラーで、誰しもが少し驚くのだが、お椀の蓋を開けるとさらにびっくりする。


季節によって違うが、例えば、初夏なら新玉ねぎの輪切りが浮かんでいて、木の芽とかゆずとかのあしらいの添え物が一切ない。はじめての客は、自分だけ椀の中に忘れ物をされたのではないか、と思ったりする。


椀をもって、吸い地をひと口いただくとなんの味もしない。注意深く二口目をいただくとたまねぎの香りと味わいが微かに伝わってくる。さらに三口目、水分のなかから塩気というよりもっと微妙な「ミネラル」を感じることになる。

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明寂 八五 Craft Ramen BiT ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 「明寂」の玉ねぎ椀。

そこに店主の中村料理長が、言葉を添えてくれる。


「うちでは、昆布や鰹節で出汁を引きません。いってみれば水出しです。昆布が採れなくなって、激減し、3、40年後には昆布で出汁を引くことはできなくなることを考えると、それを使わずに何かないかと考え、水に至りました。今日の水も地方から取り寄せた水を使っています」

言ってみれば、日本料理の「お椀」の革命である。日本料理の最高峰は「京都」であることは誰しもが認めるところで、若い料理人はこぞって京都へ修業に出かけ、そこで「出汁」の引き方を学び、覚え、地元へ帰って、昆布と鰹節で「出汁」を引く。いまや、日本全国京都の「お椀」の「出汁」が津々浦々までいきわたっている状態。言い方を変えると、全国画一的で、個性がないとも言える。

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 明寂 八五 Craft Ramen BiT ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 「明寂」のたけのこ椀。

この連載の前々回の「COH」の料理人佐藤慶さんも、食材の持ち味を尊重して、昆布や鰹節を使わないと宣言している。


「明寂」は「COH」と違って、現在誰でも予約ができる状態にあって、4年前、いきなり「ミシュラン東京」に2つ星で登場した。次の年も2つ星だった。私は、すでに3つ星の価値が十分にありと考えていたが、「明寂」を3つ星に格上げすると、京都の老舗格の日本料理店と真っ向から対立することになり、それを「ミシュラン」が躊躇しているのではと勘ぐって見ていたら、昨年秋に出版された「ミシュラン東京2026」年版で、3つ星に輝いた。晴れて、「水」の出汁が、「昆布と鰹節」の出汁と並んで認められることとなった。


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印象深かった入谷「Craft Ramen BiT」の「コンソメラーメン」

さて「ラーメン」の世界では、ダブルスープに代表されるように、足し算のスープは数多く、引き算に徹してシンプルなスープで食べさせるラーメンは極めて少ない。前々回の連載で言及した「ロックンスリー」の「鶏と水」のスープなどは稀な例である。


その後に出現したのが、今までラーメンには必須とされてきたタレやかえしに頼らず、鴨と野菜からブイヨンを摂り、仕上げに塩味としてパンチェッタを加えてコンソメ状のスープを作るという革命的な「中華そば」を生み出した東銀座の「八五」である。芳醇で香り高く、澄みわたって、しかも十分にうま味を感じさせるスープ。これぞ「ミシュラン」好みのスープで、1つ星を獲得したほど。

明寂 八五 Craft Ramen BiT ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 東銀座「八五」の「中華そば」。

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最近いただいた中では、入谷の「Craft Ramen BiT」の「鹿」からスープを摂った「コンソメラーメン」が印象深い。赤身の鹿肉を思わせるスープで、さらに雑味を取ってクリアに仕上げられたら逸品と呼ばれることだろう。

「鶏」も「鴨」も「鹿」も挑戦し甲斐のある食材で、こってりしたスープがラーメンだと思っている「おとな」たちにこそ食べてもらいたいと思う。

明寂 八五 Craft Ramen BiT ラーメン革命! 山本益博 LEON

▲ 入谷「Craft Ramen BiT」の「コンソメラーメン」。

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山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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